◎古傷

     古傷にだって
     美学はある
     悲しみを超えた夜のすがすがしさだとかね

     けっこう苦しかった事は覚えているけど
     過ぎてしまうと良い思い出
     振り向く事など煩わしかったけど
     忘れたくはない
     冬の北斗七星が綺麗だった事も

     折れた翼は消えたけど
     明日を歩く足は手に入れた

     涕く夜は過ぎたし
     疼く夜も過ぎたから
     やっと花の色が鮮明と見えるようになった
     きっと心の傷は癒えた

     でも古傷は残る けど
     負い目に感じる事はない
     だって
     古傷には
     美学がある
     悲しみを超えた夜のすがすがしさだとかね

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