◎恐話百鬼夜行 第二十夜

160 2005/08/10

◆小坪トンネルの怪     投稿者:K・Kさん 職業:Tドライバー 年齢40歳

 私はタクシードライバー暦15年のおやじです。
 今日は如月さんにせがまれ(笑)怖い話をします。お話する内容はタクシードライバーに、ありがちのあの話です。しかしあの話はあまりにも王道で、所詮作り話だろうと私は信じてませんでした。ええ、信じてませんでしたとも…あの雨の夜の恐怖を、体験するまでは…。

 私は小学生の頃、ボーイスカウトに入団していました。そこでは青少年を育成する為に、様々なプログラムやカリキュラムがあって、体力的には辛い時もあったけどでも楽しい夏を過ごすには持って来いの集まりでした。

 ボーイスカウトのプログラムの中には「夜間歩行」なるものがありました。これは重たい荷物をリュックに背負って、夜間歩き回ると言うものでした。今となっては何ともつまらんプログラムでしたが当時はボーイスカウトで知り合った友人達と夜中まで、遊べる事に大変嬉しいプログラムでした。

 その日の夜間歩行は小坪トンネルでした。
 皆さん小坪トンネルをご存知でしょうか?知らない人は少ないと思います。かなり有名な心霊スポットですもの。今でも若者たちが怖いもの見たさでよく集まると聞きます。私は、もう2度と通りたくない場所ですけど…。でもタクシードライバーですからいつかはきっと通らなければならないかもですね。

 この小坪トンネルは昔、火葬場が真上に建てられている所為か常日頃から幽霊が出ただの幽霊を見ただの憑依されただの話題が尽きない場所ですよ。今は何本もトンネルがあって、火葬場があるトンネル以外のトンネルが使える状態でしたけど、私が中学生の頃はまだ一つしかトンネルがありませんでした。そう火葬場の下にあるトンネルだけなんです。

 私達は夜間歩行をその小坪トンネルを通る順路を選びました。昔は何班かに別れての行動だったので順路がいろいろ選べたのです。そしてとうとう小坪トンネルの前に、私達は到着しました。友達も私も生唾を飲んで立っていました。トンネルの入口がまるで大きな大きな口のように見えて足が進みませんでした。そう思えるくらいその場は気持ち悪い雰囲気を、漂わせていたのです。すると雨がポツポツ降り始めたのです。

 私達は意を決して一歩一歩と足を踏み入れていきました。トンネル半ばまでは何事もなく友達と怖がりながらもワイワイガヤガヤしてました。そして暫く歩くとそのうちみんなの、足音が纏まってきます。まぁみんな小さいので自然と足も短いですからね。そして一足一足歩く足音が重なって、さぁ後半分で小坪トンネルが終わるなぁって時に、一人だけ足音が、ずれて聞こえてくるのです。みんなそれぞれに顔を見合わせてだんだん青ざめていきます。だって自分たちの足音じゃないのだもの…。そしてやっぱ幽霊が出たのかと私達はざわめきこれまた意を決して振り返ってみました。しかし。。。

 そこには誰もいなく、足音もやんでしまいました。僕達の空耳かな?って感じでちょっとビビリすぎたのかもと笑いました。きっとあまりにも怖くて雨音が足音に聞こえたと思ったのです。しかし次の瞬間、進行方向から風が吹いて来ました。

 そして前を向くと…そこには白い洋服(着物?)を着た女性が立っていたのです。そして、おかしなことにその人は外が雨なのに傘を持っておらず、だけど髪の毛が全然濡れていないのです。まるで今、ドライヤをかけ終えて、ふわぁ〜って髪が濡れていないような軽さで、風になびいているんです。おかしいでしょ?普通雨が降っていたら濡れるし、からっからに乾いているなんて湿気的にもありえないじゃん?しかも私達が歩いて小坪トンネルの出口をきっちり今まで見ていたけど白い洋服を来た人なんていなかったし、追い抜いてった事実もなかったんだよ。

 いや、きっと追い抜いていったのでしょう…さっきの足音はたぶんこの女性の足音…。
 私達は「でたぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」と叫びながら一目散に入口を目指して走り出しました。そして怖いと思いつつも、私はちらっと振り返ると、トンネル一杯に広がった般若顔が追いかけて来る最中でした。私はさらに絶叫しながら逃げたのです。

 え?その後?もちろんこうやって如月さんを送っているのだから無事に決まっているじゃないですか。やだなぁまさか私が幽霊とでも?

 そう言いながらにかっと笑ってさらにおじさんはハンドルを操作していました。

 あ、実はねまだね、この話続きがあるんだよ?ちょっと長くなるけど聞くかい?
 もちろん僕は頷きました。じゃないと今日の雑文、落としちゃう事になるし(苦笑)

 そうか。じゃぁ続きを話すね。どうして私が小坪トンネルに二度と行きたくないと言っていた理由になった話をね。これ、去年に体験した話なんだよ。

 その日もやはり雨で、たまたま私は逗子の方に向かって、タクシーを流していたんだよ。時間は夜の11時を回った頃かな?遠くで女性が手を上げているんだ。結構遠目から見ても美人さんで、お?なんか私ツイてるのかなぁって鼻の下を伸ばして近寄っていたんだよ。
 で、乗せたら当たり前だけど、行き先聞くじゃない?するとその女性がさ、か細い声でさ「小坪トンネルをくぐって下さい」って言うんだよね。あー小坪トンネルを越えたらまた、行き先をナビってくれるのかなぁって思いつつこの女性を運んだんだよね。もちろん女性に気を取られて小学生の時に体験した記憶は忘れたよ。だって本当に綺麗なんだもん(苦笑)

 でもその女性。その一言言ったきり何も話さないんだよ。外は雨でしょ?しかも行き先は小坪トンネル…、あ、小坪トンネルが怖い場所って情報は覚えてたのよね。で、まさかなぁこの人幽霊じゃないよなぁなんてアホなこと考えて運転してたのよ。けど綺麗だった。

 お客さん、そろそろ小坪トンネル抜けますがどうしますか?って声をかけたんだよ。でも返事がかえって来ない。あーもしかして寝ちゃったのかなぁって思ってバックミラーで見るけど姿がない。あー横になってるのかなぁって思って車を減速させて振り替えてみるとさ…

 振り返ってみるとさ…

 巨大なに膨れ上がった顔がバックミラーの写らない死角にいて私を睨みつけてるんよ!!しかも顔中血だらけだし!!さらに口パクな感じで「コ・ロ・ス」なんて言ってるし!!
 もう会社のタクシーって事忘れてその場に置いて来ちゃったよ(苦笑)そして同じ会社の、タクシー仲間呼んで、俺を拾ってもらって、帰って着ちゃったんだよね。もちろん、会社の上司には怒られて、取りに行けって話になってさ。まぁ当たり前だけど。で、取りに行ったのよ。もちろん一人じゃ怖いから仲間連れて。

 そしたらさ、シートが…ぐっしょりってんならありがちで良かったんだけど…シートが…血でぐっちゃり汚れた…しかも何故か枯葉が散乱してた。ちゃんと窓閉まってたのに。私はそれ以来、小坪トンネルには行かないようにしてるよ…だって殺されちゃったら…ねぇ…。

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