◎恐話百鬼夜行 第十九夜
159 2005/08/07
◆盛り塩がない… 投稿者:H・Uさん 職業:大学生 年齢20歳
これは、私が通っている大学で知り合った友人T君のお話です。
ちょっと現実離れしているお話に聞こえるかもしれませんが如何せん地方の話なので否定できません。地方の話として聞いていただければ幸いです。
T君が高校2年生のとき、その学校の寮のあるいわくつきの部屋(1人部屋)に住む事に決まりました。その学校は地方の高校にしては珍しく寮生活ができる高校でした。もれなく高校もその寮も古めかしく、誰が見ても、いわくつきと言えるくらい古めかしい高校です。
T君が私に、昔実は不眠症だったと打ち明けたのは大学の夏休み中のキャンプ中でした。最近は全然そんな事ないと言いながら持っていたビールを静かに飲んでいます。私はT君にそれは病気か何かでか?と何の躊躇もなく聞いていました。もともとT君とは何でも話せる親友みたいなものだったからです。
T君は、病気云々とかじゃない無い。ただお前はあっち系統の話し信じないし、聞いても暇なだけだからやっぱこの話やめと言って来ました。しかし私は何故だか無性にどうしても聞きたくなり、どんな話でも信じるから話してくれないかと頼んでみました。
彼はその後、数秒動きを止めたかと思うと、おもむろに残り少なかったビールを喉に押し込めるように飲み干しました。時間は夜の23時を回った頃だと思います。やけに暑いはずなのに何故かその時は、肌寒さを感じました。そしてさっきまで、五月蝿いほど学生達は、騒いでいたはずなのに急に静かになりました。耳に「シーン」と耳鳴りが聞こえてくる程。
彼が重い口を開いたのはその数秒後でした。
俺のいた高校は戦後間もない頃に建てられた結構、古い高校なんだ。至る所が老朽化して見ようによってはお化け屋敷と噂が立つほど。寮はその数十年後に建てられのだがまるで、その校舎に合わせるかの様にどんどん傷みお化け屋敷と言われるほど老朽化してしまった。
俺は、その傷みの激しい学校の寮に住んだ。場所は北側1階。そして一番端っこだった。
俺はさ、その寮に入るまで一回も心霊現象なんてあったことなかった。しかしその部屋に、初めて寝た夜。心霊現象を受けたんだよ。笑っちゃうだろ?今までそんなことと無縁の生活送ってきたのに。俺には霊感なんてこれっぽっちもないと信じていたのに。
私はただ頷くしかできませんでした。T君は絶対嘘や引っかけなどを言えるような陽気な人じゃないと知っていたから。それに一言一言話すたびに、肌寒い気温の中でT君は額に、球のような汗をかき始めたからだ。私は持っていたハンカチを渡し、話を続けるよう促していた。T君はゆっくりと汗を拭きながらまたゆっくりと話し始めた。
初めてその寮で夜を向かえ、明日の朝練(彼はサッカー部に所属しいたらしい)のために、早めに床に入ったんだ。時間はおよそ22時ごろ。だけどなかなか寝付けないんだよ。まぁ新しい場所だし寝付きが悪くなるのは最初だけだろうと何度も向きを変えたりして、いつの間にか、うつらうつらし始めたんだ。その時だった。
急に何かが重くのしかかるような、息もできない位の金縛りにあったんだ。その日は何も疲れる様な事した覚えはないし、兎に角今まで俺は金縛りなんてものに会ったことないからただパニクるしかなかったんだよ。ただ怖かったよ。ただな、息がしずらかったから多分、酸欠気味になってそのあと意識を失って、目覚めると朝になって汗びっしょりになってた。
まぁ最初は慣れない場所だからと思ってたがそれ以降、毎日のように金縛りにあったよ。来る日も来る日もな。そして体力が減り、朝練に起きれなくなりサッカー部を辞めた。もうその頃の俺はげっそりと痩せ(今は90キロの大型人間)、周りの奴らが気味悪がってな…。
そんなある日、サッカー部の先輩が部を辞めてしまった俺に話しかけてきたんだよ。
「お前でもう3人目だ」ってさ。続けてこう言うんだよ。「特にあの部屋に入った奴は」ってさ…。俺はいまだに金縛りで苦しんでいたからどうしても、その金縛りにあってしまう理由を知りたくて、その先輩に食って掛かったんだ。するとさ、先輩がこう言ったんだ。
「あの部屋さ、実は建て増して作られた部屋だったんだよ。まだ戦後間もない頃、とある
体育教師の息子が赤痢で死んだんだ。体育教師は全校生徒からも学校からも厚い信頼と、
そして次期校長になれるんじゃないかといえるぐらい、学校の財政建て直しにも
協力しててさ。で、出来れば自分の息子の亡骸をなるべく自分に近い場所で埋葬したいと
学校に持ちかけたんだ。学校側は、普段から何かと学校を助けてもらっているし、
何よりも息子を凄く凄く大切にしていた子煩悩ぶりを知っていたから断れなくてな。
で、埋葬されていたのが、お前の今いる部屋の下と言う話しらしいよ。
ただな、どう言う訳か、建て増しの時工事のためにその下を掘り返したんだけど、
埋めたはずの死体が出てこなかったんだってよ。その場所から。仕方が無いから
墓地だけ移動したんだってさ。ほらお前の部屋から遥か向こうにぽつんと見える
あの墓がそれみたいだよ。」
嘘か本当かはわからない。だけど確かに墓はあるし、そう信じるしかないんだ。俺はこのままでは身が持たないと思って、知り合いの坊さんに頼んで部屋を清めてもらってお札を、貼ったんだ。そしたら今までの金縛りが嘘のようになくなって快眠なせ威喝を遅れたんだ。
だけどな困った事があってさ…。
私は「なんだよ」と口ごもるT君のワキを突付きながら聞いてみた。すると…
俺さそれ以来、見えるようになってさ…。何時でも見えてしまうくらい霊感が強くなってしまったよ…。今じゃさ、ふっと歩く人を何気なく見たらその人の背後霊の表情まで、読み取れたり、ちょっとでも変な雰囲気の場所で宿泊すると金縛りにあって幽霊見ちゃったり、幽霊から不意に話しかけたり…。だから俺、いつも清めの盛り塩を持ち歩いてる。
私は清めの盛り塩なんて見た事が無かったのでどんなのか見せてよと頼んでみた。T君はめんどくさそうに、解ったとカバンを漁る。すると見る見るT君の顔から血の気が引いてくのが目に見えて解り、どうした?と声をかけた。すると…
「忘れてきちゃったよ…」
だけどそこで私は「まぁこんなに広くて人多いキャンプ場だし幽霊なんていないよ(汗)」とビビリながらT君を安心させようと言ったんだ。私はきっとこの言葉で安心するだろうと思っていたし。でも…
「…ここは昔、火葬場の跡地らしいぞ…さっきからそう霊達が耳元で囁いて来るんだ…。」