◎紅蓮の恋は

    紅蓮の炎に身を焼かれ
    私は質素な貴女を待っていた

    (この身を絶えさば
     貴女は振り向こうか
     それとも我をおいて何処かへか
     雲隠れか)

    恋焦がれてこの身を捩り
    半分諦めながら
    貴女の笑顔を待っていた

    もう届きはしない
    この想い
    星にくれようか
    海に投げようか
    されどそれも出来ず
    今夜も又 枕を泪で濡らそうか

    貴女が消えたその晩は
    紅蓮の炎で焼かれるよりも
    絶え難き辛い夜だった

    (貴女は何を想いけり
     生まれた土地に消えるのか
     その柔らかな唇は
     何を我に言いにけん)

    これ程 恋に苦しむのなら
    いっそ黒炎に抱かれて死ぬ方が
    閉ざされた想い昇天し
    綺麗な星に生まれ変わる事を
    喜ぶだろう

    (貴女の目は漆黒の闇の如し
     我をその目に焼き付け給うな
     我は其処で脆き
     この願い届く事を切に願うなり)

    夜は深くして心疼き
    旅に出るほど心は強くなく
    願い願うだけの心は小さく
    狂うことも許されない未熟なこの心
    嗚呼 なんて情けない
    嗚呼 なんて頼りない

    嗚呼 なんて 遠かりきこの片恋は

反漢詩

 心遠我想胸届事見夢事嘆
 我急胸掻毟塗血指見薄笑
 塗汗額血叩付想妄決付怒
 夜道歩散心冷為徘徊心慰
 女貴愛朧郭輪広月満中移
 願詠空終焉無夜中駆巡乍
 泪心中涕喚崩行其故脆儚
 愛恋就成時何世泪無語無

(読)
  心は遠く我の想いが胸に届く事を夢見る事を嘆き
  我は急に胸を掻き毟り血塗れの指を見て薄く笑い
  汗塗れの額に血を叩き付けて妄想と決め付けて怒り
  夜の散歩道で心を冷やす為に徘徊し心を慰め
  貴女の愛しい朧げな輪郭を広い満月の中に移して
  願いを詠えば空しく終焉無き夜の中を駆け巡り乍(ながら)
  泪は心の中で涕き喚き崩れて行く其れ故に脆く儚い
  恋愛成就は何時の世も泪無しでは語れ無い

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