◎恐話百鬼夜行 第二十一夜
161 2005/08/14
◆鏡の中の女 投稿者:S・Yさん 職業:学生 年齢13歳
私がまだ小学校に通っている時の話です。
季節は、心霊番組が沢山放送している時期。つまり夏の頃です。
私の部屋のドアには、大きな大きな鏡が取り付けられていました。この鏡は私が生まれる前から取り付けてあったみたいです。この鏡の大きさは、顔を見るだけでなく上半身全部が映る大きさです。私は幼い頃からけっこう気に入ってました。
ある日、テレビで心霊番組を熱心に見ている時でした。
とある有名な霊能者の人が『大きな鏡は霊を引きつけてしまい良くない』と言っていて、少しドキッとしました。だって私の部屋には『大きな鏡』があるのですもの…でもまさかと私は思いあまり気にせず放っておきました。ほら誰だって怖い話は身近に感じてしまうけどまさか自分が怖い話しの主役になるなんて思いもしませんよね?
すっかりその霊能者の方の言っていた話なんて忘れてしまった数日後……………
私の部屋は妹の部屋から少し離れていてちょっと奥まった所にありました。結構騒がしくしていもあんまり音が漏れる事がありません。その逆に物音もあまり聞こえて来ないので、ちょっと寂しくてよく妹の部屋に遊びに行きます。
もちろんその日も普段通り妹の部屋にいました。それは寂しかったと言うのもありますが私の大好きなお目当ての漫画あるからでした。
私は妹の部屋で漫画本を読むのに熱中してたらしく久しぶりに夜遅くまで起きてました。時計を見ると、もう深夜の1時を回っていました。あ、そろそろ寝ないとお母さんに叱られちゃうなと思い、自分の部屋に、こそこそっと帰りました。
そして昼間から私は自分の部屋に言っていなかったので、部屋は当然暗闇に包まれていて電気をつけないと何も見えない状態でした。私は廊下の電気の明るさを頼りにドアを開けたまま、私の部屋の中の電気をつけようと部屋の中に入りスイッチに手を伸ばしました。
その瞬間。なんとも言い表せない重たい雰囲気が私の頭と肩にかけてズシンと乗っかって来ました。その瞬間私は体の自由を何者かに奪われたかのように動けなくなりました。
そして勝手に閉まっていく部屋のドア。
あ、そう言えばこの扉には『大きな鏡』が…
------『大きな鏡は霊を引きつけてしまい良くない』------
私の頭の中には数日前に見た心霊番組に出演していた霊能者の方の発言がグルグルと回り始めました。何度も何度も『大きな鏡は霊を引きつけてしまい良くない』と。
重たい雰囲気はさらに重たくなり、いつの間にか私は床にぺたんと座っています。そしてさらにドアは速度を落としながら、ギギギッと嫌な音を立てて閉まっていきました。目を、つぶりたくてもつぶれず、息だけが恐怖のためか浅く大きくなっていきました。
少しずつ部屋が鏡に映りこんでいくのが見えます。そして私の肩が映り、とうとうあとは私の顔が映るだけとなりました。私は目を離せません。怖いのに体が動きません。噴き出す冷や汗。息はますます荒くなり、部屋中に私の吐息で満たされたとさえ思えるほどです。
とうとう私の顔が映りました。いや、正確には私の顔なんて映ってなどいませんでした。本当なら私の首の上には私の顔が映っているはずなんです。普通なら…。
だけどそこに映っていたのは、見知らぬ女性の頭が映っているのです。
顔は青白く、頬は痩せこけ、恨めしそうな顔で私をジッと見ているのです…。
いや、睨んでいるんです。ギョロギョロと痩せこけた頬の上にまるで無理やりはめ込んた血走った目で私の頭から足元まで舐めるように何度も何度も見てくるのです。私は動かない体を必死に動かして逃げようとしましたがでも動きません。声も出したくても出せません。口が僅かにパクパクと動くだけなんです…。
その女性は何度も私を見ては睨み歯をむき出し、そしていつしかその女性は自分の首を、絞め始めました。その手は鏡に映った手。つまり私はいつの間にか自分の手で自分の首を、絞め始めているのです。苦しくても手は止まらない。どんどん締めていく私の手。
ああ、私はこのまま殺されるんだ。と思った瞬間、死にたくないと言う強い気持ちが現れました。このまま死ぬなんていや!あなた誰よ!私は死にたくない!!そう強く思えた瞬間
(た す け て)と私がやっとかすれるような声を偶然に出す事ができました。
その瞬間、女性はニヤッと不気味に笑うと、すぅ…と消えて行きました。私はそのまま、体が自由になったのを覚えています。しかし力尽きて気を失ってしまいました。
次の日、お母さんに、ベットで寝ないでどうして床で寝てるの!と怒られながら、目覚めました。私は急に昨日の怖さを思い出し、お母さんに抱きついてワンワン泣いた事を今でもはっきり覚えています。そして母親に昨夜の事を話しみたけど、変な夢でも見たんでしょ?とまったく相手にされませんでした。しかし首にはしっかりと自分で締めた跡がくっきりと残っているんです…それ以上の事はお父さんに聞いても解りませんでした。
しかし…あの女性は一体何だったのでしょう…。
以来、あの鏡はあまり見ないようにしています。本当に怖かったです………。