◎恐話百鬼夜行 第八夜

057 2004/08/15

◆虫
私が小学生の時、関わった怖い話。
同級生のNが道路にいたでかい芋虫を見つけた事が恐怖体験の始まりでした。

Nは小学生特有の「虫を殺すのが大好き」なやんちゃ坊主でした。日々、虫を見つけては踏み殺したりガス銃で撃ち殺したり、羽を毟ったり…。私は元来虫嫌いで、虫を見ると逃げ回ると言う小心者(苦笑)。専ら逃げるのが常でした。

Nがある時、大きな大きな芋虫を見つけ、最初は小石をぶつけて苛めていました。が、だんだん興奮してきたのかもっとも酷い、ヘビの生殺しの様な事を口にしました。それは…。
芋虫の体3分の1を踏み潰し、絶命するまで小さい小石を上から当てると言う物でした。
先ほど私は虫嫌いだと書いたけど、それは羽が会ったりピョンピョン跳ねる虫だけでした。芋虫や毛虫、アリとかハサミムシは嫌いでなかったので、Nが芋虫を踏みつけ様とする時、さすがに可哀相で止めました。でも、Nはやめませんでした。

嫌な音を立てて芋虫は踏まれました。私はもう見ていらんなくなり「最悪!!」と言い残しその場を後にしました。
しかしまさかあんな事が起こるなんて…。
あの時、私が体を張って止めていたらと、今でも悔やんでいます…。

そらから1ヶ月くらいして、Nから「相談したい…」と声がかかりました。私は、お?好きな奴が出来たかなと思っていました。すっかり「芋虫事件」の事は忘れていました。人気の無い所に呼びだされてワクワクしながら話し出すのを待っていました。すると、

「俺、芋虫に殺されるかも…」

え?私は耳を疑いました。Nは虫を殺す時は非道な奴で虫がNに殺されると相談されたとしてもその逆はないだろうと思っていたからでした。
N曰く、異変は芋虫を殺した日から始まったとの事でした。

最初寝ている布団の中に何かもぞもぞするものが体に触れたようです。Nは布団をめくりました。するとそこに芋虫をもぞもぞと動いていたのです。Nは眠りを邪魔された事に酷く腹を立たせ、芋虫を掴むやいなや、窓の外からコンクリの地面に向けて投げつけました。ベチャッという嫌な音を立てて潰れた芋虫を見て彼は満足気に笑みを浮かべて寝たそうです。その日はそれで終わったのですが、次の日から。。。Nの座る所・触れる所・視界に入る所全てに芋虫がいました。Nはいよいよ持って何か変だ!と感じ始めたようです。芋虫はどんどん増えてきたらしいです。

だんだん芋虫の登場が最高に激しくなり始めたある晩飯の時、食べようと箸でご飯を持ち上げたら、そこに芋虫が入っていました。Nは慌ててご飯を床に叩き付けました。しかし回りの人達は酷く怒ったようです。何故ならその芋虫はNにしか見えないから。日に日にご飯やおかずは芋虫に占領され、口に入れた覚えが無いはずなのに何時の間にか口の中にご飯と一緒に芋虫が入り、プチっと言う音共に酷く苦い味が口一杯に広がったそうです。

そうして昨日ついに食料がすべて芋虫に変わったと話してくれました。
私は「だから止めとけと言っただろう?今からでも遅くないから手を合わせて許しを乞え」と伝えました。Nはその時素直に頷くと去っていきました。私は心配で後を付け、そっと物陰から覗いていました。しばらくしてNは急に何も無い地面に向かって怒鳴り出しました。
「お前らなんか全然怖くないだよ!!!ちきしょーーーーーー!!!!!」
叫びながら何も無い地面を何回も何回も踏み始めました。たぶんNにだけ見える芋虫を踏んでいるのでしょう。私は「このままでは行けない!」とNを止めようと物陰から出た瞬間、
「うわ〜〜〜〜〜〜〜来るな〜〜〜〜〜〜〜〜やめろ〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
とNは叫び声を上げました。空中に向かって両手をばたばたと動かしながら。多分芋虫が雨のように上から落ちて来て、それを振り払っているように見えました。そしてそのままどこかに走り去っていきました。

その日以来、私はNの姿を見る事はありませんでした。そして警察も動き出しましたが、やはり見つけられませんでした。私は警察に今までの経緯を話しました。
が、信じてもらえませんでした…。

しかし帰り際、結構年のいった白髪混じりの刑事がこう言いました。
「もしかしたら蟲に取り憑かれたのかもな…その子の家に行ってその子の部屋を見に行った時、その子のベットの上で、結構な大きさの芋虫を一匹だけ見たしな…。その大きさはかなりのものだったよ…。だから多分彼はきっと…芋虫に…なっ………ま、こんな事誰も信じやしないけどな…。」と。

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