◎恐話百鬼夜行 第九夜

058 2004/08/18

◆体重計
私はある深夜、喉の渇きをおぼえ目が覚めた。たぶんあれは去年の夏だったと思う。
冷蔵庫を覗く。飲み物になりそうな物が見当たらない…。ちっ。飲み物買い忘れていたか。
私は自分に悪態を吐き、そのまま台所へ移動した。
蛇口をひねりカルキ臭い水をしばらく出す。それからおもむろに流れ出す水に口を付けた。

ごきゅごきゅごきゅ。
けっ!やっぱマンションの水は不味いな…。水が滴る口元を拭い、明日は絶対腐るほど飲み物を買って置こうと心に誓いながらベットに向かった。

わずか数歩の距離。一瞬、視界のはしっこで何かがぼやーっと光った。私は、歩みを止めまわりを見渡す。しかし何も光を出す物はなかった。はずだった。視線を床に落とす。と言うよりも、何かの力で視線を誘導された。

するとそこには、怪しく光る体重計。そうあの体重を量る機械だ。女性にとっては友達であったり現実逃避を誘ったりするあの機械だ。最新式の奴はその機械から伸びる変な棒を握るだけで「体脂肪」なんつー訳の分からない物まで測れるらしい。もちろん私の家にある奴は乗ると数字の板がクルッと回る庶民派の機械だ。

私はその光か輝いている怪しい体重計から逃げたかった。しかし何故か体はその体重計に引き寄せられていく。心の中で「怖い怖い怖い乗るな乗るな乗るな!!!」と叫んでいた。でも無駄だった。ジリジリと体重計に近づき右足が乗る。

ぎぃ。。。

数字の板が少し回る。私の足はまるで私の足ではないような感覚になっていた。何度も足を乗せては引き、引いては乗せを繰り返した。もちろん私の意志と見えざる何かの力との戦いの証だった。しかしとうとう私は負けてしまった、右足がきっちり乗った。するとその右足に全体重を乗せ今度は左足を乗せた。ぎぃ。。。嫌な音を立てて回る体重計の目盛り。少しずつ振れ幅が狭まってきた。

いけない!!!数字を見たら死ぬ!!!!
私は直感的にそう感じ目を閉じ天を仰いだ。しかし!また何か得体の知れない力で私の顔は下に向き、ぎゅっと瞑った瞼をこじ開けられた。誰の手も誰の姿もない。私の目線は自然と体重計の目盛りにフォーカスがあう。。。そこには。。。。。。。。。。

昨日よりも2キロ増えた数字が目に飛込んできた!!!

昨日より太ってる。。。
私はその瞬間、事切れてしまった。

次の日の朝。私は改めて体重計に乗った。やっぱり増えてる。。。
私は別の意味で恐怖におののきそれ以来、体重計に乗るのが怖くて怖くて仕方がない。
また増えていたらと思うと、ゾッする。。。

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