零式艦戦 戦闘機隊飛行要務内規 A6M Fighter Squadron Hand Signals and Regulations































































































































































































































































































































































































































































































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■ 資料の引用について
本稿については、以下の資料から一部を纏めたものです。
何れも零式艦戦による戦闘機隊の運用について記されたもので、あまり見ることがない資料となっています。
軍機密 第三航空隊 命令第二十二号 4/35(用済後廃棄)戦闘機隊飛行要務内規
軍極秘 第三航空隊 命令第十九号4/35(用済後廃棄)戦闘機隊飛行要務内規


■ はじめに

私達は、海軍の主力戦闘機たる零式艦上戦闘機の構造や発動機機構、操縦手順の運用面等のハードウェアについては、ムック本、雑誌から多くの方々が知る事ができます。しかしながら、零式艦上戦闘機を運用する戦闘機隊の様々なルール、例えばハンドシグナルや運用則等については、現存する紙資料が非常に少なく、当時の搭乗員であった方の戦記や、時には零戦映画の演出の中で見ることができます。

本稿は、その少ない資料の中でも、零戦隊の「戦闘機隊飛行要務内規」及び「第三航空隊戦闘機隊戦闘守則」から今までに明らかになっていなかった、零式艦上戦闘機隊の運用則について、旧カナ使いを修正して原文ママで一部を動機紹介をするものとなります。

もちろん、九六戦の時代の話ではなく、零戦隊の資料ですから、あまり目にすることがない資料となりますので、興味のある方については十分楽しんでいただけると思います。また、今後製作される書籍、映像等に正しく反映されれることを祈りながら記載をいたします。



■ 隊内信号

隊内信号とは長機から僚機に伝えるハンドシグナルや無線電話(信)です。ハンドシグナルとは、編隊飛行中の僚機などに直接視覚にて意思を伝えるために指、手、手首、ひじの組み合わせで決められたサインの事を言います。

小隊(中隊、大隊)で編隊を組んでいるときには、長機からの各機へのハンドシグナルは明瞭に伝わります。例えば、成田や羽田で見学デッキや柵から離陸する旅客機を見る時、遠くからでも意外にもパイロットの姿が良く見えることからも判ると思います。
ハンドシグナルの種類によっては、両手を使用するものもあり、その場合には操縦桿から手が離れますが、操縦桿は太ももで押さえることになります。

また、無線電話(信)も使って各機に指示を行うことになりますが、作戦中であるからと言って、無線封鎖しながら侵攻する、というものではなかったようです。もちろん、無線電話(信)については陸、海軍共に使えた、使えないの議論が盛んですが、当時の無線技術(アース方式含む)や戦記を紐解くと、当時十分に作戦時には機能していたことが判ります。
もちろん、戦後のFM波での通信運用と違い、当時はSW波(中波)A3(電話)変調での通信ですので明瞭度は落ちます。

しかしながら、作戦時の各機の距離は数十m程度なので10w程度の送信機でも信号は強力であり、空電や爆音に比して全く聞こえない、と言うようなことはないと判断しております。少なくともA1(電信)については、確実に聞こえたはずです。

当時の通信方式は長機と各機が盛んにやり取りをする、積極的に交信をする現代の方式ではなく、長機が無線で一方的に隊機に指示を送信し、各機がそれを受信し、指示通り行動する方式です。というのも、同じチャネル(周波数)で複数人が送信すると、現代の電話会議システムのように複数人で話せるということではなく、通信波の特性上、S(信号強度)が強力な送信機の信号でつぶされますから、他の者がその間、その周波数では通信が行えない、ということです。したがって、基本は長機が指示をして各機は必要な事以外は送信しない、ということになります。

なお、送信に当たっては当時はPPT(プッシュ トゥ トークボタン)が装備されたハンドマイクやヘッドセットではなく、送信トルグスイッチを“入り”、“切り”に切り替えて話す方式なので、戦闘中に頻繁に音声のやり取りができないことにもよります。

ハンドシグナルや無線電話(信)信号で伝える隊内信号の種類については、通常の作戦行動(体制)を僚機に伝える「一般信号」、小隊の陣形を指示する「小隊信号」、中隊、大隊の陣形を指示する「中隊・大隊信号」、そして、長機、僚機に機体の不調を知らせる「保安信号」があります。


■ 機銃膅軸線整合法
膅とは聞きなれない漢字ですが、これは旧漢字であり砲のことで、砲軸線ということになります。つまり、7.7mm、20mm機銃の砲軸線となります。零戦は下記に記されているように左滑りのクセがあるため、軸線の修正が必要があるとのことで、飛行場の一角にある射撃場で調整をすることになります。




■ 射撃兵装操法(零式艦戦)
(ここでは射撃兵装操作の例をもって搭乗員や兵器要員がどのように零式艦上戦闘機の周囲で動くのかを見てみたいと思います)

1.射撃準備
○人員については零式艦戦1基に対し、搭乗員1、兵器員3とす。
○準備物件、零式艦戦は兵装完備しあるものとす。
・弾倉2
・ネジ回し2
・塗油用具2組


(1)『集まれ』
    左翼後方飛行機に面して整列す。


(2)『番号』
    イチ(搭乗員)、ニイ(兵器長)、サン(兵器員1)、ヨン(兵器員2)





(3)『就け』
   搭乗員・・・・左翼後方で佇んで連絡を取る
   兵器長・・・・操縦席
   兵器員1・・・左二十ミリ機銃下
   兵器員2・・・右二十ミリ機銃下
   注 駆足を以て持ち場に就く。





(4)『戦闘』
   ・兵器長復唱。
   ・7.7ミリ機銃の抜弾操作をなし。各部点検。発射管制装置、発射塞止弁閉なるを確かむ。
   ・安全装置を動作動作に入れ発射把柄切替突子を前方(7.7ミリ)となし、同把柄を   圧し、7.7ミリ機銃及び同調発射装置作動を検す。

   ・安全装置を安全となす
   ・照準器を点検し点灯良否を確かめ消灯す
   ・減圧弁調整螺銲螺戻しあるやを確かめ基弁を開き高圧を検し低圧計指針に注意しつつ調整螺銲により所要圧力に調整する(実際にはkgが入ります)。
   ・兵器員1、兵器員2「復唱」。弾倉室覆を外し各銃部を検す

(5)『尾栓後退』
   ・兵器員長「復唱」装着塞止弁を開き装填弁を圧し尾栓を後退せしむ。
   ・兵器員1、兵器員2尾栓後退を確めた後「尾栓後退」を搭乗員に報じ尾栓殻抜薬室を検し介在物の有無を確かめ塗油す。
   ・搭乗員、兵器員1、兵器員2の合図を兵器長に伝える
   ・兵器長 充填塞止弁を開く

(6)『尾栓前進』
   ・兵器長「復唱」低圧計に注意しつつ装填、発射両塞止弁を開く
   ・安全装置を作動となす
   ・発射把柄切替突子を後方(7.7ミリ、20ミリ共通)となし、「前進」と唱えて装填弁を圧し(尾栓後退)発射把柄を握り尾栓を前進せしむ
   ・兵器員1、兵器員2 尾栓円滑に前進するを確かめ「尾栓前進」と搭乗員に報ず
   ・搭乗員、兵器員1、兵器員2の合図を兵器長に伝える
   ・兵器長 搭乗員の合図の後「送気」と命し発射把柄を一杯握り急に放ち(二回反復)送排気状況引金操作箱より空気漏洩の有無を検す
   ・兵器員1、兵器員2右の良否を確かめ「良し」として報ず
   ・搭乗員 兵器員1、兵器員2の「良し」を兵器長に伝える
   ・兵器長 安全装置を安全となし、発射装置填両塞止弁を閉む

(5)『尾栓後退』
   ・兵器員長 以前行った「尾栓後退」の操作を繰り返す
   ・兵器員1、兵器員2 同様に繰り返し、弾倉室覆を復旧す

(6)『集まれ』
    所定の位置に整列


(9)搭乗員搭乗
   ・搭乗員 兵器長から必要事項を聞く
   ・20ミリ機銃の膅中(砲中つまり銃口のこと)を検し座席に就く
   ・発動機、機体の良否を検す
   ・発射装填両塞止弁の閉となしあるやを確かめる
   ・7.7ミリ機銃抜弾操作をなし安全装置を動作となし、発射把柄切替突子を前方に倒し把柄を圧し操作を検す(具体的記述は省略)
   ・安全装置を安全となし、発射把柄突子を後方となす
   ・照準器を点灯し良否を確かめ消灯す
   ・右の操作をなし右手を挙げて「良し」と報ず
   ・7.7ミリ機銃半装填を行う
   ・兵器長 搭乗員に必要事項を申継ぎ飛行機左翼後方に行き、連絡を取る
   ・兵器員1、兵器員2左翼後方にて待機す


<続く。>


ご意見ご指摘がございます場合は、零戦談話室までお願いいたします。 



■更新について

休日家族に叱られながら研究成果(?)を発表してまいりますので更新の遅さについてはご了承ください。また、誤った情報については後日修正して行きますので、これもまた、合わせて生暖かく見守っていただけるとありがたいです。





■更新情報(メジャーアップデート)
2018.05.05 途中版。



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