◎恐話百鬼夜行 第十八夜
158 2005/08/03
◆まだ生きてるよ。 投稿者:如月八雲 職業:事務職 年齢26歳
これは、5年前、今の会社に入る為の入社試験を受けた秋の日の渋谷での話しです。
その日は渋谷の本社で試験と面接をすると言うことで午後から渋谷に赴き受けました。
そして試験と面接は18時に終わると聞いていたのですが、当時の人事担当の社員が急な仕事が入り、18時終了予定が20時になってしまいました。
地元が埼玉であまり東京に来たことが無かった私は地元ではあまり体験しなかった所為か人込みが苦手でなんとかそれを避け様とビルの壁沿いや道の端っこを歩いていました。
私はその頃、寮生活をしてて帰る時間が門限に間に合いそうになかったので遅れる事を、公衆電話から寮母さんに伝えました。そしてそのあと友達にも電話し、帰る際に何か食物を買うが、欲しい物があるか等を話しながら、人込みの流れを見詰めていました。
すると名も知らない古そうなビルが目に留まりました。そしてそのビルには螺旋階段が、ありました。へぇ〜近代的なこの渋谷にもレトロな物があるんだなぁと私は思いました。
当時、東京と言えば近代的で古い物がないと勝手に思い込んでたのでかなり新鮮でした。つまり田舎者って事なのですが(汗)
そしてその螺旋階段の途中にづたぼろの服を着たおじいちゃんが立ってこちらをジッと、見てました。今で言えばホームレスな感じです。髭は伸び放題で肌の色は灰色っぽくしかし何故か来ている物には似合わないほどの立派な革靴を履いていました。そして尚もこちらをジッと凝視し続けるのです。
(うわぁ。。。なんだか絡まれそうだ…)
そう思いつつそのおじいちゃんに背を向けて友達と話し電話を終えました。そして視線を公衆電話の入り口に移すと……
おじいちゃんが公衆電話の直ぐ傍に立ってるではありませんか!私は男ですがそれでも、やはり慣れない土地で知らないホームレスが近づいて来たのでビビリましたよ。ええ。
そして何やらもごもごと口を動かしている。
(もしや食べ物話しを聞いていて何か食い物が欲しくなったのかなぁ…しかしなぁ…)
そう思いながらそそくさと公衆電話から脱出しおじいちゃんを避けるように歩き出そうとした時です。
おじいちゃんが私の前に立ちはだかり、更に強くもごもご言い出したのです。私は面接が長引いて帰りが遅くなったことと名も知らぬ人に通行の邪魔をされイライラの頂点に。
「何ですか、一体!」とつい文句を言ってしまいました。
するとおじいちゃんはカッ!!と目を見開いて一言ポツリ
「あんた明日死ぬよ」と言ってきました。
さらにおじいちゃんの手を見ると血だかケチャップだか解りませんが赤い何かがべっとり付いて滴ってました。私はその異様な光景に、ただただ固まるしか出来なかったのですが、おじいちゃんはそんな私を尻目に去って行きました。
一瞬思考停止していたが、勝手に死ぬと予言されて無性に腹がたったので文句を言おうとおじいちゃんの姿を確認しようと見回したら…そのおじいちゃんの体…透けて行くのです。おじいちゃんの前を通行する人の流れや妖しいお店のネオン。そして通り過ぎる車。全て、おじいちゃんの背中を突き通して見えているのです。
そして消えてしまいました。おじいちゃんの回りの人はおじいちゃんがいた事すら解っていない様子でした…。素直に東京はなんて怖い場所なんだ。さすが魔都東京と呼ばれる事はあるなと感心2割、怖さ8割で地元に帰りました…。
でもおじいちゃん。あれから5年経ってます。おじいちゃん、はずれちゃったね…。
=======================================
さぁ、今宵から「恐話百鬼夜行」、はじまりはじまり。
この恐話百鬼夜行第百夜まで毎年毎年やるつもりです。そして最後の百になったとき……一体何が起きるのか…皆様と体験したく続けて行きます。そして皆様はこの百物語の最後を知る唯一の生き証人となってもらいましょう。
そして誰も体験した事の無い百一夜目の主人公となってもらいましょう。
さぁ恐怖が人の本能を暴き出す。今宵も震えながら震えながら霊魂の物語を楽しもう。
もう逃げられないこの世界。あなたは何を今宵見てしまうのか……。
ああ、どっとはらい…。