◎狂

赤い赤い椅子の上     (酒池肉林の踊り食い)
白い白い夢を見て     (爆発的な詩力は情緒的な韻律を愛す)
遠い遠い海の音      (魚の目の中の狂想は刻印の雨)
近い近い孤独に酔って

赤い赤い闇の中      (迷う手は針地獄)
白い白い愛を感じて    (痴呆吹雪の枯れ雄花)
近い近い泪に触れ     (目指すは寒い石油炬燵の行列よ)
遠い遠い魂の調べ

全てが嘘の透明話し    (幽かに匂うは哀愁の風車)
全てが嘘の悲しい感情   (僅かに凪がれる遠い貴金属の夢)

感じるままに死と手をつなぎ
信じるままに歌おう 過去を!

何かの音が消える前に
後ろ向きから始めればいい (確かな不確かこそ存在の灯火)
道化の後遺症は必ずしも
気持ちいいはずなのに   (苦痛に満ちた洋菓子を今日も食らう)
人間
何もかもが信じられなくて

一人称である事の自分
狂った光を探しながら
人間
なかなか掴めなくて

詩人が本業を忘れる快感を
どうして俗世間に透水させることが出来ないのか!
悩みながら悩みながら 狂いながら狂いながら
言葉の泉の氾濫だ!

何時の間にかの転寝の中にある楽園から歩き出した凶暴な愛情は
その愛情は螺旋の固定観念の墓場から
どす黒い希望と言う名の槍を掲げ
一人称である自分は
言葉の玩具の名を借りた悪業に酔い
胸に刺さる腐った言葉を
恍惚な眼差しで愛撫し
幾千の魂の薄ら笑いすら忘れて忘れて
彼岸花の思考を垂れ流し
とうとう狂った正常な言語中枢の壁の裏
世界はひとつになれず
ついて来れない子供達
有機物的核破壊の中で
動植物に犯されて
猫が笑いながら自殺の願望を毒舌会の楽しい世界

人間
神が与えた百八の素晴らしい煩悩は
百鬼夜行に姿変え
一人称である世界は
自分と言う名の若干壊れかけながら歩く死体を
粘り気のある優しさで抱擁し
垂れ流されて消える言葉は
独立的内部紛争を恐れながら
透明な愛を それを愛と呼ぶの 愛と呼ばせてください と
泣きながら自慰行為を満面の笑みの自殺者の隣で
仕方なく崩して生きていく夢を見ながら
世紀末の予言を頭から突き刺し

人間
まだまだ狂えるらしい 確かに狂えるらしい

それを独り言だと気付くのに
半世紀を費やした核燃料は
やっと悟りと眠りにつき

人間
何も考えずに生きていけ
何も考えずに笑え
何も考えずに涕け

赤い白い天と地を
孤独と愛に挟まれて
今日も一人称から抜け出せず…

(始めから人間になど何も期待していない混沌の絵画は
 最後まで暖かい銃刀法違反を懐で壊した)