◎家 2万HIT雑文
146 2005/06/26
◆maro_1202様の創作雑文
:挿入文章A 「私の」「目覚めが」「春」「夏」「秋」「冬」
:挿入文章B 「D会話を「」を使って挿入する。」
夕暮れが追われつつある。街には家庭の匂いが子らを探して漂っている。少し離れた処から聞こえる歓声は、長い長い影法師を引き連れている。
「そろそろ家に帰ろうか。」
この情景に呟く様に幸雄は小さく口を動かした。どこまでも夕日に映える瞳は、一体何を見てるのだろうか。力なくペダルをこぎ、去り行く幸雄もまた長い影法師を引き連れている。
南西10キロ、半刻後。ネオン街の路地裏は騒然となった。いつもなら、心の穴を埋めようとする夜の住人が彷徨い始めるこの場所で、黒山が蠢いていた。その真ん中で、冷たい息を吐きながら横たわっている影がある。幸雄だ。口々の声援は、まるで自分に言い聞かせているようだ。一体横たわる幸雄に、どんな自分の影を見ているのだろう。不意にタクシーのライトに照らされた幸雄の顔には、うっすら輝く涙が見える。
「家に帰りたい。」
奥歯を噛んだ呟きは、十余人の人の誰にも響くことはなかった。帰ったところで何か変わるものではない。それでも、苦しく最後を自覚したとき、あの影一つできない優しい明るさを求めてしまう人の心など、夜の住人には分かるはずもなかった。
荒々しいサイレンと、同情の声が遠くなっていった。幸雄にはもうどうでもいい事だった。こんな影一つできない暗い場所には、もう幸雄の心はなかった。
(あの子らはどうしているだろう)
それを最後に。
明日になれば、また何もなかったかのように足りないものを埋めようとする人で騒がしいだろう。そして、悲しい心で朝を迎える人たち。彼らには帰るべき家もない。灯火の消えたような街をただ彷徨っているだけである。それだけは春夏秋冬変わらない、人の迷いの暗闇は夜よりも深かった。
悪意をもって40%ほど脚色されているが、これは事実である。幸雄とは私のことだ。当然幸雄は仮名だが。
それにしても、自転車をこいでて寝てしまうのもどうかと思うが、転んでも寝ているのもどうかと思う次第である。
追伸
マミー、電話有難う。おかげで目が覚めた。今度からは毛布を持ち歩くので(嘘)、どうか怒りを静めてください。目覚めが怒号に包まれるのはきついです。