◎在りし日のため息 5万HITお題雑文

192 2005/10/30



 ◆maro_1202様よりお題提供
 :題  名「在りし日のため息

 :書き出し「
嗚呼…
 :途  中「
色を5色使う(使い方自由)」「固有名詞を15個使う
      「
笑える、もしくは感嘆できる洒落を入れる(駄洒落はダメ)
 :締  め「
さらば青春の日々!!
 :方 向 性「秋の雰囲気を盛り込むこと」


 嗚呼…俺は酒をいくら飲んでも酔えない体質。これは両親から受け継いだ忌むべき体質。俺の両親はかなりの酒豪で、街中の人間と一気飲みを一晩中行っても最後まで平気で起きていられた。そして一気飲みで戦いを挑むものはすべからく急性アル中に陥るのだ。そんな、強すぎる酒豪の体質の俺は周りの人間から幼い頃ずっと苛められていた。

 何故かって?そんなのは決まっているじゃないか。俺の両親に負けた大人はアル中になり家庭は崩壊。その崩壊した家庭には子供がいて、その子供が俺の両親を憎み、あげくの果てには坊主憎けりゃ袈裟まで憎いわけだ。つまり酒豪の息子である俺も憎いんだよ。
 だがしかしこの国の法律はかなり厳しい。25歳までは飲酒は出来ない。どこかの…そう確か
ジャポーネと呼ばれる東にある小さな島国じゃ14歳から酒を飲み、酔ってるらしい。なんとも酔狂な奴らだ。ま、この「25歳まで飲酒は禁止」と言う法律のお陰で俺は、無理やり周りの人間から下手に一気飲みの戦いが申し込まれなくて済んだ訳だ。でも勿論隠れて一人で今まで飲んできた。でもやはり酒は俺にとって水以外の、何者でもないと言うことが解った。酒の席で酒が飲めるのに酒に酔えないなんて情けない…。

 しかし苛められてるとはいえ、とりあえず酒による日常の破壊は今まで無かった。いや、今日まで無かったと言う方が正しいか。明日は俺の誕生日。25歳の誕生日だ。それもあと数分で明日だ。まぁ部屋に勝手に押し入れば住居侵入で相手が逮捕だ。とりあえず明日の朝までは平和だな。しかしうざいんだよ。もう明日の為に何人かが俺の家の周りで張り込んでいるんだ。たぶん俺が明日表に一歩でも外に出たら
白いカローラで拉致って場末の飲み屋に連れて行き連日連夜一気飲みの戦いを挑んでくるんだろう。ま、無理もない。とうに覚悟は出来ている。とりあえず今日はもう寝よう。下らない戦いの為に今は体力を貯めないと。

 最近の夜は冷えるな。庭先に群生している
曼珠沙華が風に吹かれてやや寂しそうだ。

 目覚まし時計は無情にも朝を告げた。朝靄に微かに柿の甘い匂いが混ざってた。そうか、もう秋が深まってきたのだな。しかし収穫の秋だと言うのに奴らは俺に酒を飲ませる事しか頭にないらしい。自分たちの畑をほっぽっといていいのだろうか…。まぁいい。どうせ今日俺は両親の酒豪の体質を受け継いでいるから街中の奴らはまたアル中街道まっしぐらだ。

 俺は身支度を整え、外に出た。目に飛び込んできたのは家のまん前にある山だった。紅葉している。外に出て最初に目に飛び込んできたのが自然現象で良かった。
もみじが綺麗だ。あのと言うか黄色と言うか黄土色と言うか。あのマーブル加減が俺は昔から好きだ。だが次の瞬間、髪の毛を真っ黒に染め上げ全身ルイヴィトンに包まれたオカマ…もとい元地主の男がBNWから降りてきた。ふっ、5年前に俺の両親に一気飲み戦いを申し込んで1時間もしないうちに負けてしまったモーガン1世の息子モーガン2世が俺を捕らえにきたらしい。どうせ勝てっこないのにどうして奴らは俺に戦いを挑むのだろうか。アフリカゾウアリ爪楊枝を持って戦いを挑むようなものなのにな。

 俺は苦笑いしながらモーガン2世に捕まったフリをし一気飲みする場所まで素直に着いて行く事にした。下手に逆らって痛い思いをしたくないからな。
 黙ってしたがってついてくる俺に奴らはきっと、今回が初めての飲酒だから酒に酔うと、勘違いしているかもしれない。まぁただでさえ酒豪の息子だ。そこまで気にする事ではないかもしれないが、一気飲み戦いなんて初めてだからな。多少は緊張するさ。

 モーガン2世の溜まり場に着いた。その店内になぜかバイクの王様
ハーレーがオブジェとして展示してあったり見たこともない世界地図なんかも飾られてた。少し奴らには勿体無い場所だなと思った。中には何人もの屈強な男達がマルボロマイセン、ジャポーネでは生産終了になったJOKERなどの煙草を燻らせていた。いい気なもんだ。数時間後には全ての奴らが、酒に溺れ大地に平伏すと言うのに。まぁいいさ。今だけは勝ち誇った気分でいればいい。楽しい夢見心地の後には必ず地獄が待っていると教えてやる。

 モーガン2世は小さな
ショットグラスを2つ用意し小さなテーブルに置いた。そこが一気飲み戦いの場所らしい。注がれているのは度数90度のウォッカだ。こんな強い物を飲むのならきちんと朝飯食っておけば良かったかなとちょっとだけ思った。しかし不思議と緊張がない。やはり蛙の子は蛙。肝が据わっているのは修羅場を潜り抜けてきた両親の血筋か。

 酒がショットグラスに注がれた。その瞬間店内は一気に静かになった。どうやらこの戦いメインイベント級の扱いらしい。どこからか紛れ込んだのか、こおろぎの鳴く声が店内に、響き渡った。ルールは簡単。始まりの合図を聞いたら、一気飲みをする。グラスが空いたら周りの奴が注ぐ。そして意識が無くなるまで何度も何度も飲む。俺らの町の暗黙のルール。時にこの方法で町長が決められたり納税額が決められたりする由緒正しき決闘だ。この街は昔、血で血を争う戦いがあったそうだ。だがあまりにも死傷者を出し街は壊滅状態にまで、陥ってしまったらしい。それ以来、喧嘩の勝敗も選挙も政治も全てこの「一気飲み戦い」で決められてきたのだ。もう500年続いている。

 ショットグラスをモーガン2世と俺が持つ。こおろぎの声がけたたましくなる。モーガン2世は冷や汗を零していた。俺か?俺は余裕だった。周りの男達の表情や通りで走りぬけるバイクのエンジン音に酔いしれるくらい余裕だ。

 こおろぎの声が止む。その瞬間、二人は一気にショットグラスに注がれた酒を口へ。

 〜〜〜〜2時間後〜〜〜〜

 店の中にいた男達は全て地に沈んだ。モーガンは3杯目で落ちた。代わる代わる男達が、戦いを申し込んできた。俺はそれら全てを余す事なく受け、全ての男達が崩れ落ちる瞬間を見ていた。相変わらず全然酔えない。どうなっているんだ俺の体は。

 一匹のこおろぎがモーガン2世の腹の上で機嫌よく鳴いていやがる。俺はどうやらまた、俺の両親の歩んできた一気飲み伝説の主役になり、アル中患者を作っていく運命を背負ってしまったらしい。

 俺は溜め息を付いた。何故か?両親が酒豪でなければもう少し楽しい少年時代をきっと、送れただろうし、みんなと楽しく過ごせただろうに…。もう後には戻れない。俺の両親が、築き上げたこの一気飲み伝説を俺の代で終らせるために、俺は旅に出る。俺より強い酒豪と出会い、負けを手に入れたい。負ければきっと俺は普通の生活に戻れると信じてる。難儀な旅だが仕方が無い。負けた日こそ、俺は普通の人生が送れるのだ!!!!

 それこそ俺の求める幸せが手に入る唯一の道なのだ!俺が負け知らずなら絶対、酒豪共は俺を見つけ出し戦いを、何度でも挑んでくるからな。それまで楽しかった日々を忘れよう。いつの日かゆっくり出来る日、そしてまだ見ぬ普通の生活を夢見て
さらば青春の日々!!

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