◎恐話百鬼夜行 第二十八夜

168 2005/08/25

◆『ノックを返したのは?』   投稿者:Y・Iさん 職業:学生 年齢17歳

 私の叔父さんと叔母さんは、遠い海外に住んでいます。なので年に数回しか行けませんがそれでも飛行機に乗れる喜びと叔父さん叔母さんに会える喜びはひとしおです。

 今回の話は飛行機に乗っている時からの話です。ちょっと長くなりますがすみません。

 いつもどおり私達家族は下界の景色が綺麗に見える場所の座席を取って、悠々と空の旅を楽しんでいました。オアフ島は綺麗だし海はコバルトブルーだし。何時見ても飽きる事が、全くありませんでした。

 丁度私の座った席の後ろ一列は空席だったので気にせずリクライニングを倒し、ちょっと休んでいたんです。あ、ちょうど私は真ん中の席で家族の皆は誰も椅子を倒していません。ちょっと転寝っぽくなってウツラウツラしていると耳元で何か聞こえてきます。

 「ノ……したよ。……クし…よ。ノッ……た…。」

 その声はもしかしてその空席の後ろの席の人たちが話している声だろうと思ってました。しかし何時までも何時までも聞こえてきて、だんだんイライラしてきます。どんな人たちが話してるのかと後ろを見た瞬間、私の後ろの席で小さな子供がにたぁ〜っと笑ってました。子供が遊んでいるのか。そうか…。……ん?確か後ろは誰もいないはず。

 もう一度振り返ると子供なんていませんでした。いや、今いるフロアには子供らしき人は見当たりませんでした。もしかしたら気圧の微妙な変化が幻を見せたのかもしれませんが、とても嫌な笑顔だったことだけは今でも忘れられません。

 そして無事叔父さんと叔母さん家に辿り着きました。久しぶりに会う従兄弟。弾ける海!うねる波!もうこれでもかと言うくらい追いかけっこしたり水をかけたり。そうこうしてるうちに遊ぶのにも疲れ私はトイレに立ちました。

 そしてつい、いつもの自分の家の感覚でノックもせず、ドアノブを引きました。すると、ガツン!と大きな音が響きました。そう鍵がかかっていたのです。

 ヤバッと思いつつ遅ばせながら、ノックしました。するとノックが帰ってきました。まぁ鍵がかかっているから当たり前なのですが。が、ちょっとそのノックが強めだったんです。トントン、コンコンというようゴンゴンって感じ。もしかしたら、ノックしなかったことが気に障ったのかもしれません。

 とりあえず、その音を確認してから、「誰が入っているのだろう?」と思い考えました。従兄弟二人はリビングでテレビを見てます。叔父さんは仕事で居ません。叔母さんは静かにキッチンに居ます。

 ……はて?おかし……い?そう今更思ってドアを再度引きました。すると、普通にドアは開きました。恐い話にはよくある話ですが、トイレには誰もいませんでした。勿論ドアにはノックらしき音を発するモノも有りませんし、音は確実にドアからしたので間違いないと、思います。それにきちんと鍵がかかっていた感じもあったし。

 ただ、今思い出すと飛行機の中で急にいなくなった子供が…
 「ノックしたよ。」
 って言っていたのはこのことだったのかもしれないと…。
 でもそう言うことだとノックしたものは飛行機から今までくっついてきたのか………。

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