◎遺品

190 2005/10/12

 人は死んだ時、いったい何を残せるのだろう?ふとそう思う時がある。今まで築いてきた名誉による功績なのか?それとも財力で作った何かの建物やオブジェだろうか?または人命救助による話なのか?とりあえず死なない事には解らない話なのかもしれないけど、だから気になってしまう話なのかもしれない。

 あ、間違っても如月が今死にたいとか、自殺願望があるとか、生命の危機になる様な事を抱えてるとかではありませんよ。まぁ如月なんて死んじゃえばいいのにと思われる可能性は無いとも言い切れないけれど(苦笑)まぁそれはそれ。兎に角、今はそういう話をしたいわけじゃないんです(汗)安心して下さいね。

 さて、どうしてそんな事を思っているのかといえば、それは中学時代に亡くなった先輩の残した遺品をもらったからだと思う。昔、如月が病院に入院していた事はちらほら書いてるので賢明な読者なら知ってる事実だと思う。その病院に24年近く入院していた男の先輩がいたんです。如月は当時中学生。先輩はすでに高校を終えていました。
 その先輩は24年も入院していた為、回りから主(ぬし)と呼ばれながら、絶大な信頼を、得ていた。それは医師からも看護師からも。そして如月からも。
 先輩の発言はいつも重く、リーダーシップは苦手でそういう表立って動く事はないがそれでも先輩をリーダーとして慕う者には、響く話をよくしてしてくれていた。まるでそれは、父親や教師のような存在とでも言える感じだった。まぁ雰囲気もそんな感じなので尚更に。

 そんな先輩が元々持っていた病気の悪化により亡くなってしまった。先輩を慕ってた退院したOBや職員、そして入院していた私達は先輩の亡骸を見詰め涙に暮れた。
 そして先輩が病院を去る時、その先輩の遺族の方から先輩の所有していた300枚程度のCDと青いファイルを如月は受け取った。たぶん退院した人に連絡する連絡係をやっていたからだと思う。所謂、形見分けですね。

 そして今回の本題は、その青いファイル。
 そのファイルは先輩にとってとても大切な物らしく、回りの人間に絶対触れさせなかったので、更に中身に何が入っているのかも、誰も知らない。そんな秘密で厳重に口が閉じた、ファイルを受け取ってしまったからもう大変。遺族の人でさえ何が入っているのか知らないみたいだった。如月はきっとこの中には先輩が生前、大切にしていた何かが沢山入っているだろうと思った。ただ重さはやけに軽かった。

 如月は回りに誰もいなくなったのを確認し、恐る恐るファイルを開けてみた。
 中には以下のような物が入っていた。
         内  容               枚数   状  態
 1 各社の缶コーヒーのデータが載ってる記事      ×5 (雑誌の切り抜き)
 2 TOYOTA車のデータが載ってる記事       ×7 (括弧内同上)
 3 ガス銃のデータが載ってる記事           ×4 (括弧内同上)
 4 財布のデータが載ってる記事            ×12(括弧内同上)
 5 謎の宗教関連のデータが載ってる記事        ×1 (括弧内同上) 
 6 無名のグラビアアイドルのデータが載ってる記事   ×7 (括弧内同上)
 7 デコトラのデータが載ってる記事          ×26(括弧内同上)
 8 腕時計のデータが載ってる記事           ×8 (括弧内同上)
 9 天空戦記シュラトの下敷き             ×1 (ラッピング済み)
10 海外で売ってる宝くじのデータが載ってる記事    ×2 (雑誌の切り抜き)
11 ザッツ・ユーロー・ビートの発売情報が載ってる記事  ×4 (括弧内同上)
12 月間ムーに投稿する怖い話が書かれた未投函の葉書  ×9 (輪ゴム止め)
(ネタではなく事実を記しているとここに誓う:如月)

 以上こんな内容物を抱えたファイルだった。そして不思議だった。どれも人から隠す様な恥ずかしい物なんてないし、機密的な物もなかったし…。いったいその先輩がこれらメモを何から守っていたのかも解らなかった。もちろん馬鹿にしている訳じゃない。内容物の優劣なんて本人にしかその価値が解らない場合もあるし何が人にとって宝なのか知る由も無い。

 如月は泣いた。先輩が生きてる内に収集した物が、亡くなった後には全くもって、価値も思い入れも持てないから。切り抜きを使った、その先の指示(例えば、コーヒーなら全部を飲んで味を比べたいとか、例えばデコトラなら写真を集めて欲しい等など)も記されてなく既に記載されている内容は4年前の物。いったいこの内容から先輩は何がしたかったのか、まったく解らなかった。多少解っているなら、故人の遺志を継いで如月が何かしようと思うけど、でもそう言う意思表示みたいな物は微塵も無かった。

 だから如月はファイルを抱えたまま泣いた。先輩は何がしたかったのか?このファイルはいったい何の為に存在していたのか?そしてどう言う運命を抱えたまま、ファイルが如月の手に来たのか(このファイルと如月に何かの縁があったのか)?先輩はこのファイルを如月が持つ事に対してどう思っているのか?何かしなければならないのか?それとも焼いて欲しいのか?真意も指示も何もそのファイルの中身達からは感じられなかった。

 今となっては本当に、神のみぞ知るという状態なんです。そして如月は思うのです。
 死んだ時、如月なら何が残せるのだろうか?と。受け取る人に有益でありたいと願うし、受け取る人が如月との思い出に包まれるものでありたいと思うし、受け取る人を迷わせないものでありたいとも考えるし…しかし何が本当に残すべきかも解らない。

 多分自分が死ぬというイメージを持てないからだと思う。そう考えると先輩の残したあのファイルの中身達はそれが遺品になると考える前の物であり、もしかしたら遺品と形にする為の準備段階の物なのかもしれない。しかし、そのファイルを見て思う事はやはり、先輩はいったい何を残したかったのだろう?という事でした。

 もし今、如月がどうにかなって何かが残るとしたら部屋中に散らばるCDや漫画やPCや大学ノート8冊に書き溜めた詩やほんの少しの蓄えと、目には見えない思い出達だと思う。詩仙庵はプロパイダーにお金が入らなくなって数ヶ月後には消えてしまう。しかしそれらの遺品を受け取った人は如月の人生ってどんなものだったのか解らないと思うんだよね。

 だからこそ思う。急な死によって何かが残る時は、きちんと今如月が生きていたという、証しになる物を一つくらいは、持っていてもいいんじゃないかと。勿論それは受け取る側にとって有益で尚且つ思い出に浸れる物を。

 ちょっとセンチになってしまいましたね。やはり秋という季節がそうさせているのかもと思ってしまう如月は少し弱い人間なのかもしれない。ただ死という絶対に逃れらられない、生命を持った時からの運命に向って、何かしたいなぁと最近よく思うんだよ。あ!!決して間違っても今死にたいとか、自殺願望があるとか、生命の危機になる様な事を抱えてるとかではありませんよ。まぁ如月なんて死んじゃえばいいのにと思われる可能性は無いとも言い切れないけれど(苦笑)まぁそれはそれ。決してこの段落がコピペなんて知ってても内緒(笑)

 さて、とりあえず何か残すとしても、何か残っていてはいけないものを処分する事から、始めないといけないな。だってかっこ悪いじゃない?遺品整理の時、あーんな物やこーんな物が出てきちゃったらさ(苦笑)んじゃまぁ手始めにベットの下の「何かよろしくない物」を処分する事から始めようか。まずはそこから動き出そう(苦笑)

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