レイアウトがズレて読みにくい場所がありますが、ご了承ください。
|
平成15年(行ウ)373号 損害賠償(住民訴訟)請求事件 原 告 須藤甚一郎 被 告 目黒区長 準 備 書 面 (6) 平成16年12月20日 東京地方裁判所民事2部C係 御中 原告本人 須藤甚一郎 目次 第1 条件付一般競争入札について 第2 補助参加人ら準備書面(1)に対する反論 第1 条件付一般競争入札について 1 目黒区の公募提案方式による随意契約と豊島区の条件付一般競争入札 (1)東京都豊島区は平成16年7月30日に、昨年閉校した区立時習小学校跡地(8,501.96u)を一般競争入札により65億100万円(最低価格63億672万8,820円)で、学校法人・帝京平成大学に売却することを決定した。(甲第29号証) 豊島区は、区の財政基盤の強化と周辺地域のまちづくり推進に活用すべきであるとして、大学又は大学院を誘致することで、文教的地域として健全なまちづくりを可能なものとしたいと考えて、建設される施設に対し様々な条件を付した。開札は7月30日午前11時に区役所の入札室で公開で行われた。落札者は、平成16年8月6日までに契約を締結する。(甲第30号証) 豊島区が区立時習小学校跡地の売却にあたり、採用した売却方法は、条件付一般競争入札であった。豊島区が作成した応募要領が、「条件付一般競争入札による区有地売払いのご案内」である(甲第31号証)。 豊島区は、時習小学校跡地利用に関して、用途は大学又は大学院の校舎、建物の建ぺい率、建物の高さ、門塀の築造、電波障害対策、道路整備、一般開放可能な講堂建設、地元住民に供する集会場設置、防災設備など詳細にわたり条件を付して、一般競争入札を行った。 同じく区有地の売却である目黒区旧本庁舎・公会堂売却においても、違法に随意契約を採用することなく、豊島区が採用した条件付一般競争入札を行っていれば、なんら問題はなかったのである。 (2)原告は、目黒区旧本庁舎・公会堂跡地の売却について、住民監査請求のときから公募提案方式による随意契約ではなく、条件付一般競争入札にすべきであったと主張してきた(甲第1号証)。また、住民訴訟においても、その主張をしてきた(訴状)。理由は、条件付一般競争入札を採用すれば、庁舎移転のための財源が、価格の競争原理によって最大限に確保される。かつまた売主である目黒区が跡地利用計画に関して、建物の高さ、延べ床面積、公共施設の設置、緑化・樹木保存、道路、空地、電波障害防止等に条件を付して一般競争入札を行えば、周辺地域の住環境との調和が図れるからにほかならない。 原告は、平成15年2月17日、最初に契約差し止め及び条件付一般競争入札による売却を求める住民監査請求を提起したとき、すでに旧本庁舎・公会堂跡地の公募提案方式による審査を白紙に戻し、条件付一般競争入札による売却を主張した。本件土地の売却にあたり、目黒区が条件付一般競争入札を採用していれば、跡地利用計画の14件の提案内容と見積価格を比較考量せず、価格を不当に評価するなど、不透明な審査を行うこともなく、不当な審査、違法な売却は発生しなかったのである。したがって、売却価格72億円と最高見積価格111億1000万円の価格差である39億1000万円の得べかりし利益の損害を未然に防ぐことができた。 豊島区の「条件付一般競争入札による区有地売払いのご案内」の内容と目黒区の公募提案方式の内容を比較して、目黒区の公募提案方式による随意契約が、いかに違法、不当であったかを詳述する。 2 本件売却は、随意契約によらずとも条件付一般競争入札で売却できた (1)原告は、本件売却の差し止め及び条件付一般競争入札による売却を求めた「目黒区職員措置請求書(住民監査請求)平成15年2月17日受理」(甲第1号証、1頁)で、つぎのように主張した。 「違法な随意契約による売却で生ずる39億1000万円の損害を未然に防ぐため、区長・藥師寺克一に対して、72億円で契約を締結しないことを求める。かさねて不当な審査による提案採用を白紙に戻し、周辺地域の環境保全に配慮した条件付き一般競争入札を改めて実施することを求める」 また原告は、本件売却による39億1000万円の損害賠償を求めた「目黒区職員措置請求書(住民監査請求)平成15年3月25日受理」(甲第2号証、3頁)、違法行為の法的根拠(2)でも、跡地利用計画について、つぎのように主張した。 「周辺地域の環境との調和をはかるためならば、区は建築物の高さ、延べ床面積、公共スペースの確保、緑化などの細目に留意点を設け、一般競争入札にすべきであった」 さらに原告は、「訴状」(5頁)違法の根拠(4)においても、 「近隣の居住環境との調和をはかるためならば、建築物の高さ、延べ床面積、公共スペース、空地など、数量化できるものを留意点として、条件付き一般競争入札で売却が可能であった」と主張した。 (2)しかるに被告は、被告「準備書面(1)」(8頁〜9頁)の「本件における随意契約の適法性について」で、地方自治法施行令167条の2第1項2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」は随意契約によることができるとして、適法性を主張している。 被告はその根拠として、「平成14年5月9日の政策会議において、本件土地については、@財政計画に基づき一定金額以上で売却すること、A限られた期間内に確実に歳入を確保すること、B公正かつ透明性の高い方法で売却すること及びC今後のまちづくりに資するように配慮することが基本的考え方として決定されていた」と主張する。 被告はつづけて、「このような本件土地の売却の性質及び目的によれば、価格のみを考慮要素とする競争入札ではなく、売却した後の土地の利用計画をも考慮することができる随意契約の方法によることが合理的なことになるのである」とも主張している。しかし、豊島区が行ったように一般競争入札に行政目的に合致した条件を付ければ、地方自治法で例外的に認められている随意契約によらずとも、地方公共団体の売買契約の大原則である一般競争入札で、本件土地は売却できたのである。条件付一般競争入札であれば、被告の主張する価格のみを考慮要素とする競争入札でないことは、改めて論ずるまでもない。 被告の随意契約が適法であるという主張は、本件土地売却は跡地利用に条件を付せば一般競争入札によって、随意契約よりも売却価格の透明さ及び跡地利用の両面で、さらなる住民の利益の増進が図れたのだから、成立しない。随意契約が適法であるという被告の主張は、まったくの的はずれであることは後述する。 3 随意契約採用を決めた政策会議で、より高く売却することを決定した (1)しかし、そのまえに重要なことを指摘しておく。 被告は、平成14年5月9日に開かれた政策会議に言及し、基本的な考え方として、上記の@〜Cまでが決定されたとしている。政策会議とは、「目黒区政策会議等の設置及び運営に関する規則」で定められた行財政運営の最高方針及び基本施策を審議決定する会議である(第1条)。政策会議は、区長が主宰する(第4条)。当該政策会議には、本件関係人らがすべて出席した。 確かに乙第25号証の「平成14年度における区有地の売却について(案)」には、基本的な考え方として、上記の@〜Cまでがある。 乙25号証には、政策会議の会議録も含まれている。会議録には、付議事案1として「平成14年度における区有地の売却について(案)」(説明者:契約課長)とある。また会議録には、 (会議の結果)「平成14年度における区有地の売却について、所管案の方向で進めることを了承する」 (主要な発言)「・より高く売却できるよう万全のPRをしてほしい。→そのようにします」 と記されている。区長が主宰した政策会議であるから、会議録にある「・より高く売却できるよう万全のPRをしてほしい」の発言は区長・藥師寺であり、「そのようにします」と答えたのは、説明者である契約課長・加藤義光であることは、間違いない。 ところが、被告は「準備書面(1)」(9頁)では、会議録から平成14年度における区有地の売却について、基本的な考え方として@〜Cまでが決定されたことだけを引用し、故意に(主要な発言)「・より高く売却できるよう万全のPRをしてほしい。→そのようにします」の部分を無視している。会議録からの引用は、極めて作為的である。 (2)政策会議会議録で、より高く売却できるよう万全のPRをしてほしい、の発言が(主要な発言)と記録されているのは、つまり、売却目的が庁舎移転の財源確保にあったのだから、当然であった。より高く売却することが、区長・藥師寺及び政策会議構成員の考えであったはずである。 被告は、最高見積価格111億1000万円より、39億1000万円も安く72億円で三菱商事に売却することを決定したあと、売却予定価格を超過していれば、重要なのは提案内容であって価格ではない、と主張しはじめた。政策会議で決定しておきながら、より高く売却することを隠蔽したというべきである。 被告が繰り返して主張しているように、本件売却で最重要だったのが、まちづくり、周辺住環境との調和であったのなら、公募提案方式の随意契約で売却することを決定した政策会議で、どうしてその旨の発言がなかったのか。当該政策会議には、総務部契約課作成の「平成14年度における区有地売却について(案)」(乙第25号証)が資料として提出され、その中に「売却にあたっての基本的な考え方」@〜Cがある。Cは「今後のまちづくりに資するよう配慮すること」である。けれど、政策会議会議録には、Cに関連した発言の記録はないのである。のちに提案審査で、重要なポイントになった「土地利用計画提案上の留意点」も提出された資料に記載されているにもかかわらず、留意点に関しても政策会議会議録に発言の記録はない。本件売却を決定した当該政策会議では、より高く売却することが最大の目標であったと見るべきである。 このことからも、予定価格を超過していれば、価格よりもまちづくり、住環境との調和だという被告の主張が、14件の見積中7番目の価格である72億円で三菱商事に売却したあとのつじつま合せ、言い訳でしかないのがわかる。 4 目黒区の公募提案方式による随意契約と豊島区の条件付一般競争入札の比較。目黒区の旧本庁舎・公会堂売却でも条件付一般競争入札を採用できた。 (1)豊島区は、時習小学校跡地売却の「条件付一般競争入札参加要領」(甲第31号証、2頁〜3頁)の3.特記事項で、「契約にあたっては、特約条項がつきます。「土地売買契約書」は7〜12ページのとおりです。特約条項に反した場合は、所定の違約金を本区に支払っていただきます。あらかじめ契約条文を確認し、その内容をご承諾のうえ入札に参加してください」とした。 「主な特約条項」で、「売主 豊島区(以下「甲」という。)と買主 落札者(以下「乙」という。)とは、次の条項により土地の売買契約(以下「この契約」という。)を締結する。」として、(1)〜(13)の特約条項を設けた。(1)〜(13)の特約条項のうち、目黒区の本件土地売却と関係のある条項について、比較する。 特約条項(1)は、「現状有姿による契約(契約書第4条) 甲は、この土地を現状有姿のまま乙に売り渡す」である。目黒区の旧庁舎・公会堂売却も、現状有姿のままの売却で同じである。 特約事項(2)は、「契約の発効(契約書第6条) この契約は、豊島区議会において、この土地の売払いにかかる議案が可決されることを停止条件とする」である。目黒区の本件土地売却も、区議会の議決を経なければ契約できなかった。 特約条項(3)は、「用途の指定等(契約書第12条) @乙はこの土地を、大学又は大学院の校舎(付属施設を含む。以下「校舎等」という。)敷地として使用する。A乙は、この土地を引き渡し後、速やかに校舎等の建築工事に着手する」である。 豊島区は、当該小学校跡地が商業地域と第1種住居地域であるにもかかわらず、落札者がこの土地を大学又は大学院の校舎、敷地として使用することという条件を付けた。そこには、用途指定をして、まちづくりに資する明確な行政目的があった。 (2)ところが目黒区は、原告が準備書面(4)21〜24頁で詳述したごとく、売却予定価格を決めるために、財産価格審議会に諮問した不動産鑑定評価書に「想定最有効使用 共同住宅」「建物の構造・用途 鉄筋コンクリート造5〜6階建、ファミリータイプマンション」とあり、また財産価格審議会が区に答申した結果もまったく同じであった。ちなみに、旧本庁舎は5階建、公会堂は2階建であった。それならば、跡地利用計画に財産価格審議会に諮問した内容と同じ条件を付ければよかったのである。しかし、目黒区は跡地利用計画について、何も条件をつけることなく、公募提案方式による随意契約を採用した。このことから、目黒区は本件土地売却にあたって、まちづくりに資する具体的な行政目的及び構想を持っていなかったのは明らかである。 被告は、目黒区「基本構想」「基本計画」「住宅マスタープラン」「みどりの条例」「住宅基本条例」「環境基本条例」「環境基本計画」等(乙第3号証〜乙第10号証)を列挙して、まちづくり、住環境との調和のために階高では12階、13階建の三菱商事に売却したと主張する。また被告は、審査委員会が三菱商事を1位に順位付けしたしたことも、そして区長・藥師寺が三菱商事と契約したことも合理的な判断であったと主張する。 三菱商事の提案は、階高のひとつをとっても、5階及び2階の跡地に12階及び13階の集合住宅を建てるのだから、近隣地域の住環境を大きく破壊するものである。とうてい合理的な判断とはいえない。「基本構想」「基本計画」「住宅マスタープラン」等(乙第3号証〜乙第10号証)を根拠にして、まちづくり、住環境との調和を図るのであれば、なおさらのこと、豊島区が実施したように用途、建物の高さ、公共施設の設置等について、詳細かつ具体的に条件を付して一般競争入札を採用すべきであった。 (3) 特約条項(5)は、「建築の制限等(契約書第15条) 乙は、この土地に建物及び工作物を建築する場合に、以下の各号に掲げる建築条件を遵守する。 @建ぺい率 60%以下とすること A建物の高さ 軒の高さ40m以下とすること B門塀の築造 防犯上必要な個所を除き築造しないこと C電波障害対策 有線テレビジョン放送を活用した受信障害対策を実施する ものとし、豊島区テレビジョン放送の受信障害の解消に関する条例施行規則(平成9年3月31日規則第34号)に定める実施機関に委託すること」である。 当該小学校跡地は、商業地域(建ぺい率 80%)と第1種住居地域(建ぺい率 60%)にまたがっているが、豊島区は建ぺい率が少ないほうの60%に制限した。また建物の高さについても、軒の高さ40m以下に制限した。ところが、目黒区の本件土地売却では建築する建物について、「応募上の留意点」(乙第1号証、4頁)(1)で「現庁舎周辺は基本的に住宅地としての性格が強いことを踏まえ、当該地域の居住環境に配慮した、調和のとれた街並み形成を図ること」としただけである。 留意点(1)を一読すればわかるように、建物の高さなど具体的な記載は一切ない。目黒区は、「応募上の留意点」を踏まえて利用計画を作成し、提案してください、としている。が、留意点は制限ではないから、なんら強制力はないのである。留意点の解釈は、提案する応募企業に任されていて、目黒区が当該地域の居住環境に配慮した、調和のとれた街並み形成の確たる考えがなかったのがわかる。 留意点を踏まえて、随意契約で応募企業に街並み形成を提案させるよりも、建物の高さなど調和のとれた街並み形成に重要な事項について、制限を付けて一般競争入札で売却すべきであったのである。 特約事項(6)は、「道路整備及び敷地内整備等(契約書第16条および別表2) 乙は、自己の負担において、この土地の周辺道路を甲の指定する方法で整備する」である。豊島区は道路整備に関して、一例を挙げれば、「整備箇所:北西側区道に接する箇所 整備方法:建築基準法第42条2項道路中心線から4m後退し、区道としての整備 整備後の所有権の帰属および維持・管理:所有権の帰属を甲とし、甲の負担において維持・管理を行う」(甲第31号証、12頁、別表2)と条件を付けている。つまり、豊島区の指定する方法で落札者が整備し、整備後の所有権は豊島区に帰属し、豊島区が維持・管理すると制限しているのである。 じつに明解であり、豊島区及び住民の利益につながるやり方である。なにも特約事項(6)に限ったことではないが、一般競争入札に条件さえ付せば、単に価格要素のみの競争ではなく、非常に多くの行政目的が実現できるのである。 しかるに、目黒区は「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」を法的根拠にして、随意契約を採用しておきながら、道路整備に関しては留意点に記載はない。ただ留意点(4)に「本庁舎部分において必要な歩道状空地を確保し、東急バス停留所及び郵便ポストは残すこと」とあるだけである。 条件を付せば十分に一般競争入札でできたことを、あえて随意契約にして、その結果、契約内容が条件付一般競争入札採用よりも劣るのであるから、本件土地売却を随意契約にしたのは違法である。 (4) 特約条項(7)は、「施設整備等(契約書第17条および別表3) 乙は、自己の負担において、次の施設を建築する。 @講堂(ホール)A集会所 B防災設備」である。 契約書第17条で、 「乙は、自己の負担において、別表3に掲げる施設を建築する。 2 前項により整備した施設の管理運営等は、別途、甲及び乙で協議する。 3 乙は、第1項の施設建築を乙が建築する校舎の竣工事までに完了する」 としている。 別表3(施設整備)でつぎのように定められている。 講堂(ホール):一般開放可能な1,000席程度の規模 集会所 :地元住民に供することを目的とした300u程度の規模 防災設備 :@消防水利100t槽以上を確保する施設 A災害用飲料水を確保する施設 豊島区は、一般開放可能な講堂の客席数、地元住民に供する集会所の平米数、消防水利100t槽、災害用飲料水施設まで詳細な条件を付けて、落札者に建築させることにした。じつに行き届いたやり方である。 いっぽう目黒区は、応募上の留意点には住民に供する集会所、防災施設などについて具体的な記載はない。ただ留意点(2)に、「庁舎等の跡地であることから、地域の活性化や安全性の確保など住民に貢献できるよう配慮すること」とあるのみである。住民に貢献できる配慮といいながら、その内容を応募した企業に任せたのは、怠慢であり行政にあってはならないことである。 応募した企業が、独自に公共施設、公共スペースを提案したが、施設や施設規模について定めていなかったのであるから、当然、その内容はさまざまであった。公募提案の審査委員会は、三菱商事が提案した住民に供する公共施設、防災施設などを高く評価して、1位に順位付けした。しかし、提案内容が価格差に匹敵するものではないことは、原告がこれまで何度も指摘してきた通りである。 三菱商事の公共施設は、公募提案時には605uであった。が、その後のヒアリングで、三菱商事は650uを1300uの2倍に拡大し、目黒区に無償譲渡することにした。審査委員会は、そのことを大きく評価した。 被告は、準備書面(1)第3「本件提案と整理番号12の提案(注、111億1000万円の提案)との比較について」の6「地域開放施設(コミュニティ施設)について」で、「A本件提案 現状では専有部分が605平方メートル位である(甲2号証中の事実証明書6に「650平方メートル位」とあるのは誤り。)が、オープンスペースを含めると1,300平方メートル程度は可能であり、無償譲渡を考えている」とある。整理番号12の111億1000万円の提案は、地域開放施設(公共施設)がわずか150平方メートルにすぎず、三菱商事提案の1,300平方メートルと格段の差があるとしている。 被告が、「オープンスペースを含めると1,300平方メートル」と述べているには、誤りである。目黒区監査委員が関係人を事情聴取した「監査委員協議録」(甲第18号証5頁)で、助役・佐々木英和は「専ら専有として、区に還元しますという意味合いでした」と答えている。また、現在すでに当該公共施設の実施設計が終わり、区の専有部分が1,300平方メートル余である。 いずれにしても、目黒区は住民に供するための施設、施設規模の条件を付けずに、公募提案を行い、さらに提案内容をヒアリングで変更した三菱商事を過大評価した。拡大した公共施設の広さが、1位に順位付けされた大きな理由のひとつであったのは事実である。 (5)防災施設について被告は、準備書面(2)の3「本件売買契約の相手方に三菱商事を選定したことが適法であることについて」で、111億1000万円の提案は「地域防災についての提案はない」とある。いっぽう三菱商事の提案については、「地域防災にも対応できる100t防火水槽」などを挙げて、優れた提案であると主張する。 111億1000万円の提案に、地域防災についての提案はないというが、実際には消防法等の法律、条例による消防施設の必置義務があり、問題はないはずである。地域防災の提案がなければ、価格の有利性で一番の提案であるのだから、なぜ審査委員会によるヒアリングの際に、消防法等の必置施設のほかに何を考えているのかを聞かなかったのか。ヒアリングの会議録に防火施設についての発言の記録はない。 目黒区も豊島区が行ったように、消防水利100t槽以上を確保する施設、災害用飲料水を確保する施設といった条件を付して一般競争入札を行えば、不透明な審査が避けられたのである。 (6)さらに豊島区は、「条件付一般競争入札による区有地売払いのご案内」で、特約条項とは別に「本件学校用地売却にあっては、「区有地売払いのご案内」に記載の特約条項(条件)のほかに、下記事項について本区からの要望事項として協議をお願いすることとしております」(甲第31号証、最終頁)として、つぎの要望事項を設けた。 ○住民説明会の開催 ○建築設計説明会の開催 ○既存樹木の保存 ○自転車駐輪場の付置 ○旧時習小学校の記念碑の設置 ○地域活動支援のための倉庫の設置 ○公開講座の開催 目黒区では、既存樹木の保存について、応募上の留意点で何も具体的に記載しなかった。ただ留意点(3)で「当該地区は、目黒区緑の基本計画で緑化重点地区に位置づけられており、緑化について配慮すること」と抽象的に書かれているだけである。これでは旧本庁舎・公会堂の既存樹木について、緑化重点地区であるのに、肝心な目黒区がどう考えているのか、まったくわからない。このことも応募した企業任せであり、応募した企業にとっては、いわばクイズの謎解きみたいなものであった。これもまた目黒区の行政目的の欠如であり、怠慢というべきである。 豊島区は、要望事項で既存樹木の保存に関して、「工事に支障が生じない範囲で、極力既存樹木を生かした整備を行うこと」とあり、明解そのものである。目黒区も、豊島区と同じ条件を付けて一般競争入札を行えば、既存樹木の保存もできて、なおかつ既存樹木の保存をめぐり審査委員会が不公平に審査をすることも避けられたのである。 原告は、三菱商事提案の既存樹木のサクラとレバノン杉の保存に関して、審査委員会が過大評価をしたことは、これまでに指摘した通りである。目黒区が、既存樹木の保存について具体的な条件をつけなかったために、審査基準が曖昧になり、審査結果が不公正・不公平になったのである。 (7)まとめ 以上、豊島区の条件付一般競争入札と目黒区の公募提案方式による随意契約を比較してきた。本件土地売却は、地方公共団体の売買契約の原則である一般競争入札に、行政目的に合致し、かつ住民の利益の増進につながる条件を付して、条件付一般競争入札で行うべきであったのである。 原告は、本件土地売却に関する2度にわたる住民監査請求のときから、公募提案方式による随意契約よりも条件付一般競争入札の優位性を主張した。さらに本件住民訴訟においても、原告が同じ主張をしていることは、改めていうまでもない。 しかし、目黒区は本土地売却にあたり、地方自治法が地方公共団体の売買契約で例外的に認めている随意契約をあえて採用して、本件土地を売却した。条件を付せば、合法的に一般競争入札にできたものを随意契約にしたのであるから、違法である。ただし、随意契約を採用しても、目黒区に損害を与えなければ違法性を問題にする必要はない。けれど、目黒区は、最高見積価格111億1000万円との価格差39億1000万円も安く、72億円で三菱商事に売却したのである。また、2番目に高い見積価格83億円との価格差でさえ11億円である。三菱商事の提案内容は、それらの価格差に匹敵するものではない。 本件土地の跡地利用計画に条件を付けた一般競争入札を行っていれば、なんら問題は生じなかったのは、これまで見てきた通りである。むしろ、まちづくりと周辺地域の住環境との調和に資するためには、公募提案方式による随意契約よりも、条件付一般競争入札のほうが優れているといえる。 被告は、都立大学深沢校舎跡地利用の紛争に言及しているが、それならばなおさらのこと、本件土地の跡地利用計画で、建物の高さ、建ぺい率、空地等について、条件を付して一般競争入札を行うべきであったのである。 第2 補助参加人ら準備書面(1)に対する反論 1 補助参加人ら準備書面(1)について、すべて否認する。補助参加人らの主張は、大筋において被告の主張と大差ないが、補助参加人ら独自の主張について、若干反論する。 (1)補助参加人らは、そもそも契約課長・加藤義光の逮捕と、本件売買の違法性とは関連性がない、と主張する。しかし、目黒区の契約事務一般の杜撰さが、2年間にわたる加藤の収賄事件を察知できなかった原因であった。本件売却にあたり、違法な公募提案方式による随意契約を採用したのも、そうした契約事務一般の杜撰さが根本にあったといえる。加藤は随意契約を決定した政策会議で、契約の所管課長として区長・藥師寺に「平成14年度における区有地の売却について(案)」を作成し説明した。(乙第25号証) 本件売却で随意契約を採用したことについて契約事務責任者の立場で、深く係っていたのである。本来なら、地方公共団体の売買の原則である一般競争入札を採用すべきものを、あえて随意契約にしたのである。合法的な条件付一般競争入札で行えた売買であった。契約事務の杜撰さで起きた加藤の事件と本件売買の違法性と無縁であるとはいえない。 ちなみに、加藤の収賄事件について平成16年8月13日に東京地方裁判所で、懲役1年6月、執行猶予3年。保管中の賄賂100万円は没収、100万円を追徴するという判決があった。加藤は控訴せず、刑は確定した。 (2)補助参加人らは、第5「随意契約の採用の適法性について」で、随意契約を選択したことは合理的な裁量の範囲内の行為であり、違法性はないと主張する。原告は、すでに被告の同じ主張に反論しているが、改めて主張しておく。最高裁の判例で「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」としているが、本件売買契約では売却価格72億円の半分以上もの価格の有利性を犠牲にしたわけで、とうてい「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」といえるものではないのは、明白である。当該判例を援用することはできない。区長・藥師寺の裁量権の逸脱そのものである。価格のみの競争入札以外の行政目的が存在したのならば、条件付一般競争入札を採用すればよかったのである。 (3)補助参加人らは、(2)アで本件売買が単なる目黒区の財源確保を目的としていたものでないことは、明らかであると主張する。しかし、本件売却の目的は、庁舎移転のための財源確保以外なにものでもない。この件についても、原告はすでに被告の主張に反論している。 平成15年3月3日に区長・藥師寺が、本件土地売却の議案を議会に上程し、議案の売却目的に「庁舎移転の費用に充てるため」とあることからも明らかである。まちづくりへの配慮などは、本件土地売却の目的ではなく、いわば付随的なものであった。 ほかにも住宅マスタープラン、基本構想、緑の基本計画などを挙げて、三菱商事への売却を適法であると主張する。それならば、例外的に認められる随意契約でなく、なぜ、売買の原則である一般競争入札に基本構想等を満足させる条件を付けた条件付一般競争入札を採用しなかったのか。 (4)さらに、(2)エで都立大学深沢校舎跡地利用をめぐる紛争と第4庁舎売却後の紛争に言及し、随意契約で売却した本件売却だけは、近隣とのトラブルは発生していないと主張する。が、そんなことはない。 現在、目黒区議会議員である原告に、つい先日も公会堂裏の2人の住民から相談があり話を聞いた。近隣住民は、旧庁舎5階建、公会堂2階建の跡地に12階と13階の巨大マンションがいま建築中で、不満が爆発しているのが実情である。住民監査請求、住民訴訟、建設差し止め請求などを提起したくても、できなくて泣き寝入りの状態がつづいているのである。 1人の住人は弁護士に相談にいったが、費用のことや、近隣住民の中で不満は持っている者も病気、高齢、共働きなどで足並みが揃わず、諦めたという。近隣住民全員が、三菱商事のマンション建設に賛成しているかのように主張するのは、大きな間違いである。都立大学深沢校舎跡地の紛争があったのを目黒区が知っていたのだから、留意点が極めて曖昧な公募提案による随意契約を採用せずに、すべての区有地売却について、行政目的と住民の要望に沿った条件を付して、一般競争入札を行うべきであったのである。 (5)補助参加人らは、本件売却の方法について議会に報告したと主張するが、議決案件ではなく、単なる報告事項にすぎず、なんら適法化できるものではない。また、(4)で「価格以外の要素を考慮することができるのは随意契約であった」と主張するが、見当違いであり、不勉強も甚だしいというべきである。原告が、この準備書面(6)第1で詳述したように、豊島区が行った条件付一般競争入札を採用すれば、随意契約よりも、さらに価格以外の要素を考慮して売却することが可能であったのである。 (6)補助参加人らは、第5の3で上記最高裁判例を援用して、随意契約選択の適法性は、取引の目的と性質によって判断されるべきものであって、売却価格を問題として判断されるものではないと主張する。 この主張は、当該判例の誤読によるものである。なぜならば、当該判例は「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」「当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合」という文脈で判示しているのである。売買価格をまったく無視した判例ではない。 そもそも地方公共団体の収入の原因になる契約は、最重要なのは売却価格である。とくに目黒区は区財政逼迫時における、庁舎移転のための財源確保にあったのだから、売却価格が最重要であったのは、改めていうまでもない。本件売却時の平成14年度目黒区財政状況については、追って準備書面を提出し、詳述する。たとえ、随意契約を採用したとしても、価格の有利性は最重要であり、場合によっては多少の価格の有利性を犠牲にしても、地方公共団体の利益の増進につながるときは、適法だとする判例である。本件随意契約は、それに該当せず、違法である。 (7)第6の1(1)及び(2)で、選定方法の適法性について、審査委員会の評価基準、評価方法は合理的だったと主張する。すでに原告が、被告の主張に反論したように、提案内容と価格を比較考量することなく、価格評価を極めて低く設定した不当な審査であった。随意契約を採用せず、原告の主張する条件付一般競争入札を採用していれば、不当な審査は必要なかったのである。 (8)目黒区が財産価格審議会に諮問し、答申された不動産鑑定評価で、最有効使用を5,6階建ファミリータイプ・マンションを想定した件で、補助参加人らは、容積率の上限が変わらない以上、分譲床面積に大きな差は生じないので、意味がないと主張する。これについては、次回の準備書面で反論する。 (9)第6の1(3)ア、イ、ウで、評価基準に違法性はない、と主張する。しかし、目黒区は公募提案で、行政目的が不明確な留意点を設けただけであった。応募を締め切ったあとに、評価基準を定めるよりも、評価対象にした項目を条件にして、条件付一般競争入札を採用すべきであったのである。不当な審査、違法な売却をしたあとで、いくら適法性を主張しても、言い訳でしかないというべきである。 (10)エ、で「本件売買は、より高値で売却するというよりも、土地利用計画の評価に重きが置かれるべき取引であった」と主張するが、その根拠はどこにあるのか。旧庁舎・公会堂売却に関しての目黒区の事情をまったく知らない者の空論でしかない。すでに原告は、被告の同様の主張に対して詳細に反論してきたので、簡潔に反論する。 区長・藥師寺は、区財政難にもかかわらず、新庁舎にするために旧千代田生命本社を約175億円で購入することを、あたかも衝動買いのごとく突然、決めた。議会で審議、議決することもなく、土地開発公社に購入させた。その財源確保のために旧庁舎をはじめ区有地のほとんどを売却し、120億円を捻出し、他の目的で積み立てていた基金を60億円取り崩し、合計180億円が必要であったのである。それも、区有地が120億円で売却できる保障はなく、区はまさに緊急事態であった。したがって、より高く売却するよりも土地利用計画だいうことは、本件売却を決めた政策会議の議題にもならなかったし、区長・藥師寺の議会での答弁にもなかったのである。 (11)第6の1(4)で、サクラやレバノン杉の既存樹木の保存について、 それに配慮するのは、提案者の能力の問題であって「一般のレベルにある提案者であれば、留意点に記載がなくとも提案できる事項であった。一般のレベルを対象に応募提案(注、提案は要領の誤りか)を作成すれば足りるのであって、それに劣るレベルに合わせて応募要領を作る必要はない」と主張する。こんな乱暴な論法が、どうしてできるのだろうか。 目黒区が既存樹木の保存について、応募上の留意点で具体的な記載をしなかったことを棚に上げて、それに配慮するのは提案者の能力の問題だ、さらに劣るレベルに合わせて応募要領を作る必要はないとまで言い切るのだから、あきれて恐れ入るというしかない。 本件売却は、最高見積価格が111億1000万円であった。そうした巨額の売買であったのだから、応募要領はどの業者が読んでも誤解ないように作成すべきものである。まして、財源確保の売却に応募してくれる提案企業は、いわば目黒区にとって、ありがたい客なのである。 さらに、既存樹木の保存について、住民の要望の情報開示を十分にしなかった件に触れて、「他の業者がいくら提示するのか知っていれば、それより高額な金額を提示したのに」等と主張するのと同様で、いわゆる「コロンブスの卵」だと補助参加人らは主張する。が、的はずれも甚だしい主張である。他者の見積金額を教えよ、いっているのではないから、この比喩はあたらない。 いずれにしても、目黒区が既存樹木の保存について明確な行政目的と住民の要望に合致した条件をつけて一般競争入札の行えばよかったのである。 (12)第6の2(1)、(2)で、土地利用計画で三菱商事の提案が優れていたと主張するが、最高見積価格との差39億1000万円に匹敵するものではないのは、原告が再三主張してきた通りである。跡地利用に制限を付けて、一般競争入札を採用していれば、跡地利用の内容と価格の競争原理による収入の両面で満足できるものとなったのである。 三菱商事は、ヒアリングでお年寄りと金持ちしか住まないのでは「町として面白くない」と発言したのを引用し、まちづくりに対する意欲を持っていたと主張する。しかし、すでに販売のはじまった三菱商事のマンションは、高額すぎて働き盛りのファミリーには、手の届かない価格である。そのことについては、追って準備書面を提出し詳述する。 (13)第6の2(3)及び3で、住民の意見として整理番号7番(三菱商事)との契約を要望していたと主張する。けれど、これは価格を無視してのことである。それに、こうした意見は、誰のものか特定できない。住民投票ならいざ知らず、住民の要望に従うだけならば、そもそも審査委員会は不要である。 三菱商事の提案をよしとしたのは、一部の住民である。近隣住民は、住民訴訟等の法的手段は講じていないものの、近隣の住環境を破壊する高さで旧庁舎等の2倍以上の巨大集合住宅建設に泣き寝入りしているのが、実情なのである。 補助参加人らは、平均提示価格は約70億円であり、111億円余の価格は「提案された価格自体の合理性自体に大きな疑問を持たざるを得ないものであった」と主張する。すでに原告は、被告の同様の主張に反論した。平均価格70億円は単純平均であり、三菱商事の72億円を超える提示価格は6件で、そのうち80億円を超えるのが4件もあったのである。111億円余の価格は、価格の合理性自体に疑問があるという主張は、企業努力、経営戦略を無視したもので、説得力がない。近隣トラブルを発生させるリスクは、数段高かったの主張も、なんの根拠もない。111億円余の提案は、階高でわずか1階、延床面積は、むしろ三菱商事よりも少ないのである。 (14)第6の5で、三菱商事がヒアリングで提案内容を変更したことについて、これまでの原告の書証全部に目を通さずに、誤った被告の主張をそのまま流用して、「原告の主張は的外れ」と主張することこそ、的外れである。原告は、今回の準備書面(6)第1の(4)で、誤りを指摘して反論している。ヒアリングで提案を変更したのは、明らかである。 (15)第7の(1)の主張は、被告の主張と大差ない。被告の主張については、原告はすでに反論した。補助参加人らは、区長・藥師寺が平成15年1月14日に開催した政策会議において、審査委員会の報告に則り、三菱商事の提案を採用することを決定し、同年3月14日の議会における議決を経て、同月24日に正式な契約をしたことをもって、区長・藥師寺の決定に何らの違法性はない、と主張する。 しかし、そもそも本件土地売却にあたり、随意契約を採用することを決定したのは、平成15年5月9日開催の政策会議においてであった。政策会議は、目黒区規則で定められた行財政運営の最高方針及び基本施策を審議決定する会議で、主宰したのは区長・藥師寺であった。平成15年5月9日開催の政策会議で、「平成14年度における区有地の売却について(案)」が了承された。(乙第25号証) その中に「契約の方式:公募提案による随意契約」「買受者選定方法:B第2次審査では、第1次審査通過者による審査委員会への利用計画のプレゼンテーション等を実施し、区との優先交渉権の順位付けを行い、最上位の者と契約する」とある。本件土地売却は、地方公共団体の売買の原則である一般競争入札で行えたのを、地方自治法で例外的に認められている随意契約を採用したのであるから、違法である。一般競争入札では価格要素のみで売却され、まちづくり、周辺地域の住環境との調和等のために随意契約を採用したと主張するが、一般競争入札であっても条件を付して、条件付一般競争入札を採用すれば、まちづくり等に資する価格要素以外を盛り込むことが、十分にできたのである。したがって、随意契約を採用する理由は存在しない。 原告は、本件土地売却について、住民監査請求のときから条件付一般競争入札の採用を主張してきたのは、すでに述べた。豊島区では、平成16年7月30日に区立小学校跡地売却で条件付一般競争入札を行い、落札者が決定したのは、先に述べたとおりである。 本件土地売却で随意契約を採用したことが違法であるのだから、議会の議決があったからといって、違法な契約を適法化できるものではない。(最高裁昭和37年3月7日、大法廷判決) (16)審査委員会が最上位の1位に順位付けした者と契約する、とした売却方法を決定したのも、区長・藥師寺が主宰した上記政策会議であった。審査委員会は、区長・藥師寺の私的諮問機関であり、三菱商事の提案を1位に順位付けして区長に答申した。決定した売却方法の手続きを踏んで契約しても、随意契約の違法性を適法化できるものではなく、契約者である区長・藥師寺が三菱商事と契約した本件土地売却は、違法である。 ただし、随意契約を採用しても、契約内容が目黒区に損害を与えるものでなければ、違法性を問題にする必要はない。しかし、三菱商事へ売却した価格は最高見積価格より39億1000万円も廉価であり、2番目の見積価格でも11億円も廉価であって、区長・藥師寺は目黒区に損害を与えたのである。 (17)補助参加人らは、区長・藥師寺が審査委員ではなく、審査に問題があったとしても、手続き的にそれを知り得る立場になかったと主張する。けれど、三菱商事を1位に順位付けした審査委員会の答申を受けたとき、どんな審査内容であったのかを容易に知り得る立場にあり、この主張は的を射ていない。審査内容は、価格と提案内容を比較考量することなく、価格評価を不当に低く設定するなど不当な審査であったのである。審査結果を合理的に判断して、区長・藥師寺が三菱商事と契約したといえるものではない。なおかつ、区長としての裁量権を大きく逸脱したものであった。 したがって、区長・藥師寺は地方公共団体の執行機関の長として、違法に随意契約を採用したこと、そして合理的に判断せず三菱商事と契約したことの2点において、違法行為を犯したのである。 (18)第8で、区長・藥師寺の企画総務委員会での答弁について、虚偽の事実にあたらないと主張する。しかし、単に名称が類似していることだけを理由にして、内容がまったく異なる売却方式を何ら問題ないと答弁したことは、虚偽の答弁にほかならない。 以上 |