◎醤油ご飯VSソースご飯H≪完結≫

135 2005/05/30

※前回までのあらすじ※
  醤油ご飯シンパ奪還後家臣Cはめでたくマヨネ女の元へ行き、夏休みが終わった。
  分散していた勢力が平常値に戻り、ソースご飯勢力も醤油ご飯勢力も対等になり、
  昔同様小競り合いを繰り返した。変ったのはお互いの頭同士が好敵手と認め合い、
  どこか小競り合い一つ一つを楽しめるようなそんな関係になっていった事だった。


 ある時からしばらくソースご飯勢力は静かになっていた。ん?なにか新たな戦い方でも、見つけたのかと如月は胸が躍った。おかしな事にやったやられたの中でもどこかそれらが、生活を潤すようなそんな楽しみになっていたのだった。

 しかし何時まで経ってもソースご飯達に動きが無い。不審に思った如月は仲間に黙って、単身ソースご飯の縄張りに顔を出しにいった。普段なら如月が顔を出せば途端に喧嘩越しの暴言が飛び出すはずなのに、今回は全然飛んでこない。明らかに尋常ではなかった。その上まるでお通夜の様に皆黙り込んでいた。

 如月は固まるしかなかった。しかしいつまでもそうやって固まっていても詰まらないので近場に居たソースご飯シンパ(♀)に声を掛けてみた。
 なおこれより先、ソースご飯シンパと書くと長いのでソースシする。

 如月  「おい」
 ソースシ「あ。醤油ご飯の如月君。どうしたの?」
 如月  「おいおい、どうしたのじゃなくて、何しに来たんだごらぁ!じゃないのか?」
 ソースシ「え?…もうそういうの辞めたんだよ、私たち」
 如月  「は?辞めたってどういう事だよ!?俺らの大切な事だろうが!?なに腑抜けな
      事を言ってんだよ。ソース男が悲しむだろう??ってかソース男どこ?
      飯食い終わってもう自室か?」
 ソースシ「……だよ、先週」
 如月  「ん?聞こえないぞ。なに?もしかして何かやらかして隔離か?」
 ソースシ「死んだんだよ。先週。もう頭が居ないんだよ…。」
 如月  「な、な、何言ってやがる!!核爆弾当たっても死ななそうなあいつが死ぬ訳
      ないだろうが!!…あ!そうやって俺の寝首を掻く訳だな!
      ソース男おそるべしだ!いいから早くソース男を呼ん
 ソースシ「だから、死んだんだってば!!!もういないの!!…いないのよ…」
 如月  「……嘘だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 如月はそう言うしかなかった。ご飯の食べ方は違えど、ご飯を活用する姿勢は通じる物があったし、何よりも張り合って楽しんで馬鹿やって毎日が楽しかったんだ。なのにだのに、その好敵手がいなくなったなんて急に言われても信じられる訳がない。だってつい数日前は元気に如月と言い合いしてたんだ…。重い病気を抱えてるなんて信じられなかったんだ…。

 如月  「どうして今まで黙ってた!!」
 ソースシ「彼に口止めされてたんだよ。私達だって、イの一番に教えたかった。でも…、
      情けない姿見せたくないし永遠の好敵手でいたいから、だから言うなって…」

 そう言ってソースシは泣き崩れた。回りは余計しんみりとし暗くなっていった。
 途端に如月の胸の中にあった糸と言うか硝子の玉と言うか良く解らないがそれが弱々しく消えてなくなった。まるで蝋が終わりかけた蝋燭の最後の火が消え入るように…。


 ソースご飯シンパ達の食堂を後にした如月はどこか現実に引き戻された夢見る少年の様に一気に醤油ご飯への愛情が冷めていった。いや、愛情が醒めたんじゃない。きっと好敵手を無くした事で醤油ご飯を守る為の理由を失ってしまったからだ。今まで燃えて楽しんだ分、張り合いが無くなってなってしまったんだ。
 そして今まで築き上げた世界はガラガラと崩れていく音に聞きいるしかなかった。如月は自分達の食堂に戻り事の成り行きを皆に話し、醤油ご飯グループを解散した。

 皆口々にソース男の、冥福を言いつつ、祭りの終わった後の空しさに包まれた。

 でも俺達が燃えてたこの世界は絶対に無駄じゃなく、その世界で輝いた俺達はちっとも、カッコ悪くなく、どこか少年の本来持っている無限の集中力と拘りを大切に育てていたと、思いたい。子供の時しか見つけられない拘りだったと思いたい。

 きっとこうやって大人から見たら実に下らない世界が子供から見たらピカピカに光ってる素敵な世界で輝けた事がとてもきっと大切なんだと、大人と言うどこか不定義で不条理さを背負い込んみながら、塩っぱい現実を舐め続け生きている如月は思うのだ。

 あの時代がきっと無駄じゃない。そう思いたい。実に下らない思い出ではあるけれど。
 勿論それ以来、如月は醤油ご飯もソースご飯もマヨネご飯も好きになり今では良く食う。あの必要以上に熱くなった俺らの世界を懐かしみ、噛み締めながらね。

                                      ≪完≫

 ここまで良く呆れず読んでくれた読者に深く深く感謝します。
 そして上記の様な経験がなくても、皆さんにも今でも大切に胸に秘め守り温めている実に「下らない事に熱かった日々」ってあると思う。どうかその素敵な日々を忘れずに、そしてそれを原動力にして、世知辛い世の中をグングン渡り歩いて行きましょう。

 ご拝読ありがとうざいました!じゃぁ撤収〜〜〜〜〜〜〜〜〜(笑)!!

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