花瓶に生けた華が散る時
風は静かに泪を零し
光は優しく空気を包み
影は俄かに揺れ動く
静寂に進む時が
無音の緊張を促し
幽かに震えた冬明けの日差し
何もかもが見えない真綿で包まれる
静寂を持って静寂とし
喧騒すら静寂に飲み込まれ
一滴落ちた朝露に
打たれて聞こえる葉擦れの歌声
華は静かに種を孕み
時は知らぬ間に夕日を誘い
飲み込まれていく人の
喜怒哀楽すらも
時代と言う名の画家により
穏かに風景画へと
姿を変える
生きていく感覚に
伝わってくる固形の砂城
無機物は静かに看取られて
ただただ惜しむ
声無き声の憂鬱を
塗られていく色彩の中で
人と言う名前の感情に惑い
失せていく光の粒子に
心置きなく降りかかる
静寂を持って静寂とし
人の思惑もただの陽炎で
そこにあるべき物を
ただ写経の如く
具現する
色は色で発色すら忘れ
時は時で流れ出る歴史に溺れ
人は人で溢れる感情に抱かれて