◎恐話百鬼夜行 第一夜

047 2004/07/11

◆悲しみのミッキーマウス

俺が中学2年生の時に体験した実話。

その日はすごく暑かったと記憶している。いやむしろ蒸し暑かった。
俺は埼玉にあるKRHS病院に入院していた。広大な敷地を所有し、8年前まで戦時中に使われていた病棟が建っているほど古い歴史のある病院だった。

そこの病院は沢山の病棟が集まっていて、それぞれの病棟が一つの長い廊下に、枝を張る様な小さな廊下で繋がっているような造りだった。その中で、ひときわ目立つ一番長い廊下がある。仮にそこをG廊下としよう。それはおおよそ80Mほどの長さで、トタンに囲まれたトンネルといっても過言ではない程の全面灰色一色の薄暗い廊下だった。そして3メートル置きに埃塗れの窓があり、やや中央より外れた所に病院の外に出るための出口があった。

簡単な地図で表すなら下記の様な感じ。
まど=窓 出口=扉無し出口 道路=ただの道 俺=如月 F=友達 Y=友達

        │道路│                     │  中  │
        │道路│                     │     └
        │道路│          空き地        │  央  出
        │道路│                     まFY   口
        │道路│                     ど  廊  出
        │道路│                     │俺    口
──まど──まど┘出口└まど──まど───C窓───A窓─┘出口└┘  下  ┌
病棟                                     ま
入口                                  中  ど
──まど──まど┐出口┌まど──まど───B窓───まど─┐出口┌┐     │
        │道路│                     │  央  │
        │道路│          空き地        ま     │
        │道路│                     ど  廊  │
        │道路│                     │     │

このG廊下、冬は人が極端に通る事もいる事も少ないが(かなり冷たい風が通るため)、夏には入院患者のカップルが集まるラブラブ廊下と名前が付けられるほど有名。もちろん俺にはまったく学生時代、縁のない廊下だった(苦笑)

その廊下の入り口付近で私は、友達と会っては馬鹿話をしていた、その時である。
窓側に居たFが
「あれ?あそこ(A窓)にミッキーマウスのぬいぐるみが…」
と言い出した。Yと俺はどれどれ?とFのいる窓から確認をした。ミッキーマウスは廊下から外に向かって窓の桟に腰掛けていた。
「誰かの落とし物か?」とF。
「どーなんだろ?あれ使って俺らでお人形さんごっこでもする?」
俺がそう言うと口々に、まさかぁ〜と笑いあった。そしてまた馬鹿話を始め出した。

2〜3分くらい経ってからかな。Yが叫ぶように、
「おい!ミッキーが、ねぇ!」
俺は冗談だろうと思いながらまだFの近くの窓から見たのだが…確かにない。しかも、俺達が話し始める前から(珍しい事だが)カップルは誰も来なかったし、話している最中も誰も来なかった。つまり誰かがいじったとは考えられなかった。それに人の気配もなかった。

でもG廊下の途中にある道路から誰か部外者が来て持っていたんじゃないかと俺は思った。いやそれとも、落ちたか?とりあえず俺はG廊下の入り口の前に立った。その時、鳥肌が立った…。
ミッキーは別の窓(B窓)の桟に、廊下の方に向いて腰掛けていたのだ。FとYは俺の動きが止まったのを見て、慌てて駆け寄りそしてG廊下を見た。やはり二人も動きが止まる。
そして皆の第一声「よし!ミッキーを見に行こう。」と。本来なら怖がって逃げたり見ているだけなのだが、きっと怪奇現象に遭遇して興奮したんだろう。ちょっと頭のネジがその時、取れていたのかもしれない。

俺達は戸惑いつつ、でも一歩一歩近づいていった。
ミッキーの顔がクルッ!!!…と動く事もなく。ミッキーの顔がニヤァ。。。。。と歪み笑う事もなく。いつも通りのミッキースマイル。

「まぁ多分、見間違いか、外の奴の悪戯だよ。」
そーだそーだよなと皆とりあえず納得し、さっきたむろっていた場所に、歩いていく。そして、G廊下から出て、俺はふと何かを感じ振り返った。すると…

ミッキーの場所から今俺らが立っている場所までおおよそ10秒たらずの移動…。
なのになのに、今度は向かいの窓(C窓)に内側を向いて座ってる!!!!
俺は、情けない事に叫んでしまった。仲間たちも振り替えり、俺と同じように叫ぶ!!
気付いたら、もう何がなんだか解らず、一斉に逃げ出してしまった。

その後、俺達はあのミッキーマウスに出会う事はなかった。

それから数年が経ち仲良くなった看護学生にミッキーマウスの話しをしたら、みるみる顔が青ざめた。そしてこんな話しをしてくれた。その話は長い間、学生の間で語り継がれている悲しい話だと言っていた。

「かなり古い話しなんだけど、あのG廊下で誰か死んだらしいよ。寒い冬の、それもまだ
 日が昇らない明け方。親に会いたくて病院を抜け出した女の子がいたんだって。でも
 その子、お金もないし松葉杖だったから遠くに行けなくて…何時の間にかG廊下の
 途中で寒さと寂しさで座り込んじゃって、そのまま寝ちゃって……。
 見つかった時には…。そして、その時その子が両手に大事そうに抱えていたのが
 ミッキーマウスのぬいぐるみ…」

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