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事件番号 平成19年(行ウ)第196号 損害賠償(住民訴訟)請求事件 原告 須藤甚一郎 被告 目黒区長 準 備 書 面 (1) 平成19年7月13日 東京地方裁判所民事第38部合B2係 御中 東京都目黒区 原告本人 須 藤 甚 一 郎 第1 被告の答弁書(平成19年6月1日付)の第1を否認する。第2・請求の原因に対する認否、第3・事実経過、第4・被告の主張については、第3・事実の経過1交際費の支出手続きのみを認め、その他はすべて否認する。 第2 はじめに 第1回口頭弁論の際、貴裁判所が原告に、被告が引用している最高裁判例に基づいて、新年会の一覧表(答弁書、別紙 目黒区長交際費(平成18年1月〜平成18年2月新年会)内訳)について反論するのであれば、個別、具体的にするようにという旨のご指示をされた。しかし、被告の作成した一覧表には、新年会が会費制であるのか否か、会場が民間施設か公共施設かの区別の記載がなく、個別、具体的に反論することは不可能である。その理由については、あとで詳述する。 そこで、原告は、まず被告の引用する最高裁判例が適用できるのかどうかを検討する。 1 被告は、答弁書第4、1において、下記の4件の最高裁判所の判例を引用して、「普通地方公共団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において、長又はその他の執行機関が各種団体等の主催する会合に列席するとともにその際に祝金を主催者に交付するなどの交際をすることは、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、上記事務に随伴するものとして許容されるべきである」と主張する。被告が引用する4件の最高裁判例はつぎの通りである。 (1)最高裁昭和38年(オ)第49号 同39年7月14日第三小法廷・民集18巻6号1133頁(以下、最判1という) (2)最高裁昭和61年(行ツ)第144号平成元年9月5日第三小法廷判決・裁判集民事157号419頁(以下、最判2という) (3)最高裁判所平成14年(行ヒ)第46号 同15年3月27日第一小法廷判決・裁判集民事209号335頁(以下、最判3という) (4)最高裁判所平成15年(行ヒ)第74号及び同75号 平成18年12月1日 第一小法廷判決・判例時報1960号10頁(以下、最判4という) 最判1ないし最判4が、被告の主張するように本件住民訴訟の青木英二目黒区長(以下、区長という)の新年会費支出に適用できるのか否かを詳述する。 ア 最判1について 最判1は、芦屋市が競輪事業開始10周年を記念して市議会議員全員に対して、記念品料として1人当たり10,000円、合計240、000円を贈呈した事案である。 最判1は、判決理由で地方自治法204条の2を引用し「同法条といえども、地方公共団体が、記念行事等に際し、関係議員に記念品等を贈呈することは、それが社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、禁止するものではない、と解するのが相当である」と判示している。しかし、最判1は当該事案について「前記意義における儀礼の範囲を超えるものと認めるのが相当である」として、判決主文で「被上告人(被告)は、芦屋市に対し金240,000円を支払え」と支払いを命じているのである。 被告は、答弁書において、最判1の判決理由の「それが社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、禁止するものではない、と解するのが相当である」という個所を都合のいいように抜粋し、被告の主張に援用しているのは、的外れというべきである。 その理由は、最判1に事案は、議員に1人当たり10,000円の記念品料であり、本件の区長の新年会費とはまったく異質のものである。しかも、最判1は判決主文で、儀礼の範囲を超えており、支払いを命じているのである。 被告は、答弁書第4、1において「長又はその他の執行機関が各種団体等の主催する会合に列席するとともにその際に祝金を主催者に交付するなどの交際をすることは、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、上記事務に随伴するものとして許容されるべきである」(下線及びゴシック文字は原告による)と主張する。しかし、区長の新年会費の支出は、新年会費額あるいは新年会費相当額を支出したものであって、祝金ではないのである。目黒区(以下、区という)は、ホームページで「区長交際費支出基準」を公開している。(甲1号証、事実証明書3)「区長交際費支出基準」によれば、祝金は「慶祝経費(1)叙勲等の受章祝、就任祝、結婚祝(2)その他の各種祝賀等への慶祝」に該当する。しかし、区長の新年会費は支出基準の「会費経費(1)出版記念会、送別会、新年会の会費(2)その他の各種会合の会費」であって、祝金と新年会費は別個の支出であることは、区が定めた「区長交際費支出基準」によって明らかである。ところが、被告は自ら定めた支出基準の慶祝経費と会費経費を混同して、主張しているのは失当である。 最判1は、先述したように芦屋市が競輪事業開始10周年を記念して、記念品料を支出した事案である。被告は、その判例の趣旨を曲解して、最判1に該当すると主張するのは誤りであるのは明白である。最判1は、とうてい本件の区長の新年会費に適用できるものではない。 イ 最判2について 最判2は、岐阜県海津町長は、海津町と平田町が設立した一部事務組合の管理者を兼務しており、治水事業の要望を伝え意思の疎通を図るため、岐阜県当局者を招き料亭で宴会を開き、合計29万4972円を支出した事案である。 違法な支出であるとして、海津町長の上告は棄却された。 最判2は、判決理由で「普通地方公共団体の長又はその他の執行機関が、当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において、社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは、当該普通地方公共団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、右事務に随伴するものとして、許容されるものというべきであるが、それが公的存在である普通地方公共団体により行われるものであることを思い致すと、対外的折衝等をする際に行われた接遇であっても、それが社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には、右接遇は当該普通地方公共団体の事務に当然伴うものとはいえず、これに要した費用を公金により支出することは許されないものというべきである」(下線は原告による)と判示している。 最判2の趣旨は、最判1と通底している。そのため、被告は最判2を引用しているのであろう。しかし、被告は最判2の事案と区長の新年会費の事案を比較考量することなく、単に判決理由の文言を都合よく解釈して、最判2を援用しているにすぎないのである。 最判2の判決理由の下線部分にあるごとく、社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には、これに要した費用を公金により支出することは許されないものというべきである。被告は、新年会出席の実態を無視して、最判2にいう社会通念上儀礼の範囲であると主張するが、その主張には根拠がない。 原告は訴状で先述したが、一例を挙げれば、区長は平成18年1月8日には、公金を支出して12か所で開催された新年会に出席し、会費総額108,000円を支出したのは、社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものというべきである。 ウ 最判3について 最判3は、滋賀県志賀町が、町の新庁舎竣工式で来賓148人に記念品として、1人当たり5,000円相当の商品券を贈呈し、総額74万円を支出した事案である。最高裁は、社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものとまではいえず、違法ではないと判断した。 最判3は、判決理由で「普通地方公共団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、記念行事等に際して来賓等に記念品等の贈呈を行うことは、それが社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、許容されるというべきである」(最高裁昭和38年(オ)第49号 同39年7月14日第三小法廷・民集18巻6号1133頁)と判示した。 被告は、最判3を引用するが、この事案は竣工式の記念品に係る支出である。最判3も社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、許容されるというべきであるという。が、上記イで述べたように、区長の新年会費支出は、社会通念上儀礼の範囲を逸脱しているというべきである。また、最判3の事案は、最判1と同様に祝金に該当する支出であり、新年会費の支出に、最判3がそのまま適用できるものではないのである。 エ 最判4について 最判4は、武蔵野市長が各種団体の主催する会合(6件)に出席する際に祝金を支出した事案である。6件の支出は、いずれも祝金である。 最判4は、最判1ないし最判3に基づいて、判決理由の判示事項五において「普通地方公共団体も社会的実体を有するものとして活動している以上、当該普通地方公共団体の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において、長又はその他の執行機関が各種団体等の主催する会合に列席するとともにその際に祝金を主催者に交付するなどの交際をすることは、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、上記事務に随伴するものとして許容されるというべきである」(ゴッシク文字は原告による)と判示した。 被告の答弁書第4、1の冒頭における主張は、最判4の上記引用個所の末尾の「許容されるというべきである」を「許容されるべきである」と直したにすぎない。原告は、上記のア最判1についてで、先述したように、被告は祝金を区長の新年会費と混同して、当該最判4を適用できるとしているのは、失当というべきである。最判4は、とうてい本件住民訴訟の区長の新年会費に係る違法な支出に適用できるものではないのである。 第3 被告のその他の主張に対する反論 1 新年会費の実費相当額の根拠がないことについて 被告は、答弁書第4,3において、「区長が支出した各新年会の会費は、原則として、招待状などに会費が記載されている場合はその金額とし、記載のない場合は、主催者に問い合わせるなどして会費の額を確認しているが、なお会費の額がわからない場合は、会場によって分け、民間施設を使っての新年会の場合は10,000円を、公共施設を使っての新年会の場合は、5,000円を実費相当額として支出したのであるから、いずれも、社会通念上妥当な範囲にとどまっている」と主張する。 しかし、被告は民間施設の場合は10,000円、公共施設の場合は5、000円とした根拠を、答弁書、書証を精査してもどこにも示していない。根拠を示さずに、社会通念上妥当な範囲とはいえまい。 また、被告は最判1ないし最判4は、記念品料、祝金の事案についての最高裁判例である。祝金とは、説明するまでもなく、祝意を表わすために贈呈するものであって、実費相当額を支出する新年会費とは、まったく性質が異なる支出である。被告が、実費相当額を支出したと主張することは、すなわち新年会費が祝金ではないことにほかならない。 2 被告は、新年会費が会費制か否か及び会場が民間施設か公共施設かを明らかにしていないことについて 被告は、答弁書の別紙に、区長が出席した132件の新年会の一覧表を掲載している。しかし、この一覧表は、開催日、名称、金額、団体の分類だけであり、肝腎な会費が明示されていたのか否か、また会場が民間施設であったのか、それとも公共施設であったのかについても記述はいっさいないである。こうした記載方法では、金額の根拠がわからないのである。 第1回口頭弁論の際、貴裁判所が原告に、被告が引用している最高裁判例に基づいて、新年会の一覧表について、反論するのであれば個別、具体的にするようにと指示された。しかし、一覧表には上述のように、不明な点があり、個別、具体的に反論するのは無理である。被告が提出している書証も一覧表と同様に新年会の詳細は不明であり、個別、具体的に反論することは無理である。まず先に被告が、支出した新年会費の金額の根拠を示すべきである。 3 飲食を伴う新年会で会費あるいは会費相当額を支払い、飲食代相当額を飲食しないのは違法な公費に支出である 被告は、答弁書第3、2で「用意された飲食をしながら、来賓者を含め、構成員間の懇親が行われた」と主張する。しかし、会費に含まれる飲食代相当額の飲食をせずに、一日に12か所もの新年会を渡り歩くなどいうのは、違法な公費の支出というべきである。 被告は、答弁書第2、1、イ、Aにおいて、「ここで禁止されていることを呼びかけている行為は、対価なく金銭を給付することであって、「顔だけ出してすぐ引き上げる」とは、債務の発生原因となる飲食の用意がないにもかかわらず、会費の名目で金銭を給付し、寄附を行うことであって、単に短時間で引き上げたことを意味するものではない」と主張する。けれど、この被告の主張には何ら根拠も証拠もないのである。乙第1号証の禁止項目を一読すれば明白なように、「顔だけ出してすぐ引き上げる」には、「飲食の用意がないにもかかわらず」の説明はないのである。したがって、飲食の用意があったとしても、「顔だけ出してすぐ引き上げる」ことは、公職選挙法上は違法であると解すべきである。 また被告は、答弁書第3、4において、132回の新年会で「区長の参加時間がどんなに短くても、挨拶の時間が用意されていた。その挨拶の内容は、区の現状の説明をしたうえで、新年を迎え、区の課題の解決、区の事務事業の遂行のためには、新年会の開催団体自体、及び参加する団体の構成員を含め、区民一人一人の協力が不可欠であり、区の事務事業に理解と協力を頂きたい旨の内容であった」と主張する。しかし、何ら証拠のない主張でしかないのである。 合理的に判断して、区長が1日に例えば12か所もの新年会に出席し、ごく短時間の間に、区の現状の説明、区の課題の解決、事務事業の遂行のため、協力を要請する挨拶をすることは不可能である。新年会の一覧表には、吟剣詩舞道連盟、つまり詩吟連盟、ラジオ体操会などの新年会も含まれており、そうした新年会においても、区の現状の説明、区の課題の解決、事務事業の遂行などを要請した挨拶をしたとは、とうてい考えられないことである。 4 区長が、同窓会出席は公務ではないと答弁したことについて 被告は、答弁書第2、1、イ、Cにおいて「上記Bの目黒区稲門会の新年会が区長個人の私的な同窓会としたものではない」と主張するのは、詭弁というべきである。 原告は、平成18年3月の予算特別委員会で、区長の新年会出席に関して質疑したのである。そして、区長が出席した同窓会について質疑をしたのであって、同窓会一般について区長の見解を聞いたわけではない。予算特別委員会議事録(甲第1号証、事実証明書1)の原告と区長の質疑と答弁を素直に読めば、文理上、目黒区稲門会新年会を含む同窓会が、公務ではないと答弁しているのは明らかである。同窓会出席に公務と私的なものがあると主張するのは、詭弁以外のなにものでもないというべきである。 5 区長が会費制の新年会でも、会費の2倍を支払ったことについて 被告は、答弁書第4,3において、「区長が支出した各新年会の会費は、原則として、招待状などに会費が記載されている場合はその金額とし、記載のない場合は、主催者に問い合わせるなどして会費の額を確認しているが、なお会費の額がわからない場合は、会場によって分け、民間施設を使っての新年会の場合は10,000円を、公共施設を使っての新年会の場合は、5,000円を実費相当額として支出したのであるから、いずれも、社会通念上妥当な範囲にとどまっている」(下線は原告による)と主張する。 しかし、被告の主張するように「区長が支出した各新年会の会費は、原則として、招待状などに会費が記載されている場合はその金額とし」の通りに支出したのであろうか。そうではなかったのである。 ここで一例を挙げる。区長の出席した新年会の一覧表(答弁書、別紙)には、 「88 1月26日 不動前町会、目黒不動商店街振興組合新年賀詞交歓会 10、000 2町会・自治会・住区住民会議」の記載がある。 原告が、開示請求して入手した招待状等債権者関係書類に、上記の新年会に関する不動前町会、目黒不動前商店街振興組合による平成17年12月25日付け「新年賀詞交歓会のご案内」(甲第3号証)がある。それによれば、新年会の日時:平成18年1月26日午後7時、場所:(株)海老民本店、会費:5千円」と記載されている。 被告の主張するように「招待状などに会費が記載されている場合はその金額とし」を遵守しているのならば、会費である5千円を支出すればいいのである。ところが、会費の2倍の10,000円を支出しているのである。したがって、被告の主張には虚偽がある。 以上 証拠方法 1 甲第3号証 「新年賀詞交歓会のご案内」 |