平成15年(行ウ)373号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
原 告 須藤甚一郎
被 告 目黒区長
準 備 書 面(3)
平成16年1月28日
東京地方裁判所民事2部C係 御中
原告本人 須藤甚一郎
第1
目黒区本庁舎跡地等土地利用計画審査委員会会議録の検討
平成15年12月4日の口頭弁論で裁判所から原告に、本件土地売却について価格による売却か、総合的判断による売却か、を分けて準備書面を提出するように言い渡されたので提出する。被告は、最高購入希望金額111億1000万円より39億1000万円も廉価である72億円の三菱商事の提案を採用し、売却先に決定した理由を平成15年1月15日の目黒区議会議会運営委員会につぎのように報告した。
「区としては、基本的に当該審査結果を尊重することとなるが、提案採用にあたり、周辺地域の環境とよりよい調和のとれた跡地利用などの観点、公益的導入施設の内容、又近隣住民への説明会、提案概要の資料閲覧等において寄せられた意見・要望などを総合的に考慮した結果、当該審査委員会において評価順位1位の提案を、より優れた提案として、下記の通り決定することする」(甲2号証事実証明書2)
原告は、価格による売却であるべきか、あるいは総合的判断であるべきかを主張する前に、被告が審査結果を是認し、売却先に決定した三菱商事の提案が、いかにして審査委員会の審査で第1位に順位付けされたかを説明することにする。
目黒区本庁舎跡地等土地利用計画審査委員会会議録(以下、「会議録」と略す)(甲2号証事実証明書6)を精査し分析すると、12人の審査委員たちは、被告の主張するような総合的配慮、総合的判断を行わずに三菱商事の提案を第1位に順位付けしたのは明白である。
審査委員会の会議録は、原告が情報公開で入手したが、学識経験者委員の氏名と委員長名が黒く塗りつぶされて非開示になっている。また発言者名がなく、どの委員の発言であるのか特定できない。さらに発言について委員と委員長の区別すらなく、著しく不備な会議録というべきである。
当該会議録は、区民らの情報公開の対象になる文書であるため、証拠を残さず責任逃れをするために、作為的にかくのごとき不備な会議録を作成したと思わざるを得ない。原告は、文書提出命令の手続きとして、発言者が特定できる会議録原本あるいは録音テープの提出を求める。審査委員12人の中には、原告が被告に損害賠償を求めるように請求している助役、収入役ら5人の本件関係人らが含まれているのである。
原告は改めて主張しておくが、総合的判断とは、旧本庁舎・公会堂の跡地利用の提案とともに提示された購入希望金額、つまり見積価格を含めて判断することである。そもそも当該土地売却は、新庁舎購入・移転のための財源づくりの売却であり、しかも公募提案方式による売却の応募要領にも価格を審査の対象にすると明記しているのである。審査は、価格無視及び価格軽視の評価基準で行われ、審査過程に重大な瑕疵があった。
審査委員会で、いかに総合的判断とは程遠い審査方法で、三菱商事の提案が1位に順位付けされたかを会議録を検証して、原告は立証していく。
1.第2回審査委員会(平成14年10月8日)会議録21頁下線部分(1)。
「評価基準について」で「評価基準について特に意見等はなく、今回の審査委員会においては事務局案で各委員が持ち帰り、試行審査をする。その結果、評価基準に不都合があれば検討することとする」とある。評価基準、つまり評価書の小項目、細目が不合理、不適切であることは、すでに原告は準備書面(2)第3の原告の主張で立証した通りである。一例を挙げれば、評価基準の細目で極めて劣る評価の1点であっても、価格評価で10億円に相当するという著しく不合理な評価基準に審査委員が一人として意見を述べていないし、反対もしていない。第3回審査委員会で、この事務局案がそのまま採用された。
不備な評価基準に基づいて審査した審査結果は、正当なものではない。
2.第3回審査委員会(平成14年11月8日)
会議録24頁下線部分(1)
「評価基準について」で「現在(案)で特に問題はない。現在(案)で審査しヒアリング対象とする」とある。「土地利用計画提案評価書」(甲8号証)の小項目、細目設定の矛盾点に審査委員たちは気づくことなく、検討もせずに「特に問題はない」として了承した。
区の貴重な財産を処分するにあたって、審査委員ともあろう者が、このような杜撰な方法で評価基準を決定するとは、審査委員にあるまじき行為である。応募要領の留意点にない小項目、細目を設け、なおかつ応募要領で審査項目にするとした価格を極端に軽視した評価基準に基づいた審査は、とうてい総合的判断による審査とはいえない。
3.会議録24頁下線部分(2)(3)
「公会堂の桜や本庁舎のレバノン杉などを残してほしいという意見もあった」「公会堂の桜を保存する会として署名3257名分を添えた意見書が提出されている」とある。しかし、桜やレバノン杉を保存してほしいとの住民の要望が提出されたのは、公募提案の応募要領配布後の平成14年8月9日であった。応募要領の配布は同年6月5日〜20日ですでに終了しており、各公募提案には住民の意向が十分に反映されていない。
審査の過程では桜の保存の有無が重要視された。それならば、原告がこれまで再三主張してきたように、応募要領で桜の保存を留意点して義務づけるべきであった。被告は、環境重視、みどりの保存などを主張しているが、公会堂の桜の保存について住民の意向すら事前に把握していなかったのである。審査項目として応募要領に具体的に記されていないものを重視して審査したのである。また本件土地売却にあたり桜やレバノン杉の保存について住民の要望、意向をまえもって調査し把握していなかったのは、執行機関の長として被告は職務に怠慢であったというべきである。
4.会議録26頁下線部分(4)(5)
「(委員)この順位付けでは価格の評価はするのか。
(事務局)今度の順位付けはヒアリング対象の選定なので、委員の皆さんがここを聞いてみたいという提案を5つ選んでいただいてもよいと思うが」
「(委員)価格はどう評価するのか。
(委員)いまの評価書にも価格評価は入っていると思う。
(委員)価格の高いものが外れる場合には、そこが何故外れたのかという明確な理由が必要になる。」とある。
「今度の順位付けはヒアリング対象の選定」としながら、実際にはこれが価格を入れない評価順位として、一次審査になった。しかし、価格111億1000万円の提案がヒアリングの対象にされたのは、価格が突出して高額なため、提案内容が実現可能かどうかでヒアリング対象になっただけである。
「価格はどう評価するのか」の疑問に対して「いまの評価書にも価格評価は入っていると思う」と答えている委員がいる。審査委員でありながら、価格を審査しないのだから、「価格はどう評価するのか」という疑問がでるのは当然である。価格と提案内容は、不可分の関係にあり総合的に判断するべきものである。ところが、「いまの評価書にも価格評価は入っていると思う」と答えた委員もいたが、実際には審査委員たちは価格を評価せずに一次審査を行った。総合的判断とはいえない。
「高いものが外れる場合には、そこが何故外れたのかという明確な理由が必要になる」と価格評価を重視した意見もでたが、その後、提案内容と価格を斟酌する審査は行われずに順位付けされた。価格を含んだ総合的判断で審査していない。
5.会議録26頁下線部分(6)
ここでも「ヒアリングもして、最後の決め手はとなれば価格で決めたとして当然と思う」や「価格をまったく排除するのではなく提案面と両方から選んではどうか」といった価格を正当に評価しようとする意見もあった。しかし、結論として一次審査は価格を評価せずに行われた。
6.第5回審査委員会(平成14年12月6日)
会議録32頁下線部分(1)
結論としてヒアリングの実施時間は「各提案者には20分の制限時間で質問に答えてもらう」となった。なぜ、このように短時間でやらなければならなかったのか。ヒアリングの対象になった提案の中で、最高購入希望金額は111億1000万円である。この金額は区の一般会計予算の十分の一を超えるものである。
それほど高額な区の財産を売却するにあたって、審査過程で重要なヒアリングを実施するのにわずか20分では、余りにも短時間過ぎて不合理である。各提案をまともにヒアリング、つまり聞き取り調査しようとする真摯な姿勢がまったく感じられない。
7.会議録32頁下線部分(2)
「購入希望金額が予定価格を超過した場合に加点される得点をキメ細かく評価し、10億円について1点としていたのを1億円について0.1点に変更する」とある。しかし、なぜ10億円につき1点であるのかの根拠については、まったく説明されていなかった。それを1億円につき0.1点に変更したところで合理的な根拠がないことには、何ら変わりはない。
原告が準備書面(2)第3で立証したように、価格評価が他の評価項目の配点と較べて極端に軽視されたのである。このような審査は、価格を正当に評価した適正な審査とはいえない。
8.会議録32頁下線部分(3)
「すべてで20分である。事務局の質問については最初の5分程度で答えていただく」とある。
提案者のヒアリング時間である20分から事務局の質問時間の5分を差し引けば、審査委員が質問できる時間はわずかに15分でしかない。提案内容の疑問点を克明にヒアリングするというようりも、ヒアリングを行ったという実績を残すためのものであったといえる。
9.会議録33頁下線部分(4)
「結果的には価格を入れて評価が決まるわけだし、価格の要素も入れて評価するものと思っていたが、その点他の委員はどう考えているのか」と、価格の要素も審査すべきだという意見もあったが、最終的には審査委員は価格を評価することができないことになったのは、会議録にある通りである。審査委員は、提案内容と価格を総合的に判断して審査できない審査システムが決定された。
10.会議録33頁下線部分(5)
極めて重大な発言の記録がある。
「最低の基準である予定価格があってそれを超えたものという形で出てきたものであるならば、価格についての評価はせずに審査してその結果で報告しても良いのではないかと思う」と、売却予定価格を超過していさえすれば、価格評価は必要なしとする発言に対して、他の委員がつぎのごとく極めて重大な発言をしている。
「それも言えるが、一方で提案内容の差が価格面での差を逆転するほどのものかとなるとそれもどうかと思う。高い価格を付けている提案をやめてもどうしてもこちらの提案にするというほどのものがあるかというとそれも難しい」
最高購入希望金額である111億1000万円の価格評価を提案内容で逆転する提案はないとする委員の発言である。
しかし、価格を評価せずに、一次審査で14提案を7提案にしぼったために、111億1000万円の提案は落選してしまった。一次審査で、価格を正当に審査対象にする適正な審査が行われ、最終審査においても1億円につき0.1点という不合理な価格評価基準を採用しなければ、最高購入希望金額を提示した提案が1位に順位付けされた可能性は十分にある。それをしなかったのは、非常に作為的であり、三菱商事の提案を1位に順位付けするための評価基準であった疑いが濃厚であるというべきである。
11.会議録34頁下線部分(6)
「この審査には価格評価はないのか」とする委員の発言に対して、事務局が「今の審査委員皆さんの結論からすれば今回は価格評価はないということになる。評価書の記入は価格と信用度評価は記入不要ということでお願いしたい」と結論づけている。しかし、会議録を精読すればわかるように、最後になっても「この審査には価格評価はないのか」の発言がでたように、委員会の審議内容は価格評価なしの合意には至っていない。
事務局が強引に価格評価はないという結論に誘導したのがわかる。
「ヒアリング内容」に関しては、審査委員会の順位付けで1位になった三菱商事の提案(整理番号7)と111億1000万円の提案(整理番号12)についてのみ検証する。
12.三菱商事の提案(整理番号7)のヒアリングについて
会議録38頁下線部分(1)
「各提案に共通する事項(事前に質問事項として通知済み)」として(1)〜(5)までを列挙している。けれど、公募提案は平成14年8月30日に締め切られており、共通質問事項を事前に通知しているとはいえ、12月6日のヒアリングの事前に通知したものである。したがって、共通質問事項は各提案内容に十分反映されていないのは、いうまでもない。
「公募提案方式による区有地売却の応募要領」(乙第1号証)の4頁にある応募上の留意点(1)〜(3)は、極めて抽象的である。
例えば、留意点には「当該地域の居住環境に配慮した、調和のとれた街並み形成を図ること」「地域の活性化や安全性の確保など住民に貢献できるように配慮すること」などとある。審査委員会は、共通質問事項を審査で重視するならば、応募要領で共通質問事項にある日影、風、電波障害、既存樹木(公会堂の桜)の扱い、コミュニティ施設等を留意点にするべきであった。
三菱商事の提案と整理番号12の共通質問事項の内容については、被告の準備書面(1)、第3「本件提案と整理番号12の提案との比較について」の原告の主張で詳述する。
13.会議録39頁下線部分(2)
ヒアリングで地域貢献施設、つまりコミュニティ施設について現状の650u位を2倍の1300uにすることになった。ちなみに提案書では605uと記載されている。1300uに拡大したヒアリングでの交渉過程が、不明瞭で事前に打ち合わせをしたと推察できる。
その理由は、委員が「そうすると最大でどの位のスペースとなるのか」と質問すると、提案者の三菱商事は即座に「倍の1300u程度は可能と考えている」と回答した。さらに委員が「もっと端的に言うと区に還元するという風に考えてよろしいのか。例えば、これを区が公共施設として使いたいというふうに要望したとすれば」と質問すると、提案者は、
「我々の企業としての収支の中ではこの施設は目黒区に無償で譲渡をするという前提で収支を組み上げている。コミュニティ施設を例えば商売上売る、マンションとして売却するものに持っていけば、当然のことながら価格は上がるが、それよりも無償で区に譲渡して、地域社会との融合ということで、無償で譲渡するというつもりで収支を積み上げている」と回答している。
提案者の三菱商事のこの回答は、矛盾に満ち、しかも企業論理に反したものであり、被告の区側と事前の打ち合わせを疑わせるに十分である。まず、三菱商事は「この施設は目黒区に無償で譲渡をするという前提で収支を組み上げている」というが、最初に提案した605uであれば、土地利用計画書でこの施設について「区からの要請があれば区への譲渡も考えさせて戴きます」とあるので、見積価格を故意に低くし、収支を組み上げたとしても不自然ではない。
それとても、もし区が無償譲渡を要請しなければ、三菱商事は適正見積価格よりも605u相当分を安く見積もったことになる。まして2倍に拡大した1300uも収支に組み上げていたのならば、適正見積価格より著しく下回る見積価格を提示したことになる。価格も審査対象であり、各社が競合する公募提案方式では考えられない企業論理であるというべきである。
しかし、三菱商事と区が事前に、ヒアリングで605uを1300uに拡大して無償譲渡すると打ち合わせをしたとすれば、1300u相当分の価格を収支に組み込んでいるとする回答も説得力がある。
三菱商事が1300uを収支に組み込んでいるとするならば、区が無償譲渡を要請しない場合は、見積価格にいくら上乗せできるかを質問するべきであるのに、その質問をしていない。
以上の数々の矛盾点から合理的に推察できるのは、ヒアリングで605uを1300uに拡大し、無償譲渡をさせて、そのことを審査で重要視するという事前の打ち合わせが密かに行われていたということである。
14.会議録39頁下線部分(3)
「(模型を見せながら説明)」とある。会議録にあえてこのような記録を残したのは、模型作成を評価したからであろう。各提案者に模型作成を義務付けていれば、審査もしやすく、公平であった。模型があろうと、なかろうと審査は厳密にされなければならない。そのために建築が専門の学識審査委員が加わっていたのである。
15.会議録40頁下線部分(4)
近隣住民から、仮に階数の要望があったときの対応を委員から質問されて、三菱商事は「その場合でも企業努力のなかで吸収していこうという結論を持っている」と回答した。提案の本庁舎跡地に13階、公会堂跡地に12階の提案の変更も企業努力で吸収すると答えているのだ。見積価格の72億円を変更せずに、建物の階数を低くしても構わないということである。常識的な企業論理としては、とうてい考えられないことである。つまり、三菱商事は1300uの無償譲渡だけではなく、階数変更相当分をも見積価格で安くしていたということである。
階数変更も企業努力で吸収するというのだから、近隣住民の要望を待つまでもなく、周辺地域の住環境との調和のために随意契約にして、そのための審査委員会なのであるから、ヒアリングで三菱商事に階数を低くすることを認めさせるべきであった。それが即ち、近隣住民の利益である。審査委員会は、住民の利益を考えなかったというべきである。
階数の変更をせずに、三菱商事の提案が1位に順位付けされた。本件土地売買契約も提案書の内容に基づいて行われたため、契約後に近隣住民が階数の変更を要望したとしても、無理なのは当然である。審査委員会は、見積価格が不当に安いのを知りながら、それを変更させずに1位に順位付けしたのである。総合的な判断をしていないのは自明である。
16.会議録40頁下線部分(5)
この発言は商談話術、セールス・トークに過ぎないかも知れぬが、自社で現在売り出し中の物件を「面白くない」と悪しざまにいうとは非常識である。「商社だとだいたい数字ばかりを追いかけていると思われがちだが、今回は数字よりも環境とか、あるいは地域とのコミュニケーションというものを重視した」というが、三菱商事が目黒区にそこまで肩入れする理由はないはずである。
「今回は数字より」というが、最高見積価格より39億1000万円も過小に見積り、とても「今回は数字より」と聞き流すことができない価格差である。提案内容は、この価格差を補填できるものではないのは、先に紹介した審査委員の発言にある通りである。
けれど、ヒアリングで審査委員たちは、このセールス・トークを黙って聞いていたのは、同意したというべきで、厳正な審査をしていない。
17.111億1000万円の提案(整理番号12)のヒアリングについて
三菱商事の提案(整理番号7)同様に、共通質問事項の回答に関しては、被告の準備書面(1)の「本件提案と整理番号12の提案との比較について」の原告の主張で詳述する。
18.会議録44頁下線部分(1)
提案者は、コミュニティ施設は約150uであり、無償譲渡も可能であると回答している。三菱商事には、最大でどの位のスペースになるかと質問しているのに、そのことを聞いていない。約150uでは狭すぎて話しにならないということか。しかし、企業努力をして111億1000万円もの見積価格を提示しているのであるから、無償譲渡できるコミュニティ施設のスペースが、見積価格72億円の三菱商事よりも狭くなるのは当然である。審査委員会は価格差とコミュニティ施設の広さを斟酌せずに審査を行ったのは、総合的に判断したといえるものではない。
19.会議録44頁下線部分(2)
「桜の木について、これは近隣住民に限らず区民全体から残してほしいという要望がある」「敢えて住民の意向に反して、それをやった方が良いというお考えなのか」と委員が質問しているのは、適切ではなく不当な質問である。なぜならば、応募要領には近隣住民及び区民全体からの桜を残してほしいという要望は記されていない。また、留意点でも桜保存を義務づけてはいない。
桜の保存を要望する区民の意見書が提出されたのは、先にも指摘したように応募要領配布後であった。審査委員会の会議録によれば、桜保存の要望は審査委員会の委員には伝えられたが、提案者に連絡したとの記載はない。ヒアリングに先立って提案者に連絡した共通質問事項に「既存樹木(公会堂の桜)の扱いについて」とあり、「公会堂に桜を配置する計画の場合は、既存のままなのか新規植栽なのかなどについて」とあるだけで、ここでも区民から桜保存の要望があったことは記載されていない。
したがって提案者が、区民の桜保存の要望について知らないとしても責められるべきではない。区民の桜要望を提案者に知らせないでおいて、ヒアリングで「敢えて住民の意向に反して」と糾弾めいた質問をするのは、区及び委員会の不手際を棚に上げ、提案者を故意に貶める質問以外のなにものでもない。
提案者の回答は「そういうことではない。一応検証して活かせるものは活かしていきたい」。さらにヒアリングの最後に提案者は「姿勢としては、極力保全に勤めていきたい」として、桜保存を否定するものではない。このような偏向した質問をしたのは、桜保存を提案している三菱商事の提案を有利にするための作為によるものというべきである。
20.会議録45頁下線部分(3)
「14階建てということで、もし今後近隣から高さについて要望があった場合には弾力的に対応できるのか。そうした時に採算ベースとしてどんなふうにお考えかということ」との委員の質問に、提案者が「居住性能というものを十分検証したうえで、これはちょっと実施できないだろうと。採算という意味においては残念ながら仮に1戸減れば減った分だけ悪くなるし、その居住性能との関係で実施ベースにおいての検証が必要になることから今の段階では答えづらい」と回答しているのは、適切であり当然である。
72億円であり14件中7番目の見積価格である三菱商事の提案のように、見積価格を極めて低くしたのであれば、建物の階数や戸数を減らしても採算が取れるのは、いうまでもない。が、当該土地を購入するべく企業努力をして、売却予定価格の56億4760万円の1.97倍に相当する111億1000万円の見積価格を提示したのであるから、1戸減れば減った分だけ採算性が悪くなるのは、必然である。
また高さの変更について提案者が即答を避けて、「今の段階では答えづらい」としているのも当然のことである。三菱商事のように無償譲渡するスペースを2倍に拡大したり、建物の高さ変更をわずか20分のヒアリングで即答することこそ、不自然なのである。ヒアリングに出席した一担当者が、採算性を大きく左右する高さ、戸数の変更に即答できないことは、けっして責められるものではない。過小見積価格の72億円の提案と限度まで企業努力をして111億1000万円の見積価格を提示した提案を、高さ、戸数の変更についての回答内容を同一に扱うことは公平ではない。
見積価格に39億1000万円の差があるのだから、回答内容に違いがでてくるのは明らかなのである。しかし、審査委員及び被告は、そういう視点から見ることなく、ヒアリングでの回答を単純に比較して、三菱商事の提案を最も優れたものとしたわけである。総合的な判断力に欠けるヒアリングであり、審査であった。
21.第6回審査委員会(平成14年12月13日)
会議録53頁下線部分(1)
最終回の審査委員会であった。審査委員会は結論として、公1(公募提案方式による売却1、旧本庁舎・公会堂の跡地である)は、1位を整理番号7(三菱商事の72億円の提案)、2位を整理番号13(83億円の提案)、3位を整理番号14(82億2700万円の提案)と順位付けをした。
22.会議録53頁下線部分(2)
最終回の審査委員会であるにもかかわらず、「順位付けをするときには価格評価を含まないものを採用するべきと思うので繰り返しになるが改めて申し上げる」という順位付け方法に対して、他の委員が「今の意見も一応の理解はできるが、応募要領では買受者の決定、審査委員会において応募者の資力・信用・利用計画と購入希望金額などを総合的に審査のうえで決定する。とあり、価格を無視するというのはどうかなと。何らかのかたちで価格を評価する必要があると考えるが」と発言しているのは、極めて重要である。
第5回(平成14年12月6日)の審査委員会の会議録では事務局が「今の審査委員の皆さんの結論からすれば今回は価格評価はないということになる」とまとめて、会議録によれば了承されたことになっている。しかし、最終回の審査委員会においてさえ、価格を無視するのはどうかな、何らかのかたちで価格を評価する必要がある、という意見がでたのは、価格無視の評価方法,順位付けについて委員会の合意ができていなかった何よりの証拠である。最後まで価格を無視する評価方法に反対した審査委員がいたわけである。
価格無視に反対する意見に対して「10数件の提案があった中からはじめから価格を反映させた評価順位を付けると、価格を含まない評価で下位であっても上位に出るようなこともあり得る」「まず価格を無視してやりましたよ、今度は価格を反映してこうしましたよとそういう手順だと思う」という意見がでた。
本件土地売却は財源づくりのための売却であるから、はじめから価格と跡地利用の提案内容を総合的に判断して審査をするべきである。そうすることが区の財産を処分するにあたり、区民の利益の増進を図る最良の審査方法であるのは、改めていうまでもない。
総合的に判断するとしながら、価格を含まない順位付けと価格を含む順位付けの二つに分離したのが、そもそも誤りである。価格と提案内容は不可分なのである。
然るに、はじめから価格を反映させて順位付けをすると、価格を含まない評価で下位にあった者が上位になることもあり得る、と避けたのは、特定業者の提案を有利にするためであるという疑惑を抱かせる。
被告は価格を無視していないと主張を繰り返しているが、審査委員会では「まず価格を無視してやりましたよ、今度は価格を反映してこうしましたよとそういう手順だと思う」と、審査委員会の順位付けは「ます価格無視でやりましたよ」と価格無視であったことを明確に認めているのである。そこで問題になるのが、価格を反映したという順位付けの方法である。
23.会議録53頁下線部分(3)
事務局が、価格については10億を1点、1億を0.1点で自動的に事務局が加点すると説明している。しかし、売却予定価格を1億超過するごとに0.1点を加点する合理的な根拠は、これまでに見てきたように審査委員会でまったく説明されていない。価格を不当に過小評価した加点基準に基づいて価格評価をしただけであり、価格を含む順位付けとはいうものの、適正な順位付けではなかったというべきである。
以上、審査委員会の会議録を詳細に検証してきた結果、72億円の三菱商事の提案を1位に順位付けした審査過程は、価格を含む総合的な判断によるものとはいえず重大な瑕疵がある。
第2
目黒区「監査委員協議録」の検討
目黒区「監査委員協議録」(平成15年5月26日)(甲18号証)に基づいて、目黒区助役・佐々木ら本件関係人と審査委員長が、各公募提案の内容をどのように審査したかをつぶさに検証する。「監査委員協議録」(以下、協議録と略す)は、原告が平成15年3月25日に目黒区監査委員に対して行った住民監査請求(目黒区職員措置請求書)(甲2号証)に基づき、監査委員が総数12人の審査委員のうち、行政側9人の審査委員と審査委員長を事情聴取し、その陳述の忠実な記録である。原告の住民監査請求の内容は、本件訴訟の被告である目黒区長・薬師寺克一に39億1000万円の損害賠償を請求したものである。
協議録の中から本件関係人ら5人の審査委員と委員長が、監査委員の事情聴取で審査過程についていかなる陳述をしたかを精査し、三菱商事の提案を1位に順位付けしたのが総合的判断によるものであったのかを検証する。
しかし、原告の旧本庁舎・公会堂売却の随意契約は違法であり、売却先の選定方法は不当であるとの住民監査請求の監査実施中に行われた事情聴取であるため、本件関係人ら及び審査委員長の陳述は、自己に不利なことを避け、後からのつじつま合わせがあるはずである。そのことを念頭においておくべきであろう。協議録の本件関係人らの重要な回答部分については、原告は下線を引いて価格を適正に評価した総合的判断が行われたかを分析する。協議録を通読すると審査委員が、どのような考えで審査をしたかわかる記録である。
本件関係人(1):助役 佐々木英和の回答
1.協議録1〜2頁下線部分(1)
監査委員が提案評価書の検証、予定価格を1億超過するごとに0.1点の加点法、それを0.5点とか1点に変えると違った結果になるが検討したか等を質問した。
それに対して佐々木は、0.1点の加点を0.5点、1点に変更して試算、検討はしていないと答えている。何の根拠もない1億円につき0.1点の加点を合理的に検証することなく実行したことを認めている。極めて杜撰であるというべきである。
佐々木は「そもそも今回の公募提案制度は利用計画の内容審査が、まず、第一義でごさいまして、この価格面の配点を大きくいたしますと一般競争入札と変わらない結果が出るであろうということから、この配点につきましては検証した結果よろしかろうということで実施をいたしました」と回答している。
この回答から、価格面の配点を故意に低く設定したのがわかる。公募提案による売却は随意契約であるが、随意契約においても公共団体の契約の原則である価格の競争原理の精神を継承して、住民の利益の増進を図るべきであるのに、佐々木は随意契約ならば価格を無視して構わないと理解している。一般競争入札と変わらない結果が出るであろう、ということで価格面の配点を低くしたという理由に合理性はない。配点について検証した結果よろしかろう、となったというが、何をどう検証したのか答えていない。
そもそも本件土地売却は、公共団体の売買の原則である一般競争入札による契約をすべきであった。地方自治法施行令で例外的に認めている随意契約の条件には該当せず、違法な随意契約であることは、これまで原告が主張してきた。随意契約による売却を採用したため、一般競争入札と変わらない結果になるからとして、価格評価を不当に低く配点した理由にはならない。最高購入希望金額を提示した111億1000万円の提案は価格審査の対象にすらしなかった不当な審査が行われたのである。
2.協議録2頁下線部分(2)
佐々木は公募提案制を採用して価格面については「勿論財源の確保ですから留意をいたしましたが、これはあくまで想定した予算をオーバーしているものであり、より良好な街づくりという視点からは、区の総合的な行政方針に沿っていくのがよろしかろうという視点で判断いたしました」と回答している。価格は単に売却予定価格を超過しているだけでいい、とする考えである。58億円台から111億円台まであった購入希望金額をまったく考慮していない。
良好な街づくりという区の総合的な行政方針に沿った視点で判断したというが、審査委員会の会議録によれば、審査委員会で区の行政方針に沿った議論は一度もなされていない。また、本件土地売却にあたり、審査内容を左右するような具体的な区の行政方針は策定されていない。佐々木の回答は言葉のあやでしかない。
3.協議録2頁下線部分(3)
監査委員から提案評価書の総合的評価の10点配点について質問された佐々木は「その重きをどの程度にというのは、他の項目が5点でございますけれどこれを10点とした意味では提案制度の趣旨をいかすというところに重きがあったのかなと考えます」と回答している。
しかし、驚くべきことに「提案制度の趣旨をいかすところに重きがあった」とその重要さを強調している佐々木が、審査した14提案のいずれの提案評価書の総合評価欄にも記入していないのである。(甲19号証)
佐々木が総合評価欄に記入しなかったことは、提案制度の趣旨を生かさず、自ら否定して、提案の審査をしたのである。公募提案方式の審査委員にあるまじき行為というべきである。
4.協議録3頁下線部分(4)
監査委員が、応募要領とは異なる審査過程となったと思えると質問したのに対して、佐々木は「まず、資金能力その他につきましては、すべての提案者がこの辺をクリアーしていた、甲乙つけがたいことから・・」と回答している。
応募要領には「応募上の留意点、応募者の信用・資力・資金計画及び購入希望金額を審査項目とする」とある。購入希望金額は、58億1780万円から111億1000万円まであった。最低価格と最高価格は2倍近い差である。それなのに佐々木は「甲乙つけがたいことから」と、応募要領で審査項目にされていた購入希望金額について、まったく無関心であったのがわかる。約53億円も違う購入希望金額を甲乙つけがたいとする認識で審査をしたのである。
さらに、ここでも区が想定した予定価格を超過していればよい、と繰り返している。審査にあたって価格を無視したのがわかる陳述である。財源づくりの区有地売却にあたり、価格を含む総合的判断はしていない。
5.協議録3〜4頁下線部分(5)
監査委員の整理番号12(111億1000万円の提案)のヒアリングに関する質問に佐々木は「採算上の問題から1戸減らす問題があっても非常に困難で難しいという返答をいただいております」と回答している。しかし、原告が審査委員会の会議録の検討19.で述べたように、ヒアリングで提案者は「検証が必要になることから今の段階では答えづらい」と答えているだけであり、佐々木のいうように「非常に困難で難しい」とはいっていない。佐々木は、111億1000万円の提案を排除するために、故意に虚偽の陳述をしたとみるべきである。
建物の階数を減らせという仮定の質問に提案者が即答できないとしても、当然であるのは会議録の検討19.で詳述した通りである。
6.協議録4頁下線部分(6)
佐々木は、整理番号7(三菱商事の提案)の還元施設(コミュニティ施設)が605uから1300uに拡大された理由について「650あるいは605から1300になった経緯ですけれども、これは私の方もその理由、根拠なぜかよくわかりませんが、ただひとつ、住民の皆さんにこういう提案が出されたという説明をいたした際に、これとこれについては一般区民が使える施設があることを実際に近隣の方はお聞きになったのか、これは推測ですが、で中にはあるからいいね、という声もあったことは事実です」とじつにもって回った曖昧な回答をしている。
原告が会議録について13.で述べたように、還元施設が605uから1300uになった理由は、審査委員が「そうすると最大でどの位のスペースとなるのか」と要求し、三菱商事の提案者が「倍の1300u程度は可能です」と答えているのである。佐々木の理由、根拠がわからないという発言は不自然極まりない。
近隣住民の還元施設が中にあるからいいねという声があっても、審査過程でこの住民の声を各提案者に伝えることはしていない。三菱商事が、この住民の声に応えて還元施設を2倍に拡大した根拠に受け取れる佐々木の回答である。であるならば、佐々木あるいは審査委員の誰か、それとも区側の誰かがヒアリングの前に、三菱商事にだけ伝えていたことを疑わせるに十分な佐々木の回答である。
7.協議録7頁下線部分(7)
佐々木は、最高購入希望金額111億1000万円と三菱商事への売却価格72億円の価格差39億1000万円について、111億1000万円の提案は一般競争入札に近い提案であって、具体的な記載がなく、ヒアリングでも具体的に答えられなかったと回答している。佐々木は助役という行政機関で区長につぐ2番目の役職にありながら、財源づくりの売却なのに39億1000万円もの価格の有利性をまるで考慮していなかったのがわかる。
それだけの価格の有利性があるのだから、具体的な記載がなければ審査の途中で提案者に具体的に記載するように要請し、再提出させればいい。随意契約であれば、競争入札と違って契約するまでに交渉することは違法ではない。ヒアリングでも具体的に答えられなかったというのは、会議録を見ればわかるように虚偽の発言である。一次審査で落選し、最高価格であるという理由でヒアリングを受けただけであり、審査委員が具体的に聞きだそうとしていなかったのが、会議録を見ればわかる。
8.協議録7頁下線部分(8)
順位付けで2位になった整理番号13(83億円の提案)と1位の三菱商事(72億円の提案)の価格差の11億円について質問された佐々木は、11億円の価格差というが1300uの施設を区が取得すると「おそらく8億円を超す価格になるかな」と回答している。
13階の集合住宅の陽の当たらない地下1階の1300uが、8億円を超す価格になるとは、いったいどういう試算をしたのか。そんな高額な価格になるはずがない。1uあたり約61万5000円になるが、住居として販売できない地下1階を8億円を超える価格になると陳述したのは、三菱商事を有利にするための詭弁である。
9.協議録7〜8頁下線部分(9)
随意契約か一般競争入札かで最高裁判例を事前に検討したか、の質問に対して、佐々木は「同程度の提案があった場合に価格の高いほうを取得すべきであるというのが、判例の趣旨かなというふうに考えておりまして」と回答している。が、とても検討したといえる理解度ではない。最高裁判例まで検討して随意契約を採用したのであれば、なぜ本件土地売却方法を区議会に報告したときに、随意契約であることを説明しなかったのか。助役として佐々木はその後も、区議会に対して随意契約であることを隠して答弁をつづけた。
被告及び佐々木らが、公募提案方式が単なる随意契約を認めたのは、原告が平成15年2月17日に契約差し止めの住民監査請求を起こした以後のことである。
10.協議録8頁下線部分(10)
区財政が逼迫している状況下で、庁舎移転の財源確保のみならず区財政全体の状況は考えていなかったのか、111億円で売却できれば楽になるのではないか、との監査委員の質問に対して、佐々木は「随意契約による売却をするという決定をして判断をしていったときに、既に、ある程度の価格面の犠牲をしながらもまちづくりのために、寄与をしていくというそういう視点から判断した」と回答している。
これは著しく不自然で見逃すことのできない重大な陳述である。区が本件土地を公募提案方式による随意契約で売却すると区議会に報告したのは、平成14年5月13日であった。同年6月5日〜20日に応募要領を配布した。提案書の受付は同年8月15日〜30日までであった。然るに佐々木は、随意契約による売却を決定し判断をしていったときに、すでにある程度の価格面での犠牲をしながらも、まちづくりのために寄与していくという視点からの判断をした、と陳述しているのである。
随意契約による売却を決定したときには、まだ提案書が提出されていないのである。価格の犠牲がなくても、まちづくりに寄与できる提案が提出されるかも知れないのだ。最高の見積価格が審査委員会で1位に順位付けされ、契約すれば価格の犠牲はない。各提案が提出されてもいないのに、価格の犠牲を考えるのは、そのときすでに三菱商事に売却することを密かに決定していて、たとえ価格が最高でなくても売却先とすると決めていた疑惑を抱かせる陳述である。
佐々木は「ある程度の価格面の犠牲」というが、39億1000万円の価格差は、とうていある程度の価格面の犠牲といえる価格差ではないのは、いうまでもない。また佐々木は「最終的には、区長に対して、報告を出して執行権者たる区長が判断をしてというものでございます」と答えている。しかし、応募要領に順位付けをして契約するとあり、審査委員会で1位に順位付け報告すれば、売却先に決定するのは自明であった。実際に1位に順位付けされた三菱商事と契約した。
最終的には区長が判断するとしているのは、佐々木の責任回避でしかない。佐々木は助役として、三菱商事を売却先に決定した区の行財政の最高方針決定機関である政策会議の構成員として、被告の区長・薬師寺克一及び本件関係人らとともに区に39億1000万円の損害を与えたものである。
本件関係人(2):教育長 大塩晃雄の回答
11.協議録9頁下線部分(1)
大塩は、事務局案の評価書を試しに記入してみたが、特に支障はなしとしたと答えている。価格評価は予定価格を1億超過するごとに0.1点であり、「結果的に見れば価格評価も50億で5点かな、5点刻み、他の小項目と同じ優先順位、同じだと、そんなように考えました」と回答している。50億で5点というのは、予定価格が56億4760万円であり、最高購入希望金額が111億1000万円で、予定価格超過分は52億9220万円であるから、1億=0.1点とすると5.3点になる。そのことを大塩はいっているのである。53億円近くも予定価格を超過しているのに、小項目の5点と同じ価格評価の不当さに気づくことなく、特に支障なしと大塩はしているのである。
12.協議録10頁下線部分(2)
監査委員の応募要領と異なる審査となったと思われるとの質問に大塩は、第一段階で利用計画の優劣で絞り込み、最終的に価格評価をプラスして区長に報告したと回答している。提案内容と価格差を総合的に斟酌することなく審査したのを認めている。区長に報告したというが、大塩もまた最終的に三菱商事を売却先に決定した政策会議の構成員であった。報告しただけではなく売価先決定に加わっていたのである。
13.協議録12頁下線部分(3)
三菱商事の提案は、39億あるいは11億円の価格差に見合った利益があるのかとの質問に対して、大塩は「だから、それは一定金額をクリアーしていればそれはもう何十億、何億円であってもよしとする。利用計画をまず優先すべきだろうと」と回答している。予定売却価格を超過していれば、あとは価格がいくらでも構わないとする暴論である。
地方公共団体の売買にあたって予定価格は一応の目安である。しがって、予定価格を超過しているからといって、利用計画だけを重視して、価格評価を無視していいという論法は成立しないのは、いうまでもないことである。財源づくりの売却であるのに、できるだけ高く売却して住民の利益の増進を図る視点がまったく欠如している陳述であるといえる。
14.協議録12頁下線部分(4)
極めて厳しい区財政全体の状況を考えなかったか、の質問に対して大塩は「やっぱり、120億確保できるということが、大前提だと考えました」と回答している。120億円とは、全体の区有地売却計画の想定額である。算定にあたっては、民間不動産業者に依頼したものであることは、原告の準備書面(2)で明らかにした通りである。
本件土地売却にあたり、価格を含む総合評価で審査しようとせず、不当な審査であるのが露呈している陳述である。
本件関係人(3):企画経営部長 川島輝幸の回答
15.協議録14〜15頁下線部分(1)
整理番号12(111億1000万円)の提案のヒアリングについて質問された川島は、下線部分にあるように提案者が当事者能力があるのかないのか、即答できません、進めてみないとわかりません、と回答が多く、出来るだけ高くうりたいというのはあったが、これは選んでも責任が持てない印象を持ったと回答している。助役・佐々木の回答でも述べたように、階数を変更できるのかといった質問に即答できないのは当然である。採算にかかわる変更だけに、ヒアリングで即答できるはずがない。三菱商事のように即答できるほうが、不自然なのである。整理番号12、つまり111億1000万円の提案を選んでも、責任が持てないという印象を持ったという陳述は、ヒアリング内容を理解していないことによるものである。
なぜならば、整理番号12の提案は価格評価を含まない1次審査で落選しているのでる。ヒアリングを受けたのは、最高価格であり、実現可能であるかどうかを聞くためであり、審査の対象からはすでに外されていた。また、川島は川島自身も他の委員も出来るだけ高く売りたいとした、とも陳述しているが、これは虚偽である。それが委員会の総意であったなら、一次審査で価格を無視した審査をしていないはずである。高く売りたかったが、責任を持てなかったと装う後からのつじつま合わせの陳述であるというべきである。
16.協議録16頁〜17頁下線部分(2)
三菱商事の提案は、整理番号12の提案と価格差が39億円、整理番号13との価格差が11億円、この価格差に見合うものなのかとの質問に対して川島は「プランの差と価格の差を、こう、比較して云々するのは、これは難しい話だと(・・・?)。ですから、NO12と7の差が39億で、それが計画上匹敵するかどうかという議論は適当ではないというふうに思っておりまして」と回答している。プラン、利用計画の差と価格差を比較するのは難しいから、匹敵するかどうかを議論するのは適当ではないとの陳述は、審査委員の役割を放棄したものである。
いくら難しくても価格差に匹敵するかどうかを審査するのが、審査委員会の役割である。公募提案方式による随意契約にし、そのための審査委員会であるのだから、高い価格であって、しかも優れた利用計画がどれなのかを審査するべきである。利用計画の差と価格差を比較検討するのが、審査委員会の最大の役割であるはずなのに、川島にはその基本的な認識すらない。審査委員として不適格であったというべきである。
さらに川島は「39億との評価という話は、結果的に出てきますけれども、あのー、それが公募提案方式を採用したことの是非とは別の話ではないかと思っています」と回答している。この回答は、公募提案方式の随意契約であるならば、価格差はいくらあっても問題ないとする誤謬が根底にあるからだ。区財政が逼迫している中での財源づくりの売却で、公募提案方式を採用したからといって、39億円余の価格差にまったく配慮することなく、審査を行ったのである。
本件関係人(4):総務部長 木村高久
17.協議録44頁下線部分(1)
購入希望金額を審査項目とするとしたのに、一次審査で価格を斟酌せず7提案に絞り、その後、価格評価を加えて順位付けしたのは、応募要領と異なる審査をしたと思われるとの監査委員の質問に対して、木村は「いわゆる予定価格をオーバーする、価格の面で第一の要素というふうに理解しまして」「最初に予定価格を越しているかどうかという部分においての、価格評価をまずしていると考えている」と回答している。
一応の目安でしかない予定価格を超過していさえすれば、購入希望金額がいくらであっても構わないという考えである。58億円台から111億円台まで14件あった個別の購入希望金額をまったく考慮していない。単に予定価格を超過したのをもって、最初に価格評価をしたと木村はいう。しかし、それは審査過程で価格を評価したといはいえない。
18.協議録44頁〜45頁下線部分(2)
随意契約を採用するにあたって判例等を検討したと思うが、という監査委員の質問に対して木村の回答は、下線部分を一読すればわかるように支離滅裂で意味不明ある。区の契約を担当する総務部長とは思えない回答内容である。木村の回答内容は「そうですね。自治法でしたか、根拠の中では明確には書いてありません。その性質とか何とかはですね。したがって、それだけではちょっと判断が困難で、したがいまして、(・・・?)へ行って関連する事例、判例の調査ということがあったわけです。ただ、それに対する最高裁の、ちょっと今手元にないので正確には申し上げられませんが、最高裁の判例がありそのなかで一定の条件のなかでは随意契約は可能だ、というものがあります。それにこれについては該当するというふうに考えました」。
随意契約ができる場合を条文で列挙しているのは、地方自治法施行令であるのはいうまでもない。木村は地方自治法と地方自治法施行令の区別さえ明確に知らない。随意契約を採用するについては、事例、判例を調査したという。が、最高裁の判例で一定の条件のなかで随意契約は可能だ、と誤った回答をしていることでもわかるように、随意契約が可能な基本的な法的根拠すら正確に認識していないのである。それでいながら、「これについては該当する」としている。総務部長であった木村のこうした調査結果の報告を受けて、被告である目黒区長・薬師寺は随意契約を採用したはずであり、随意契約についての正確な認識がなく、違法な随意契約に踏み切ったのがわかる陳述である。
19.協議録47頁下線部分(3)
監査委員が、最高裁の判例に基づき提案内容と価格差について質問すると、木村は「その部分がいくらに該当するかということは、そういう議論をすべきではないのではないかというふうに、私としては取り組んでいました」と回答している。
最高裁判例(昭和62年3月29日)は、随意契約について「契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」「当該地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も本法施行令第167条2項2号に掲げる場合に該当すると解すべきである」と判示している。
したがって、審査委員会において提案内容の差と価格差を大いに議論、検討した上で、多少の価格の有利性を犠牲にしても、公共団体の利益の増進につながるかどうかを判断すべきものなのである。
然るに「そういう議論をすべきではないのではないか」というのは、地方自治法施行令や最高裁判例などを調査、検討し正確に理解していなかったのが明らかな陳述である。
本件関係人(5):収入役 安田直史
20.協議録50頁下線部分(1)
安田は、価格評価で予定価格より50億円を超える場合は、5点で評価したと回答している。また1億につき0.1点の加点の仕方以外に別の加点方法については試算していないと回答している。
安田は収入役の役職にありながら、価格評価の配点が極端に低いことの認識が欠如していたというべきである。価格評価は自動的に事務局が加点するとしていたのに、50億円を超える場合は5点で評価したと証言しているのは、審査経過で3回にわたり評価書の記入を行っており、最終的な評価書では価格評価欄に審査委員は記入していないが、審査委員が価格評価をしていたのがわかる。提案内容の順位付けを価格評価で逆転できないように、1億円=0.1点、50億円以上であっても5点の加点方法を導入したのを推測させるに十分な証言である。
21.協議録51頁下線部分(2)
安田は収入役であるにもかかわらず、区の財政状況全体を考慮せずに単に予定価格を超過していれば問題なしとの回答である。また安田は提案の件数さえ記憶していない。それどころか、売却価格を購入価格といい間違えるなど、審査委員にあるまじき陳述である。
22.協議録51〜52頁下線部分(3)
ヒアリングをした111億1000万円の提案について安田は、助役・佐々木や企画経営部長・川島と異なり、実現可能であったと回答している。
23.協議録52頁下線部分(4)
公共施設のランニングコスト(運営費)について質問された安田は「なかったですね」とランニングコストの認識すらなかったのである
24.協議録53頁下線部分(5)
普段の審査委員会でお互いにかんかんがくがくするような雰囲気はあったのかと質問された安田は「それは、なかったです。かんかんがくがくというのは」と陳述し、また具体的な評価項目や内容に関してはあまり意見がなかったと陳述している。審査委員がお互いに議論せず、徹底した審査を行わなかったのがわかる。
25.協議録53頁下線部分(6)
提案内容の差と価格差の検討については、安田もそういう検討はしていないと回答している。
26.協議録54頁下線部分(7)
最高購入希望金額と39億円も価格差がある72億円で売却したことについて、区の金庫番としての意識を聞かれた安田は「そうですね、あのー、いわゆる財政的に破綻するような金額ではない」と回答している。
金庫番である収入役であるのに、区が財政難で逼迫している状況を判断することなく、財政的に破綻するような金額ではないと無責任に回答しているのは、収入役としての職務をまっとうしていないというべきである。
27.協議録55頁下線部分(8)
収入役として売却価格が72億円でやむを得なかったのかと質問されて、安田は「これは、あの、どっちかと言うと、私、あのー、いわゆる、政策会議のメンバーの一人という形で入っていましたので、特にそういった、そのー、財政がどうの、というのはなかった」と回答しているのは、無責任も甚だしい。政策会議のメンバーとして審査委員会に入っていたので、72億円での売却が財政的に適切であるかどうかを考えなかったというのである。
政策会議は区の行財政の最高方針を決定する会議であり、安田はそのメンバーである。まして安田はいわゆる金庫番の収入役でもあり、他の審査委員よりも積極的に財政的に検討しなければならない立場にある。しかし、安田は財政的に検討する考えすら欠如していたのである。
審査委員長 東京工業大学名誉教授 谷口汎邦の回答
28.協議録60頁下線部分(1)
谷口は、評価書の総合評価項目は自分が提唱したものであり、その重要性を力説している。しかし、12人の審査委員中、総合評価欄に記入していない審査委員が5人もいる。審査を実施する際に総合評価の項目を設けた趣旨が生かされていなかった。谷口は審査委員長として、各審査委員に総合評価の重要性を説明していなかったのではないか。
29.協議録64頁下線部分(2)
谷口は、まちづくりの要素を抽出し評価をしただけであり「一切コストの問題は、全く知らされておりませんでした」と回答している。提案内容と価格差を比較検討して、総合的に判断した審査方法ではなかったのがわかる。
30.協議録64頁下線部分(3)
「こういう評価点、評価表を作るについても、もう少し時間をかけて、より精緻なものを作っておくってことが非常に大事ではなかったかなという思いがございまして」と回答していて、評価点,評価書が不備のまま審査が実施されたのがわかる。学識経験者である審査委員長が反省しているほど不備な評価表を使って審査した結果が、公平、適正なものではないのはいうまでもないことである。
31.協議録65頁下線部分(4)
111億円の提案はヒアリングのときに説得力がなかったと谷口は回答している。しかし、谷口は各提案の購入希望金額について、まったく知らされていなかったという。例えば建物の高さを1階低くしたらどうなるかといった質問に対して、即答できなかったことなどを捉えて説得力がないと判断したのであれば、審査委員長として認識不足である。三菱商事の72億円と111億円余では、見積価格で39億円余の差があるのだから、ヒアリングでの回答に違いがでるのは当然である。同一に論ずるべきではない。
32.協議録65頁下線部分(5)
監査委員のいつの時点で各提案の価格を知らされたのか、という質問に谷口は「非常に、一番、もう、最後の最後です」と回答している。審査委員長にすら各提案の価格を知らせないでおいて、提案内容と価格差を総合的に判断して審査ができるはずがない。審査委員会の審査は単純に提案内容だけで行い、それに何の根拠も合理性もない1億円=0.1点を自動的に加点し、三菱商事の提案を1位に順位付けしたものである。
以上、詳述してきたように、随意契約の法的根拠及び判例を明確に認識せず違法に公募提案方式を採用し、予定価格を超過していることだけをよしとして、審査委員会の審査では提案内容と価格差の比較検討することなく、最高購入希望金額の111億1000万円より39億1000万円も安く72億円で三菱商事に売却したのは明白である。
審査委員会の会議録によれば、価格を重視すべきであると意見を述べていた審査委員がいた。ところが監査委員協議録では、監査委員の事情聴取を受けた10人の審査委員のうち、そのように陳述している審査委員が1人もいないのは不可解である。学識経験者の2人の審査委員が事情聴取を受けていないため、価格を重視するべきであると主張したのがその2人の審査委員であるなら、問題はない。
さもなければ、審査委員の事情聴取に先立って、行政側委員9人と審査委員長の合計10人が打ち合わせをして、口裏合わせをしたことにほかならない。原告が文書提出命令申立をする発言者名が記載されている審査委員会会議録が、入手できた段階で準備書面を提出して、改めて主張する。
第3
本件土地売却の価格による売却について
被告は本件土地売却にあたり、地方自治法施行令で規定する随意契約の条件に該当しないにもかかわらず随意契約を採用し、価格を適正に評価することなく、最高購入希望金額111億1000円より39億1000万円も廉価な72億円で三菱商事に売却した。価格重視による売却について、原告はつぎの通り主張する。
1.そもそも本件土地売却の唯一の目的は、新庁舎購入及び移転費用の財源確保、資金捻出であった。新庁舎購入費用で約174億円、改修費を含めば約240億円になる。新庁舎建設用の積み立て基金は、わずかに3億円余であった。しかも、平成14年度は歳入欠陥になったほど、区の財政状況は悪化し逼迫していたのである。このような区の財政状況をまったく考慮することなく、随意契約で39億1000万円も安く売却したのである。
売却予定価格を超過した58億円台〜111億円台の14提案が審査対象になったが、価格について審査委員12人は単に予定価格を超過したのをよしとして、72億円の提案である三菱商事を1位に順位付けし、被告は三菱商事と契約したのである。財政的見地からの検討はされなかった。その結果、区は39億1000万円もの得べかりし利益を喪失した。
2.本件土地売却は、地方公共団体の売買契約の原則である一般競争入札を採用し、価格の有利性を生かして区及び区民の利益の増進を図るべきであったのに、それをしなかったのである。一般競争入札であっても、跡地利用に住民の要望を反映した条件をつけることが可能であったはずである。
被告は、はじめから周辺地域の住環境との調和などの行政目的のために、一般競争入札ではなく随意契約を採用するつもりであったと主張している。しかし、被告も最初は価格による売却で高く売ることを考えていた証拠がある。
平成13年5月16日に行われた近隣住民説明会(乙第14号証の4)の最後に、被告は「売却についてですが、区役所の土地を売る場合はひとつの会社と一対一で契約することはできない。第三者の不動産鑑定士に意見をきいて最低価格を掲示して入札を行い、一番高い人に買う権利があるということになる。ただし、地域の皆様の意見なども含めて、条件をつけていくことも一つの方法だと思う」と説明した。被告は条件付き一般競争入札で、一番高く売却すると説明しているのである。随意契約でなくても、条件付き一般競争入札であれば被告が理由にしている行政目的が達成できるのである。とすれば、違法な随意契約によらず、価格を一番に重視して売却できたのである。
また平成13年8月30日に行われた第2回近隣住民説明会でも(乙第14号証の5)、庁舎移転担当課長が「売る場合は一般競争入札という事になりますのでご考慮いただきたいと思います」と説明している。
3.仮に地方自治法施行令に定める随意契約に該当しない随意契約であっても、価格を正当に評価して地方公共団体に損害が発生しなければ何ら問題はないのである。本件土地売却は随意契約を採用し、不当に安く売却し39億1000万円もの損害を与えたのが問題なのである。
58億円台〜111億円台の14件の見積りが提示されたのに、随意契約では予定価格を超過してさえいれば価格はいくらであっても構わないという誤った認識のもとで、価格を斟酌することなく売却したものである。
4.随意契約であっても地方公共団体の売買契約の原則である一般競争入札の価格の有利性を遵守しなければならないのは、最高裁判例(平成6年12月22日)(甲17号証)で判示している。この判例によれば、地方公共団体が不動産等を売却する場合において行政目的達成のためには、随意契約を行うことができるが、「ただ、その場合においても、普通地方公共団体としては、右の事情につき配慮した上で、当該地方公共団体に最も有利な価格で売却すべき義務を負うのであるから、そのような価格を売却価格として売却しなければならない」と判示しているのである。
然るに、本件土地売却においては、目黒区にとって最も有利な価格で売却されなかったのである。したがって、被告は条件付き一般競争入札で十分に対応できる売却を違法な随意契約を採用し、その上に随意契約であっても価格の有利性を遵守しなければならないのに、それに違反して二重の誤りを犯したものであるというべきである。
審査委員会会議録によれば、最後の審査委員会においても「価格を無視するというのはどうかなと。何らかのかたちで価格を評価する必要があると考えるが」という価格重視の正当な意見があったが、価格無視及び価格軽視の審査委員が多く封じ込められてしまったのである。
原告は価格のみによって売却せよと主張しているのではなく、庁舎移転の財源づくりの売却であるのだから、価格を適正に評価して売却するべきであったと主張するものである。
第4
本件土地売却の総合的判断による売却について
被告は公募提案方式による随意契約で、最高購入希望金額より39億1000万円も安く72億円で三菱商事に三菱商事に売却したのは、提案内容を総合的に判断して決定したものであると主張しているが、原告は被告のこの主張を否認する。公募提案の審査で三菱商事の提案を1位に順位付けした審査過程及び被告が売却先として三菱商事を選定したのは、断じて総合的判断によるといえるものではない。その根拠について、原告はつぎの通り主張する。
1.本件土地売却は新庁舎購入・移転の財源確保、財源捻出であるのだから、価格を第一義として考慮すべき売却であるのはいうまでもない。故に総合的判断とは、適正なる価格評価を包含するのは当然である。然るに、被告は価格を故意に排除して、三菱商事の提案を採用したのは、総合的判断とは程遠いものである。
公募提案で58億円台〜111億円台の14件の提案が提出されて、その提案審査にあたった審査委員会の審査過程は、価格を考慮することなく行われたのは、原告の準備書面(3)にある審査委員会会議録の検討で明らかである。また、原告が同様に行った原告の住民監査請求により目黒区監査委員が審査委員たちを事情聴取した監査委員協議録の検討からも、総合的判断をしていないのは明らかである。
2.総合的判断といえるものではない主な理由を列挙すると以下の通りである。
(1)売却予定価格を超過している58億円台〜111億円台の14件の提案について価格をまったく考慮することなく、一次審査で半分の7件に絞り込んだ。審査委員会が単純に跡地利用の提案内容を審査しただけであり、価格を完全に無視した一次審査であった。価格の有利性では最大の111億円の提案は一次審査で落とされたのである。
財源確保の売却であるにもかかわらず、このような不合理な一次審査が実施されたのである。審査員会はまず最初から価格を含む総合判断を放棄していたというべきである。
(2)価格を排除した提案審査で1位から7位まで順位付けされた7提案にだけ、予定価格を1億円超過するごとに0.1点の割合で自動的に事務局が加点した結果、三菱商事の72億円が最終的に審査委員会で1位に順位付けされたのである。なぜ、1億円=0.1点であったのか、その合理的な根拠についてはまったく説明されていない。審査委員会会議録を精査しても、その根拠についての記録はない。事務局案を審査委員会が了承しているとしても、価格を余りにも不当に扱った評価基準である。
原告の準備書面(2)第3「選考にあたっての審査項目」についての原告の主張で立証したように、例えば、審査委員が記入した評価書の街並みとの調和、住民への貢献などの5つの小項目で「非常に劣る」と採点しても、合計5点になり、1億円=0.1点の価格評価基準で換算すると、なんと予定価格を超過した50億円分に相当する不合理きわまりない価格評価基準なのである。監査委員の事情聴取に対して本件関係人の収入役・安田は、予定価格を50億円以上超過しても5点であると陳述している。5点とは、評価書の小項目の満点が5点であり、それに合わせたのである。
価格評価を著しく低くすることで、提案内容の順位付けを価格で逆転することができないようにしたわけである。ちなみに111億1000万円の提案は、約54億円超過しているので5点になるが、一次審査で落とされているので、価格評価の対象にならなかった。
審査過程でこのように価格を極度に過小評価したわけで、とうてい総合的判断によって審査が行われたといえるものではない。
(3)72億円の三菱商事の提案内容が、111億1000万円との価格差に見合うものであるかについての比較検討はまったくなされなかったのは、審査委員会の会議録、監査委員の協議録でも明白である。提案内容と価格評価は不可分であるのに、それを分離して審査して、1億円=0.1点を加点したところで価格も考慮した総合評価にはならない。
(4)審査委員の会議録、監査委員の協議録からわかるのは、審査委員全員が公募提案の随意契約の場合、予定価格を超過していれば、価格の有利性を考慮しなくても構わないと誤った認識を持って審査をしたのである。原告がすでに主張したように最高裁判例の趣旨に沿って随意契約を採用した場合でも「最も有利な価格で売却すべき義務を負うのであるから、そのような価格を売却価格として売却しなければならない」と判示していることに無知であったというべきである。本件関係人で区の契約を担当する総務部長・木村は、公募提案方式の随意契約を採用するにあたって、地方自治法や最高裁判例を調査したと監査委員の事情聴取で陳述しているが、協議録にあるように、随意契約の法的根拠について基本的知識すらなかったのである。しかし、木村は本件契約が随意契約の条件に該当すると監査委員の事情聴取で陳述している。
被告は、その報告を契約を担当する総務部長の木村から受けて随意契約を採用し、本件土地売却を審議した区議会の企画総務委員会で「公募提案方式は他の自治体でも行っており問題ない」と虚偽の答弁をして、価格の有利性を考慮しなくても構わないと判断し、39億1000万円も安く売却したと合理的に推測できるのである。