僕は何も持っていない
僕は世界を知らない
僕は僕である事だけしか見付からず
ただ震えるこの体を抱きしめる
僕は真実も知らなければ虚実も知らない
ただ僕の
僕の瞳に写るもの全てが
真実であって虚実であって
惑わされているのは
何も纏っていない
この心
風の流れに怯え(または世界の密談に喜び)
花の香りに震え(または世界の美談に酔い)
海の潮騒に驚き(または世界の雑談に怒り)
星の発光に涕き(または世界の猥談に塗れ)
僕の触れるもの全てが
何か熱いものを脈打ち続けている
目を閉じて歩く事より
この心に何かを被せる事が何よりも
難しくただ零れ落ちる心の汗に全てを
全てを詰め込んだ
僕が真実であるかのように
僕が虚実であるかのように
ただ僕のこの震える心を
何かに晒し続ける事が
僕が僕を認める為の全てであり
何かに隠し続ける事が
僕が僕を信じる為の全てであり
そして今日も
裸体な心を引き摺って歩き続ける
見えざる世界と
呼吸を合わせて
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