◎ソクラテスは牛丼お好き?

037 2004/06/22



祝5000HITお題雑文  ◆おがっち様よりお題提供
  :書き出し指定「昔むかし、ソクラテスって人がいました。」
  :雑文内容指定「吉野家の牛丼」


 昔むかし、ソクラテスって人がいました。そう言わずと知れた彼は「哲学者」。しかしこれだけでは味気ないので、少し彼の生涯を軽く追っかけてみよう。

 ソクラテス(前470/469-399)は古代ギリシャの哲学者で祖国の為に三度従軍をした他、アポロンの神託(神の御告げ)「誰もソクラテスより知恵ある者はいない」を受ける。それを信念の支柱とし証明しようと沢山の人々と問答(論争)をしていた。何故問答していたのかと言うと、「自分が知恵ある者だなどということには全く身に覚えがない」という(無知の自覚)と「神が嘘を言うはずはない」という(神の信仰)との間にはさまれ、アポリア(行き詰まり)に陥ったからからである。しかしソクラテスはある3人の人物(世間で知恵ある者だと思われている三者−政治家・詩人・手職人−)に会い問答し神託は間違っていた事に気付く。そこでソクラテスはかの有名な(思想)言葉、「無知の知」を表す。だが「国家の信奉する神々を信奉せず、別の新奇な神霊を信奉し、かつ青年たちを腐敗させる」と言う事で、国より告発され死刑の宣告を受け刑死した。そんな人物である。

 さて「無知の知」を見つけたソクラテスは己の無知を無くすべく、人とはなんぞや?馬は何故人語を話せないのか?私は何処から来て何処へ行くのか?といろんな興味のもと日々真実を見つける為に調べたり研究に励んだ。そしてソクラテスの興味の中に牛肉があった。
 ソクラテスは呟いた。「牛の肉程、美味な食材はなくまたこれを越える食べ物はない。それを世間に表さなければ、私の無知はなくなるまい」と。

 当時、古代ギリシャの食文化は料理で病気を治す事が定説であった。ゆえに、美味しくない(きっと)。そこでソクラテスは牛肉の使い方を真剣に考え始めた。何故ならば、牛肉が調理によっては美味しくなるからだ。しかし時は古代ギリシャ。現代の様に調理器具も調味料も揃っておらず、あまつさえ、ソイソース(いわゆる醤油ね)などありもせず、どうやったら美味しい牛肉を一般家庭に出せるのか?生涯の中で約2ヶ月程度考えたであろう、きっと。

 試行錯誤してやっと、焼く・彩る・コショウだらけの規定概念から外れ、初めて煮るを生み出した。しかもニンニクと一緒に煮る事さえも編み出した。しかし悲しいかな、ソクラテスは70の齢で命尽き果てた。彼は牛肉の素晴らしさを世に広める事ができず、志半ばで命を落とすのである。

 時は昭和に移り、ソクラテスは牛肉の良さをこの世に広める為に生まれ変わった。誰に?決まっているだろう、吉野家の創設者「吉野の姓」を持つ者に。そしてソクラテスの志を引継ぎ、他のファーストフード店と一線を概し、牛丼のみで勝負をかける店を作った。

 その店の名前は「吉野家」。巷で橙色の看板で知られ「よしぎゅう」と愛されている店。

 そうソクラテスは牛肉を一番美味しく食べる為にどんな料理が適しているか?日本人として生まれ変わりやっと掴んだ答えが、牛丼である。間違いない。
 そして牛丼教と言う宗教まで発展させてしまうほど、牛丼は世に広まり、ソクラテスの「美味い牛肉の使い方」を吉野家の牛丼を通して、牛肉の素晴らしさを世界に華々しく確立させたのである。

 しかし今、一つ強大な憂いがソクラテスを襲っている。それは豚丼の進出だ。豚は牛に負けているはずなのに、世界情勢と食糧事情の所為で威張っている。のさばっている。今や、牛肉は風前の灯火。
 牛丼を主体にしている店の経営は破綻を待つしかない現状。ソクラテスはありえないと言う表情で現代の食糧事情を見詰めていた。
 なぜ、最高級の牛肉がこんな目にあうのか?どうして豚なのか?牛ならば牛乳だって摂れる。そこからヨーグルトにでもチーズにでもできるじゃないか!肉だって、煮込み・焼き・刺し身・しゃぶしゃぶとバラエティー豊かではないか!なぜ!?豚に負けなければならないのか!!!肉の王様は牛のはずなのに!!何故、豚に時代を取って代わられようとしているのだ!!??これではまるで、牛肉が豚肉に暗殺されるが如くの勢いだ。

 そして登場した豚肉を使った料理とは…「豚丼」。牛丼の真似して付けられた名前だ!
 明らかに牛丼に宣戦布告である!きっと牛にBSEを植え付けたのは豚の使者だ!!
 奴等は牛を辱め世界に豚丼の名を牛丼の名前を踏み台に広めたいのだ!間違いない!

 ……そこでソクラテスはふと呟く。

 「豚肉よ、お前も(世界に出たかったの)か…」と。

 Byカエサル最後の言葉「ブルータス、お前も(暗殺を企てた一味だったの)か」より。

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