◎恐話百鬼夜行 第二十七夜

167 2005/08/21

◆『うねるものと少年』     投稿者:Y・Uさん 職業:学生 年齢17歳

 高1の時に心霊スポットで有名なX霊園に女3人と男4人で行きました。それはもちろん肝試しのために。その頃、リングやらせん等の恐怖系が流行っていた事もあり、誰も迷う事なく仲良し7人があつまり、肝試しすることになったんです。

 けどまさか本当に恐怖体験するとはその時、誰も思っていませんでした。

 夕方頃3:3:1と言う感じで車2台と原付バイク1台でX霊園に、いきました。原付の男の子は免許が取れた事がとても嬉しかったらしくそれを自慢したくて愛車で参加。そしてX霊園の中央で皆で輪になって地べたに座り恐い話とか雑談とか恋愛話とかで盛り上がっていました。

 そんな時です。原付で来た子が悪ふざけをし始めたのです。

 墓石に上ったり、卒塔婆を振り回したり、供えてあったお酒を墓石にかけたり…。最初は仲間全員で「やれ〜やれ〜」って煽ったり笑ったりして見ていたのですが、そのうち墓石をずらしたりし始めたりして、流石にそこまでしたらと言う思いに周りがなってきて止め様と声をかけるようになったのですが、それでも止め様としませんしだ。

 「ねぇ。。。あれ何?」

 そう指を指したのは一人の女の子でした。原付の男の子以外はその女の子の指差した方に視線を持って行くと…そこには何かよくわかりませんが黒くてぐにょぐにょとうねっている奇妙な物体がいました。
 最初は遠めで見ていたのでお盆なので喪服を来た誰かが向かってると思っていたのですがそれにしても人の形には全然見えてこないのです。例えば、肩とか頭とかくっきりと見えるはずなのにその黒いぐにょぐにょとうねるものはまったくそう言う輪郭が無い事に近づいてきてはっきりと判って来ました。みんな固まっています。何せ全く見た事ない物体です。

 最初はゆっくりとしたスピードで私達に向かってきたはずなのに、近づくにつれどんどんどんどん早くなって向かってきます。明らかに通り過ぎると言う雰囲気ではなく、私達に、向かって近づいてきています。

 絶対捕まったら殺される…

 私達は異様な殺気を肌で感じ逃げようと走り出しました。そして、原付の男の子にも早く逃げる様に叫びました。最初その男の子は私たちが脅かそうとしていとだと思ってたらしくおどけてふざけていたのですが、一生懸命にそのうねるものを指差してる私達の視線の先をやっと見つけ、固まっていたのですが私達と同じように危険な何かを感じたのでしょう。

 その後その男の子も一生懸命に逃げやっと原付のエンジンをかけ走り出しました。私達は既に車に乗り込み動き出しています。

 そうこうしているうちにも、うねるものはどんどん迫ってきています。やはりと言うか、当たり前ですが原付の子が一番うねるものに追いつかれそうな距離になってしまいました。目いっぱいアクセルをあけているにも拘らずどんどんその子との距離は近づいてきます。

 必死の形相を私達は車の中か見ていました。どんどん包み込まれようとしている男の子。一生懸命にヘルメットとか荷物とかどんどん投げつけているのに全く当たらない。まるで、距離的にも既にうねるものに捕まってもおかしくないはずなのに、一定の距離を何故か保ちつつどんどん原付の男の子を追い詰めていく。いや、そう言う風に見えたんです。本当に。

 くるな!ぼけが!!!
 とうとう恐怖のために原付の男の子が何とか逃げ出したくてうねるものに叫んだ瞬間。

 ぱっと、うねるものがまるで風呂敷包みを開いたかのように広がって、原付の男の子を、包み込もうとしていました。しかしその時、私達の車はX霊園から抜け出して一般道に出ていました。それから無言で私達は数十分全速で走り、車を停められる場所で停まりました。

 そこには6人しかいませんでした。もしかしたらあの変なものに原付の男の子…とみんな言いたそうでしたが、その中のリーダーっぽい男の子が、きっと逃げる時にはぐれただけだと言い出し、その場はなんとなくそうだよねぇとか言いながら解散しました。

 もちろんそれはただの解散するための口実です。誰もがきっとあのうねるものに捕まったとしか思えなかったのですだから。

 そしてその原付の男のとはその日を境に2度と現れませんでした。

 しかしそれがこの話の全てじゃ無いんです。だってどう考えても7人ならば車2台で行くだろうし、原付で来たとしても普通は車に乗り込んで逃げるだろうし…ってか実は私達は、その原付の男の子の名前をあの時いた他の5人に聞いても誰も答えられないのです。つまり私達の中であの原付の男の子は全く知らなかった人だったのです。

 でも、確かにあの時、私達は『仲良し7人』でX霊園に行き肝試ししたんです。。。
 ゲラゲラ笑ったり、昔からの友達のように話したり。。。

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