平成15年(行ウ)373号 損害賠償(住民訴訟)請求事件

原 告  須藤甚一郎
被 告  目黒区長

準 備 書 面(2)

平成15年12月4日

東京地方裁判所民事2部C係 御中

原告本人 須藤甚一郎

 

被告の準備書面(1)の認否

第1


1頁 「第1 本件売買契約手続きについて」について。

 被告の目黒区長・薬師寺克一(以下、被告と略す)も出席し、平成14年5月13日に開催された目黒区議会運営委員会で、目黒区総務部長(以下、総務部長と略す)が「平成14年度における区有地の売却方法について(案)」を説明したことだけは認めるが、内容に関しては不正確であるので、すべて否認する。

「1 売買方法等(1)契約の方式:公募提案方式」について  契約の方式を説明したことは認めるが、内容に関しては否認する。

(原告の主張)

1.地方自治法で定める売買契約の原則である一般競争入札を採用しなかった理由を、当該議会運営委員会でまったく説明しなかったのは、議事録(甲5号証)で明らかである。被告及び本件関係人の総務部長が、本件土地売買契約が、随意契約の方法により行われることを故意に隠蔽したというべきである。

2.総務部長は、契約の方式が公募提案方式であることだけを説明した。のちに被告らは、地方自治法施行令第167条の2第1項2号を適用した随意契約であると主張するようになったが、売却方法を発表した当該議会運営委員会で、何らその点について説明をしていない。
 議会運営委員会の委員である区議会議員たちが、公募提案方式が随意契約であるという認識がなかったのは、質疑でそのことに触れていないことからも明らかである。(甲5号証)
 目黒区が区有地売却等で公募提案方式を採用したのは初めてであったため、区議たちに予備知識がなかったのは当然である。

3.旧本庁舎・公会堂の売却は、新庁舎の購入、移転費用の財源確保が最大の目的であるにもかかわらず、価額を重視し、住民の利益の増進を図る一般競争入札を採用せず、あえて随意契約にした理由を被告及び総務部長が説明しなかったのは、重大な説明責任を区議会に対して果たさなかったことになる。

4.のちに被告らは、地方自治法施行令第167条の2第1項2号の「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」を適用したとしている。しかし、旧本庁舎・公会堂の売却方法を発表した平成14年5月13日の議会運営委員会では、その点についての説明はいっさいされなかったのは、議事録で確認できる。(甲5号証)
  したがって、売却方法を発表した時点で、被告及び総務部長らは、地方自治法施行令第167条の2第1項2号に関しての正確な認識があったとはいえない。もし正確な認識があれば、随意契約が例外的に認められる地方自治法施行令第167条の2第1項2号を旧本庁舎・公会堂売却に適用することは、違法であることはわかるはずである。

5.被告の随意契約についての認識不足は、本会議及び委員会のつぎに挙げる答弁からも明らかである。
  被告は、すでに仮契約を済ませて本契約締結前の平成15年3月5日の本会議での一般質問に対して、公募提案方式で売却先を決めるのは「本来ですとこれは区長の専権事項として区長が決めるべきものでございます」と答弁した。(甲6号証の98頁傍線個所)
 この答弁から被告は公募提案方式、すなわち随意契約ならば、売却価格を無視しても区長の専権事項として、独断で売却先を決められると、誤って思い込んでいるのがわかる。地方自治法上、地方公共団体の長にそのような専権を与えている条文はない。

6.さらに当該区有地の売却に関する議案を審議した平成15年3月7日の企画総務委員会で、被告は「今回の公募提案方式はこれまでの例から見ましても、他の自治体で実際に行われておりますので、何ら問題はないというふうに考えております」、「公募提案方式によっては、私は例がありますので何ら問題はないと、そういうふうに理解しております」と答弁した(甲7号証の25〜26頁下線個所)。しかし、これは虚偽の答弁である。
  他の自治体(地方公共団体)で「公募方式」等の類似の名称で、公有地を売却した例はある。が、最高見積価格より39億1000万円も安く、かつ14件の見積中、価格で上位から7番目を売却先に決めた本件土地売却のように極端に価格を無視した事例は皆無である。
 被告が、本件土地売却を議決案件として付託されて、審議した企画総務委員会で虚偽の答弁をしたことは、当該委員会の審議を歪め、当該委員会の態度表明に基づいた本会議の議決そのものに瑕疵があったことになる。
 区議会の議決がなければ、被告と三菱商事は契約を締結できなかったのであるから、価格で上位から7番目の三菱商事への売却を正当化するため、議決案件の審議中に虚偽の答弁をした被告の区長・薬師寺の責任は、極めて重大である。

7.「住環境の調和」等のため、一般競争入札ではなく随意契約にしたと主張するのなら、なぜ旧本庁舎とわずか道路を挟んで2軒目の距離にあった区役所の第4庁舎を一般競争入札で売却したのか。現在、第4庁舎跡地にマンション建設が進行中で、近隣住民が住環境を破壊するとして、いわゆるマンション紛争が起きて、区が斡旋して業者と住民の会議が開かれた。
 周辺地域の住環境の調和を図るならば、どうして第4庁舎も随意契約にしなかったのか。(甲2号証、事実証明書3)。まったく一貫性がなく、旧本庁舎・公会堂を「住環境の調和」のために公募提案方式の随意契約にしたという被告の主張は成立しない。

8.議会運営委員会に区有地の売却方法を説明した平成14年5月13日の時点では、旧本庁舎・公会堂等の主な区有地をすべて売却し、総額120億円の財源を確保し、他の目的で積み立てた基金を60億円取り崩し、総額180億円を新庁舎の購入資金にあてる計画だけが発表されていた。
 まだ庁舎移転に関する正確な財政計画はなく、財政計画が発表されたのは平成14年9月28日である。正確な財政計画もなく、区の財政難のときに、財源確保のための区有地売却であるにもかかわらず、地方自治法の契約の原則である価格の有利性を図る一般競争入札によらず、違法な随意契約を採用したものである。
 主な区有地を売却し、総額120億円の財源を確保する試算は、新庁舎用に旧千代田生命本社を購入するとき仲介した三井不動産に依頼して行ってもらった。そのことを平成15年11月5日の企画総務委員会で、原告の質疑に対して助役・佐々木英和が認めていた。被告は執行機関の長として、区有地をどれだけ売却すれば総額120億円になるかの試算さえできなかったのである。

 

第2

2頁 「3 土地利用計画提案上の留意点」について

 当該議会運営委員会で、留意点@〜Cについて説明したことは認めるが、内容に関しては否認する。

(原告の主張)

1.留意点@〜Cまでは、いずれも具体性に欠ける。周辺地域の居住環境に配慮し、調和のとれた街並み形成を図るためならば、なぜ建物の高さ、階高などを数値で示し、留意点にしなかったのか。
 売却先に決めた三菱商事の提案は、旧本庁舎跡地に13階、公会堂跡地に12階の集合住宅である。旧本庁舎は5階建て、公会堂は2階余の高さであった。したがって、三菱商事の提案は、周辺地域の居住環境に配慮した、調和のとれた街並み形成を図るものとはいえない。

2.留意点Aに「地域の活性化や安全性の確保など住民に貢献できるよう配慮すること」とあるが、留意点としてはこれも具体性に欠ける。
 公会堂敷地内の建物は、地域住民の集会、会合や地域活動に使用されてきた。それがなくなり、さらに社会教育館も売却の対象になったために、地域住民から公共スペースを旧本庁舎・公会堂跡に確保して欲しいという要望があった。留意点としては、具体的に何u以上の公共スペースあるいは公共施設を設けること、とするべきであった。
 提案審査にあたっては、公共スペースの広さが重視された。審査委員会は三菱商事のヒアリング(聞き取り調査)の際に交渉事を行い、提案では605uであった公共スペースを1300uに拡大することを高く評価した。
 留意点で何u以上の公共スペースを設けることとしていれば、見積価格で三菱商事よりも上位であった6提案も、同様の公共スペースを設け、しかも三菱商事の72億円より高く売却できたはずである。安全性の確保についても、防火設備などを具体的に留意点にするべきであった。

3.留意点Bでは「緑化について配慮すること」とある。しかし、提案審査にあたっては、公会堂敷地内の桜の木と旧本庁舎敷地内のレバノン杉の保存が重視された。とくに桜の木の保存については、審査委員会で高く評価された。それならば、「緑化に配慮すること」と抽象的であいまいな留意点ではなく、なぜ桜の木の保存を義務づけることを留意点にしなかったのか。
 桜の咲く季節には、地域住民による桜祭りが開催された。そのために審査委員会が、桜の木の保存を重視したのなら、なおさら具体的に桜の木の保存を留意点にすることが必要であった。桜の木の保存をことさら審査委員会で重視したのは、三菱商事の提案を採用するためのとってつけた理由に過ぎないと思われる。

4.一般競争入札ではなく、随意契約なのだから、もっと詳細で具体的な留意点を設定して、住民の利益を図る提案を公募するべきであった。が、被告及び本件関係人らは、それを怠った。
 また、具体的な留意点を設定することで、提案内容はある範囲内に限定されてくる。そうすれば、たとえ違法な随意契約であれ、審査の透明性、公平性が確保されて、見積価格で上位から7番目の三菱商事と契約するという被告の裁量権の逸脱は未然に防げた。

 

第3

2頁 「選考にあたっての審査項目」について

 「土地利用計画提案上の留意点、応募者の信用・資力・資金計画及び購入希望金額を審査項目にする」を説明したことは認めるが、内容に関しては否認する。

(原告の主張)

1.実際に審査にあたったときの「土地利用計画提案評価書」の審査項目を見ればわかる通り(甲8号証)、留意点にない細目を設けている。「小項目」に「公害等」とあり、「細目」に「導入施設の公益性」「風害・電波障害・交通処理・日影等」とあるのがそれである。審査項目の「小項目」「細目」として審査するのであれば、留意点にすべきであるのに、それをしなかった。
  購入希望金額を審査項目にしながら、最高見積価格の111億1000万円の提案を落選させ、14提案を半数の7提案に絞り込んだ審査委員会の第1次審査では、購入希望金額を審査項目にしなかった。
 当該区有地の売却は、差し迫った財源確保、財源づくりのための売却であるのだから、売却先選定にあたっては、審査項目で購入希望金額が最重要であることはいうまでもない。然るに、最高購入希望金額である111億1000万円を提示した提案を、価格を斟酌することなく落選させた。この一事をもってしても、審査委員会の審査内容がいかに不自然、不合理に行われたかがわかる。

2.購入希望金額は、第2次審査に残った7提案のみに、売却予定価格を超過した1億円につき0.1点の割合で事務的に加点されただけである。こうした審査方法では、購入希望金額を審査項目にするとしながら、適正に審査の対象にされなかったというべきである。
  さらに、なぜ1億円につき0.1点なのかについて根拠を示した説明はいっさいなされていない。仮に1億円につき1点、2点と加点の割合を変えると、提案の順位付けの順位が入れ代わる。審査委員会は、そうした試算をしようとせずに、順位付けをした。
 各審査委員が審査結果を記入した「土地利用計画提案評価書」(甲8号証)を見ればわかるように、「価格評価」は小項目別の評価点を記入した「小計」の下段にあり、「事務局が処理」となっている。提案内容と購入希望金額を総合的に判断して審査するべきであるのに、それをしなかった不当な審査であった。

3.「土地利用計画提案評価書」に1人の審査委員が記入した場合、小項目別の評価点の最高点は、5点×5項目=25点である。価格評価で、予定価格を1億円超過するごとに0.1点を加点するとしているのだから、25点はじつに250億円に相当するわけである。また「総合的評価」の最高点は、10点満点であり、100億円に相当する。
 さらに当該評価書に採点方法として、「※採点ランク 1非常に劣る 2劣る 3普通 4優れている 5非常に優れている」とある。たとえば、ある審査委員が小項目の各細目すべてが「非常に劣る」と判断して1点と採点し、1つの小項目別平均点が1点になったとする。その場合であっても、1点は予定価格を10億円超えている価格評価に相当するわけである。
 跡地利用の提案内容のすべてにわたり審査委員が「非常に劣る」と判断した場合でも、5つの小項目別平均採点の合計は5点になり、予定価格を超過した50億円に相当する。提案内容がすべて「非常に劣る」のであれば、価格に換算すれば、ゼロ円か、あるいはマイナスに評価するのが合理的な評価基準であるのは、いうまでもない。評価基準に重大な瑕疵があり、審査結果は無効である。
  区の財政難のとき、財源づくりの区有地売却であるのに、かくのごとく購入希望金額をまったく無視した審査方法で1位に選ばれた三菱商事の提案は、優れているとはいえない。

4.最高購入希望金額111億1000万円と売却先である三菱商事の購入希望金額の差は、じつに39億1000万円である。それなのに提案内容の差が、価格差の39億1000万円に匹敵するものかどうかの、比較考量を審査委員会はしなかった。財源確保の売却なのに、財政的見地からの検討を怠った驚くべき審査であった。
  驚くべきことは、他にもある。購入希望金額を審査項目にするとしているのに、審査委員会の委員長であった東京工業大学名誉教授・谷口汎邦が、目黒区監査委員の関係人調査に対して、購入希望金額を知らされたのは、 「非常に、一番、もう、最後の最後です。あのー、評定した、既に評定した結果について、確か、いくら、何億を何点としますという発表があって、それについて議論がありました」と証言している。
 また、審査の最初の時点では、各委員も委員長も購入希望金額を知らされてはいなかったのか、という監査委員の質問に審査委員長・谷口は「知りません。私も全く知りません」と証言している。(甲9号証の65〜66頁下線個所)
  購入希望金額を審査項目にしていながら、各審査委員にも審査委員長にも、最初に知らせなかった。提案内容を審査して、順位付けしたあとに購入希望金額を知らせたのでは、審査が公平、公正に行われたとはいえない。審査結果は無効である。

 

第4

2頁 「5 売却予定価格に」ついて

売却予定価格を設定するが、公表しない、ということを説明したことは認めるが、内容に関しては否認する。

(原告の主張)

1.原告は、目黒区財産価格審議会が当該区有地の売却予定価格を諮問した平成14年4月25日の会議録を、原告は区の契約課から入手した。しかし、会議録に添付されている旧本庁舎・公会堂用地の売却予定価格を算出する根拠になった「開発方式試算表」「事業収支計画」「開発法を適用して求めた素地価格」の文書の重要部分が非開示とされて、黒く塗りつぶされている。(甲10号証)
  これでは、売却予定価格が適正であるかどうか、判断できない。被告の主張するように売却予定価格が適正であるならば、非開示にする必要はないはずである。
  けれど、審査の対象になった14件の見積り、すなわち58億1780万円から111億1000万円まですべてが予定売却価格を超過していて、56億4760万円の売却予定価格は、実勢土地価格と差があり過ぎる。売却予定価格の算出基準に重大な誤りがあるのではないかという疑いがある。算出基準を明確にしないで、売却予定価格を超過しているから問題ないという主張は成立しない。
  よって、原告は「開発方式試算表」「事業収支計画」「開発法を適用して求めた素地価格」の原本写しの文書提出命令申し立ての手続きをする。非開示の部分が明らかになった時点で、準備書面を提出して主張する。

 

第5

2頁 下段から7行目に「目黒区においては、この(案)を、議会の関係委員会に報告し、了承された」とあるのを否認する。

(原告の主張)

1.平成14年5月13日の議会運営委員会の議事録(甲1号証)でわかるように、総務部長が議会の関係委員会に単に報告した報告事項であり、賛否を問う議決事項ではないため、議会の関係委員会で了承されたことにはならない。委員会が正式に了承したとされるのは、賛否を問い、賛成多数であった場合に限る。したがって、関係委員会が了承したとはいえない。
  被告は、目黒区職員時代に議会事務局長の経験があり、議会ルールを熟知しているはずである。然るに、委員会への単なる報告事項であったのを委員会で了承されたとする被告の欺瞞の主張は、違法な随意契約を採用した責任の一部を議会に責任転嫁するものである。

 

第6

3頁 2行目から最終行まで。

  目黒区本庁舎跡地等土地利用計画審査委員会を設置し、学識経験者3人並びに目黒区助役ら行政側9人が構成員になったこと、平成14年9月24日から12月13日まで合計6回の審査委員会を開催したこと、平成15年1月14日開催の政策会議で三菱商事の提案を採用することを決定したこと、同年2月17日に三菱商事と仮契約を行い、3月14日の議会の議決を経て、3月24日に正式な契約を締結したこと、は認める。しかし、被告の主張の趣旨は否認する。

(原告の主張)

1.審査委員12人のうち区民及び地域住民は、1人も構成員になっていない。審査委員12人中、9人が行政側委員であるという極めて偏向した構成で審査が行われた。助役ら行政側委員9人は、区長である被告の指揮下にある幹部職員である。審査の公正さが保証されず、行政側の意向が強く反映した審査委員会であった。

2.3頁11行目から13行目に「その後なされた応募案の住民への閲覧、住民説明会を行い、応募案に対する意見書の提出をまって、住民意向を把握し」とあるが、住民説明会では各提案の内容を説明したに過ぎない。審査の過程で住民の意向を反映させる審査は行われていない。
 審査表には、住民の意向を記入する欄はない。各委員が各自の判断で審査表に採点を記入しただけであり、住民の意向を積極的に吸い上げる作業は行われなかった。
  地域住民の桜祭りを今後もできるように桜の木と公共スペースを残して欲しいという要望に対し、区側は桜の木の保存問題だけにすり替えた。住民説明会で桜の木の保存について、区側は「買主の判断だ。区が残せとはいえない」と発言した。住民の意向をすり替えたのみならず、ヒアリング(聞き取り調査)のときなど審査の過程で、住民の意向を跡地利用計画の提案者に伝えようともしなかったのだ。
  一般競争入札と違い、随意契約であるのだから、契約締結まで跡地利用の提案者に提案内容を住民の有利なように変更させ、住民の利益の増進を図ることをするべきであったが、それをしなかった。

3.3頁16〜18行目に「本件委員会が本件土地の売却を随意契約の方法によることの適否を検討するためのものではないことは、その設置目的(要綱1条)から明らかである」とある。本件委員会、すなわち審査委員会が、随意契約によることの適否を検討するためのものではないとしても、区財政難の財源確保の区有地売却にあたり、財政的見地からの検討を行わずに審査したのは、とうてい適正な審査といえるものではない。
  随意契約であっても、新庁舎の購入、移転費用捻出のための売却なのだから、審査委員会は土地利用計画の提案内容と購入希望金額とを比較検討し、住民の利益の増進を図るため、購入希望金額を絶えず念頭に入れて審査するべきであったのを怠った。その結果、購入希望金額72億円の三菱商事を1位に順位付けし、最高購入希望金額111億1000万円との差額である39億1000万円の損害を目黒区に与える原因をつくった。

4.3頁下段から4行目。「同年(平成14年)2月17日に三菱商事株式会社との間で本件土地を目的物とする売買の仮契約を行い」とある。原告は、同年2月17日午後に契約差し止め及び審査のやり直しを求める住民監査請求を起こすことを、事前に原告のホームページで予告していた。
  この日に仮契約を行ったのは、住民監査請求を起こされる前に契約に向けての既成事実をつくっておくという非常に作為的なものである。本件契約は、議会の議決案件であるにもかかわらず、審議する区議会の3月定例会の開催前に仮契約をした。仮契約の条項に議会の議決を得られなければ解約するとあるものの、議会の審議も議決もないのに、仮契約をしたのは適正な行政行為とはいえない。

5.3頁下段から3行目。「3月14日の議会における議決を経たうえで、同月24日に正式な契約を締結した」とある。しかし、違法な契約は、たとえ議会の議決を経たとしても、適法な契約にならないのは最高裁判所判例(昭和37年3月7日大法廷判決)で「議会の議決があったからというて、法令上違法な支出が適法な支出となる理由はない」と判示していることからも明らかである。(甲11号証の傍線個所)。
 当該土地売却契約は、支出が発生する契約ではなく、収入が発生する契約であるが、最高裁判例の趣旨は同じである。よって、議会の議決を経たうえで、正式な契約を締結しても、違法であることには何ら変わりはないのである。

 

第7

  4頁。「第2 本件売買契約の相手方の選考経過について」は、被告の主張は全体として不正確であるので、すべて否認し、追って準備書面にて別に主張する。

 

第8

 5頁。「本件提案と整理番号12の提案との比較について」は、被告の主張は全体として不正確であるので、すべて否認し、追って準備書面にて別に主張する。

 

第9

  8頁。「本件における随意契約の適法性について」は、判例引用に誤りがあるなど全体として不正確であるので、すべて否認する。

(原告の主張)

1.被告は随意契約について、地方自治法施行令第167条の2第1項2号「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」は随意契約の方法によることができるとして、最高裁判例(昭和62年3月20日判決)を引用している。しかし、目黒区の本件土地売却は、新庁舎の購入、移転費用の財源確保が目的であり、「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当せず、違法である。

2.引用している最高裁判例は、長崎県福江市がごみ処理施設の建設にあたり、競争入札とはせず、4社を指名業者とし、そのうち1社と随意契約の方法により契約を締結したものである。4社のうちから最低の見積り額を提出した業者ではなく、3番目に低い見積を提出した業者と随意契約の方法により契約を締結した。
  最高裁判例の引用個所中で「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」(8頁下段から6行目)と判示している。福江市の場合、契約金額と最低見積金額との差額は650万円であった。しかし、目黒区の本件土地売却契約の場合は、14件の見積中、価格で上位から7番目であり、最高見積価格111億1000万円と契約金額72億円の差額は39億1000万円である。まったく条件が異なり、似て非なるものというべきである。とうてい「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果」といえる価格差ではない。したがって、引用している最高裁判例は、本件契約において随意契約を適法とするものではない。

3.また最高裁判例の引用個所中に「契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約毎に、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である」(9頁4行目〜9行目)とある。
  ところが、目黒区の本件契約では最高見積価格と39億1000万円もの差があり、契約担当者である被告は、価格の有利性を図ることを目的として契約方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案していない。
  よって、この最高裁判例は援用できるものではない。

4.最高裁判例は「契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきもの」(9頁9行目)としている。しかしながら本件契約担当者である被告が、そもそも財源確保の区有地売却であるにもかかわらず、14件の見積中、上位から7番目であり、最高見積価格と39億1000円の価格差がある72億円で三菱商事と契約したことは、合理的な裁量判断とはいえず、裁量権を逸脱しているというべきものである。
  したがって、引用している最高裁判例に該当する随意契約ではない。

5.被告は本件土地売却について「その処分は、単なる収入確保のための遊休地の売却ではなく、本庁舎の移転等の財源の確保を図る一方で、目黒区のまちづくりの方向に沿い周辺環境の保全や地域コミュニティの活性化に寄与するとともに、住民の要望にも配慮した有効かつ適切な土地利用がなされるように配慮してなされるべきものであった」(9頁13行目〜18行目)と主張しているが、明らかに誤りである。

  地方公共団体の契約の大原則である一般競争入札を採用せず、随意契約によらなければならないほどの目黒区のまちづくりの方向が、本件契約時までに示されたことはない。
  「目黒区基本計画」(平成13年度〜平成22年度)第1章第3節第2「まちづくりの方向」(甲12号証の15頁〜16頁)によれば、「ともにつくる みどり豊かな 人間のまち」を「まちづくりの方向」として定めただけである。さらに第1章第3節第3「四つの基本目標と三つの基本方針」でも、四つの基本目標を「豊かな人間性をはぐくむ 文化の香り高いまち」「ふれあいと活力のあるまち」「ともに支え合い 健やかに安心して暮らせる街」「環境に配慮した 安全で快適なまち」と定めているに過ぎない。
 あくまで本件土地売却の最大の目的は、新庁舎の購入、移転のための財源確保であるのは明らかであり、「まちづくりの方向」に沿うという理由をもって、価格を大幅に犠牲にした随意契約を正当化できるものではない。「まちづくりの方向」と「四つの基本目標」で掲げていることは、極めて抽象的、概念的であり、一般競争入札を排除して、例外として許されている随意契約を採用した理由にはならない。「まちづくりの方向」に沿うために随意契約を採用したと主張するならば、主な区有地売却にあたり、なぜ旧本庁舎等の一部の区有地だけを随意契約にし、他は一般競争入札にしたのか。すべて随意契約にするべきである。被告の主張には一貫性がなく、しかも大いに矛盾している。したがって、まちづくりの方向性を理由にして、随意契約にしたという主張は認めることができない。

 旧本庁舎が5階建てであった跡地に、13階建ての集合住宅を建設する三菱商事の提案を採用したのが、「まちづくりの方向」に沿ったものであるならば、あえて39億1000万円もの得べかりし利益を犠牲にして、随意契約の方法により売却することはなかった。近隣地区には、旧本庁の5階建てより高い建築物はなく、採用された提案の13階建ては、住環境を著しく破壊するものである。

6.「このような本件土地の売買契約の性質及び目的によれば、価格のみを考慮要素とする競争入札ではなく、売却した後の土地利用計画をも考慮することができる随意契約の方法によることが合理的なことになるのである」(9頁下段から4行目〜最終行)とあるが、この主張は誤った判断に基づいたものである。
  平成14年5月9日の政策会議で決定された@〜Cまでの基本的な考え方は、いずれも一般競争入札を採用せず、随意契約の方法によらなければ実現できない考え方ではない。したがって、随意契約の方法を採用した合理的な理由にはならない。

7.「また、本件における契約の相手方の選定に関しては、公募方式がとられ、その審査は合議体で行われ、応募案が住民に閲覧され、住民からの意見書の提出もなされているのであるから、その手続きは適正であり、非難されるべき点は何もない」(9頁最終行〜10頁4行目)とあるが、これを否認する。

  すでに原告が主張してきた通り、公募方式の随意契約は違法であり、審査は合議体で行われたが、偏向した構成であり、審査方法及び内容が「非常に劣る」提案内容であっても、50億円の価格評価に相当するなど極めて不合理な評価基準の設定であった。さらに財政的見地からの検討を行わずに順位付けをし、契約までの手続きは適正ではなく、非難される点ばかりである。

8.「本件土地の売却に際しては、専門家によって構成される財産価格審議会の審議を経たうえで、予定価格が56億4760万円と決定されている」(10頁5行目〜7行目)とある。決定されたのは認めるが、決定の過程については認めることができない。

 

第4

 「5 売却予定価格について」の原告の主張ですでに述べた通り、目黒区財産価格審議会が売却予定価格を算出する根拠になった「開発方式試算表」等の文書の肝心な個所が非開示にされているため、原告は文書提出命令の申し立てをする。したがって、文書の内容がすべて開示された時点で、原告は改めて準備書面を提出し主張する。

9.「収入の確保が目的であっても、地方公共団体が売主である以上、高ければ高いほど良いということにならないのは、委託契約や請負契約におけるいわゆる1円入札の場合と同じであり、適正な価格を超えた提案の優劣を考慮する場合にあっては、そのないようを優先し、その後において価格を考慮することにしても、それをもって不当とすることはできない」(10頁7行目〜13行目)とある被告の主張を否認する。

 被告は本件契約に関連した業務委託契約において、価格のみを重視して契約を締結した。目黒区は、本件土地売却を含む土地売却にあたり、公募提案等のアドバイス、物件調書の作成、物件案内、新聞等への広告掲載手続き等の委託仕様書を作成し、業務委託の見積合わせを行った。(甲13号証)。なお、仕様書中の文言に「入札」とあるのは誤りである。競争入札ではなく見積合わせによる随意契約であるから「見積書」が正しい。
  当該仕様書によれば、見積りさせた委託料は、
  (売却価格―区の売却希望額)×(一定の利率%)
  である。
  4社による見積合わせの結果、UFJ信託銀行不動産営業部が、0%の最低見積価格を提示して契約した。(甲14号証)。委託料に関しては、事実上1円はおろか、0円での契約である。業務内容は仕様書で決められており、内容には差はない。しかも、UFJ信託銀行は、この種の業務委託の経験が浅く、経験を積みたいとして0%の見積をしたと区は議会に説明した。したがって、内容が優れているとはいえない。
  また、区は「目黒区立碑(いしぶみ)小学校校舎改築等工事基本構想・基本設計」を指名競争入札にした。区は予定価格を公表していないが、最高入札価格である1950万円も予定価格の範囲内であるため、予定価格は1950万円以上である。最高入札価格の約20分の1である10万円の入札をした業者と区は平成15年7月17日に契約をした。(甲15号証)
  原告は、10万円で落札した業者である(株)桑波田建築設計の代表取締役に、契約直後に会って話を聞いたところ、採算を度外して目黒区で工事実績をつくるために、あえて10万円の入札をした、と語っていた。
  目黒区は、上記のいずれの場合も、内容の優劣で契約相手を決めたものではなく、価格を優先させて契約した。然るに、本件売却契約にあったては、価格を優先せずに契約しているのである。被告の行政手法と被告の主張に大きな矛盾があり、認められるものではないのは明白である。

10.「本件の場合には、もしも原告の主張するように、価格だけに着目して買収価格111億1000万円の提案を採用したときは、その価格が健全な評価をはるかに上回る(予定価格の1.97倍)という観点だけからも大きな問題を引き起こすことになることは容易に想定されるところである」(10頁14行目〜18行目)とあるのを否認する。

 類似の売却事例として、東京都が平成14年3月に都の青果市場跡地である秋葉原駅前都有地を公募による随意契約で売却したケースがある。売却予定価格は、228億7670万3100円であり、売却価格は405億円であった。(甲16号証)
  売却価格は、売却予定価格の1.77倍であったが、大きな問題を引き起こすことなどまったくなかった。本件土地売却の場合は、ひとえに財源確保のための売却であり、予定価格をはるかに上回っても、何ら問題はない。説明するまでもなく、最近は土地価格の下落が全国的に深刻な問題になっているが、高く売却したとしても問題視されることがない。売却予定価格の1.77倍で売却し、都民の利益の増進になった東京都の売却事例があるように、被告の主張はまったく認められないのである。
  本件土地売却の予定価格が、廉価すぎる設定であったために、最高購入希望金額が予定価格の1・97倍になったと考えられる。被告が主張するように、111億1000万円で売却したら大きな問題を引き起こすとして、72億円で売却したのならば、被告は地方公共団体の長として、背任的行為である。

11.「ちなみに、土地の売却に際して、価格の高騰を抑制するために随意契約の方法によることを認めた最高裁判例(平成6年12月22日判決、判例時報1520号71頁)がある」(10頁下段から3行目から最終行)と述べているが、判決の意味を取り違えている。

  この最高裁判例は、価格の高騰を抑制するために随意契約の方法によることを認めたものでないことは、判決文を一読すれば明らかである。一般競争入札において最高制限価格を設定したのを違法としたものである。最高入札価格が一定金額を超えるおそれがある場合は、随意契約によって行うことができると判示している。(甲17号証の2頁〜3頁傍線個所)
  しかし、随意契約による売却であっても「ただ、その場合においても、普通地方公共団体としては、右の事情につき配慮した上で、当該地方公共団体に最も有利な価格で売却すべき義務を負うのであるから、そのような価格を売却価格として売却しなければならない」と判示しているのである。
  被告は、本件土地売却にあたり、当該最高裁判例の趣旨と逆の随意契約を行ったのである。よって、本件売却契約は違法である。