◎幻影の彼女はネットの中に 2万HIT雑文
141 2005/06/12
◆谷川 雫様の創作雑文
:挿入文章A 「流石」「寒い」「光」「熱い熱い」「ラーメン」「お笑い」
「春」「夏」「私の」「如月」「文節」「兎に角」「旅行」「今回」
「夢」「冷や汗」「今日は」「目覚めが」「キタキツネ」「季節柄」
「煙草」「基本」「きばってみる」「書き出し」「あなた」「悲しみの」
「涙を」「向日葵」「しょうがない」「嫌い」「答えはいりません。」
「手紙」「喜び」「愛」「自由」「小説」「プロポーション」「大切」
「奇奇怪怪」「鏡」「プルコギ」「暗闇」「寒い寒い」「銀行」
「デート」「和風」「洋風」「ショートストロベリーロングケーキ」
「答えが欲しいのです。」「設定」
:挿入文章B 「A挿入文章A以外で外来語(カタカナ)の言葉を2回繰り返し(連続)でいれる。」
「B◯| ̄|_(ちなみにこれは、がっくりきたとかの記号)を1回使う。」
「C物音を入れる(例:雨のザーザー 動物の鳴き声)。」
「G雑文の最後を『だから困ってしまうんです。今回の雑文は!!』で締める。」
太陽が出ているのに流石に寒い。光は温度を持っていないのだろうか。小腹がすいているのは、昨夜から何も食べていないせいだ。あとで熱い熱いラーメンでも食おう。そろそろ昼になろうとするのに、俺は今朝から動けずにここに居る。
「何故だろう・・」
「ガキじゃ、あるまいし」
「お笑い草だ」
北海道の小さな岬の突端に、こうして座り込んでいる。春でもなく夏でもない六月。
私の名は如月文節。フリーランスで記事を書いているが、仕事も順調だし、手近な女はいくらもいる。あくびを噛み殺しさえすれば、飽きるほど手に入る。
海流のかげんか、流木が兎に角やけに多い。
どこでもよかった。俺の部屋から俺を切り離したかったのだ。たまたま乗った飛行機が釧路行きだった。
「旅行か・・はは・・」
今回は思い出など一切無い、無縁な土地がよかった。おかげで昨夜は夢も見ずに、泥のように眠った。冷や汗をかいたのだろうか、パジャマが冷たい。夜が明けた。昨日ホテルに手配を頼んでおいたレンタカーが届いていたので、今日は目覚めが重かったが、早朝から車をとばした。寝不足が続いた後の休暇にしては
「ご苦労さんな事だな」
と、苦笑が出た。
流木の他に、流木をそのまま砂に突き刺した様に、立ち枯れた木も、無数にある。潮風に晒されて脱色した風景は、ダリの絵の様な、シュールな雰囲気がする。
どこから来たのか、キタキツネの子供が、チョコンと座ってキュイーンと鳴き俺を見上げていた。季節柄か、観光客に餌付けされてしまったのだろう。目は野生の輝きを宿しているが、愛くるしい表情をしていやがる。ポケットを探ったが煙草しか無かった。
「いい年して、俺は、何をやっているのか」
握りしめた拳から、しびれた指をはがしてみると、手のひらに血が滲んでいる。舌打ちをする。俺は、いつも戦いに勝ってきた。今だって勝ち続けている。なのに、どうした事だ。ここ2ヶ月。呟き続けた。
「ガキじゃあるまいし」
あの日俺は、暇つぶしにネットに接続した。目的もなかったし、キーボードを打つのもオックウだったので、適当に流していた。
そこは、ありふれたサイトだった。
「ザーッと眺めれば、又次だ」
その時は、そう思っていた。基本的にきばってみるほどのものでもないと思っていた。
個人サイトのBBSは、だいたい似た者同士が集まるのが相場だが、そこは年齢層も性別もバラバラで、そこのところに俺は興味を引かれた。ありふれた書き込みをした。それで終わりのつもりだった。失敗だった。
1週間くらい経って、メールが届いた。メル友だなんて、とうに卒業していたし、いい大人の俺がと思っていた。どこに落とし穴があるか、人生ってやつは、わからないものだ。
俺は返信を書いた。書き出しは
「あなたの悲しみの涙を浮かべた顔が、向日葵のように笑えるといいね」だった。あきれるほどキザだったので、しょうがない、「嫌いになられても困るので、答えはいりません。」と、おっかけでメールを打った。そして、ポツリと入ってくる手紙を心待ちにしていた。待つ喜びがあった。住まいも年もなにも明かさない彼女を、なんと「愛」してしまった。
まったく馬鹿げた話だ。
仮想現実、バーチャルリアリティー。バーチャルリアリティーの世界さ。ただ、俺の中で徐々に形になってしまった彼女は、自由に無邪気に笑う。顔だけはソフトフォーカスがかかっていて、未だに形になっていない。俺の中にこんな「純情」が残っていたことに歯噛みしながら、日々鮮やかさを増す心の中の彼女から、逃げ出してきたのだ。フヌケになって。三十数年生きてきて、こんな落とし穴があったのか。あきれるぜ、まったく。
バーチャルの世界で助かったぜ。
小説じゃあるまいし。手のひらの傷を舐めると、ふと、彼女の暖かな唇を想像している。プロポーションも定かではない、けれども大切な幻影が微笑む。99%嘘で、楽しく遊ばれているのかも知れねえなんて、100もショウチ。1000もガッテン。20000もアタリマエ。奇奇怪怪だぜ、まったく。
「チキショー」
「今日で最後だぜ」
この独り言が無意味なのは、俺が一番よく知っている。鏡の中の俺が苦笑いをする。
六月だというのに、風は身を切るように冷たい。プルコギを肴に、今夜は久方ぶりに酒を飲もう。浴びるほど飲んで、酔いつぶれてみよう。◯| ̄|_。そして、誰も待っていない暗闇の寒い寒い俺の部屋に帰ろう。
そうだ。先週銀行で会ったA子とでも、デートしてみようか。和風のカフェがオープンしたから、そこで洋風のショートストロベリーロングケーキを二人で食べたら、「幻影の彼女の答えが欲しいのです。」とは、言わなくて済むだろうか。メチャかっこいい系の設定だった俺を、「ただの女たらし」にする気か?
『だから困ってしまうんです。今回の雑文は!!』