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東京高等裁判所第8民事部 御中 意見書 地方公共団体は、公募提案方式(コンペ方式)に基づく随意契約で、価格以外の要素を考慮して、最高価格を提示した業者ではない者に不動産を売却することは許されるか。 上記の論点について、原告須藤甚一郎氏のご依頼により、大至急私見を申し上げます。
2006年9月13日 中央大学総合政策学部教授・弁護士 阿部泰隆 一 問題の提起、公募提案方式(コンペ方式)による不動産の売却は適法か 一部の地方公共団体(以下、自治体と同義)では、公募提案方式(以下、コンペ方式という)で高く評価された業者に対して、競争入札で売却する場合とは比較にならない安い価格で土地を売却している。自治体が土地を売却する場合に、まちづくりの一環として行うので、まちづくりに貢献する業者を相手方とするために、コンペ方式を採り、価格とそれ以外の両方を考慮して、相手方を選択している。価格だけを考慮しては、良いまちづくりができないというというつもりである。 しかし、普通には、売却する場合には競争入札が一番有利なのであるから、上記のようなコンペ方式に法的根拠はあるのだろうか。 地方公共団体においては、競争入札が原則であり、随意契約は政令で定める場合に限り許される(地方自治法234条2項)。そして、地方自治法施行令167条の2は、随意契約が許される場合を、1号、売買、貸借、請負その他の契約の場合にはその予定価格が一定以下である場合と、2号、@ 「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でAその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」としている。 コンペ方式による不動産の売却を肯定する見解の法的根拠は、必ずしも明らかではないが、前記の167条の2第1項第2号の「その他の契約」で読むらしい。 さらには、一般競争入札において最低価格の入札者以外の者を落札者とすることができる場合は、地方自治法施行令167条の10において、次のように規定されている。 「普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者の当該申込みに係る価格によつてはその者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、又はその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあつて著しく不適当であると認めるときは、その者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした他の者のうち、最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができる。 2 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもつて申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができる。」 公有地の売却をコンペ方式で行うことができるとする説はこの規定にも注目しているようである。 しかし、結論的に言って、それは、文理上も実質的にも誤りであり、これまでの判例も、これに気が付かなかったにすぎない。 二 私見(否定説) 1 文理解釈 まず、地方自治法施行令167条の2の条文では、不動産の「売買」と「買入れ」という言葉が区別されている。この1号では、売買である以上は、買入れでも売却でも、競争入札という手間をかけることなく、随意契約が許されることとされているが、それは予定価格が一定額以下に限られている。 不動産の買入れの場合、Aの要件を満たせば、予定価格が一定額以下という制約なしに随意契約をすることが許される(2号)。 しかし、不動産の売却の場合には、この2号の規定の適用がないので、Aの要件を満たそうと、随意契約にすることはできない。 もっとも、これに対しては、不動産の売却を「その他の契約」で読めるという反論がある。その前提に立てば、不動産の売却を随意契約で行うことができるかどうかは、Aの要件が充足されたかどうかによる。 しかし、この条文では、不動産の買入れが例示されており、売買とはされていないから、「その他」に、まさかその反対の売却まで含むはずはない。この2号に「売払い」という言葉が用いられているが、これは、納入に使用させるために必要な物品に限っているので、これも、不動産の売却一般を含まないことが前提であろう。 買入れとあるのに、「その他の契約」で、売却も読むなら、買入れを例示する必要もない。 このように、「その他」という言葉の中に、売却を読み込むのは文理上無理である。 次に、地方自治法施行令167条の10の対象は「一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合、」に限定されている。これはサービスを購入する場合(公金を支出する場合)の規定であって、不動産を売却するように、自治体に金銭が入る契約には適用がない。しかも、「予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者の当該申込みに係る価格によつてはその者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、又はその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあつて著しく不適当であると認めるとき」に限られるのであって、コンペ方式が一般的に許されるものではない。 2 実質論 もちろん、法解釈は文理解釈だけでは決定的ではない。実質に支えられて初めて、文理解釈も通用力を持ちうる。 そこで、実質的に考えてみる。地方自治法施行令167条の2では、売るときは、Aに当てはまるのはどんな場合なのだろうか。買う時は、鉛筆とか、個性の少ないものはともかく、不動産は皆個性があり、普通は特定の不動産に注目するわけであるから、安ければよいというものではなく、価格以外にも種々考慮すべきことがあるし、その所有者と交渉することになるので、競争入札が適しているとはいえない。しかし、売るときは、高く売れるのに高く売らなければ、自治体の財産を失うのであり、高ければ高いほど得なのであるから、Aの適用はないのである。 普通財産の売却の際に、公共の利益に反するような使用を禁じたいという場合でも、随意契約にする必要はなく、売却条件を付け、買戻し約款をつければ競争入札で対応できる。暴力団に使用させてはならないというような約款は今は神戸市も作っている。 積極的に公共の利益のために使って欲しいという場合にも、売却条件による制約を工夫すればよい。街づくりのために自治体が相当程度の具体的プランを作成していて、それを民間企業で行わせるというのであれば、PFI(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律によるもの)などの手法をとることも可能である。民間に売却するが、まちづくりの点で自治体が望む計画を立てた業者に売却したいというのであれば、自治体の方が計画を策定して、それに従うことを売却条件として、最も高く応札する業者に売却すべきである。自治体には計画策定能力が足りないので、先に、望ましい計画を作った業者と契約したいという場合には、売却前に、高位順に一定額を払うとして、計画提案を求めて、計画策定料を払うようにすれば、それは不動産の売却ではなく、計画策定サービスの購入であるから、随意契約がふさわしいのである。 3 損害 なお、損害は、時価相当額を下回って随意契約をしたというのであれば、実際的には、民間事業実施に補助金を出すことに他ならないので、具体的な「公益目的」の存在と補助をすることが相当であることの説明が必要とされるし、補助としての形式が必要であろう。単に安く売って、補助金だとの説明はできない。 売却値段が、時価相当額を上回るものであっても、入札をすればもっと高く売れたのであれば、やはり損害が発生する。 三 従来の判例学説は問題点に気が付いていないこと 以上で、一の問題に対する回答が得られたが、これまで、このような問題を提起した判例学説は寡聞にして知るところではなく、不動産の売却でも、前記施行令167条の2のAの要件が満たされているかどうかだけが争点となってきたので、一言することとする。 1 判例 まず判例を見ると、随意契約によることができるかどうかの論点に関する先例として引用されるのが最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決(民集41巻2号189頁)である。これは次のように述べている。 「随意契約によるときは、手続が簡略で経費の負担が少なくてすみ、しかも、契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面、契約の相手方が固定化し、契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も指摘され得ることから、令一六七条の二第一項は前記法の趣旨を受けて同項に掲げる一定の場合に限定して随意契約の方法による契約の締結を許容することとしたものと解することができる。ところで、同項一号に掲げる「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」とは、原判決の判示するとおり、不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合や契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合など当該契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合がこれに該当することは疑いがないが、必ずしもこのような場合に限定されるものではなく、競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが、不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく、当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても、普通地方公共団体において当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も同項一号に掲げる場合に該当するものと解すべきである。そして、右のような場合に該当するか否かは、契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている前記法及び令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約ごとに、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である。」 これは随意契約によることができる場合についていかにも一般論をしているが、市のごみ処理施設建設の請負契約を随意契約によつて締結した事案である。これは不動産であっても、買入の事案であるから、この判例は正しい。しかし、この判例は、不動産の売却という、全く異質なものにもこの判旨が妥当するという趣旨のことはいっさい述べていない。したがって、この判決を根拠に、不動産の売却の場合に随意契約が許されるかどうかを論ずる(そして、これを肯定する)のは誤りである。 最高裁平成6年12月22日判決(民集48巻8号1769頁)は、不動産の売却について、最高制限価格を設定した一般競争入札による売却を違法として、随意契約によることのできる前記のAの場合に当たるとした。そこで、これは、不動産の売却にも随意契約の適用があるとの先例になるという主張があろう。 しかし、この事件では、不動産の売却は、前記施行令の文言上随意契約が許される場合に当たらないとの主張がなされなかったので、その論点を無視したものであり、先例とすべきものではない。現に、平成6年の最判に関する千葉勝美調査官解説(最高裁判例解説民事篇平成6年度688頁以下)は、不動産の売却か買入れかを問題とせずに、Aの要件だけを検討している。 従前の下級審判例もこの点の問題意識を持っておらず、随意契約が不動産の売却に適用されるかどうかを論じていない。 本件の原審東京地裁平成18年2月16日判決平成15年(行ウ)第373号 損害賠償請求事件は、原告目黒区会議員須藤甚一郎氏のHP(http://home.f04.itscom.net/sudo-j/)に掲載されているが、その準備書面を見ても、この点の主張はなされていない。したがって、裁判所がこのような点を論点と思わなかったのは不思議ではない。 東京地判平成5年2月25日(判タ859号179頁判例自治122号64頁)、横浜地判昭和58年11月14日(判タ521号229頁)、東京地判昭和45年1月19日(行集21巻1号1頁判時580号28頁判タ244号211頁)も同様である。 注 参考までにこれらの判決文を引用しておく。 東京地裁平成15年(行ウ)第373号 損害賠償請求事件平成18年2月16日判決 http://www.tokyo-hirakawa.gr.jp/judge/j180216.html 「普通地方公共団体が契約を締結するに当たり競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが,競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において当該契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合には,上記契約の締結は,地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するというべきである。そして,上記のような場合に該当するか否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約の締結の方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である。(以上につき,最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁参照)」 東京地判平成5年2月25日判タ859号179頁判例自治122号64頁 「地方公共団体の締結する契約について例外的に随意契約の方法によることができることを定めた法二四二条二項を受けて、施行令一六七条の二第一項二号が随意契約の方法によることができる場合として「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」と規定していることからして、法が地方公共団体が契約をする場合には一般競争入札の方法によるべきことを原則としているものと解されることは原告らの主張するとおりである。しかし、右施行令の規定にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」とは、その文言等からしても、原告の主張するように契約の性質又は目的に照らして一般競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難である場合のみをいうものとまで限定的に解することは困難なものというべきである。」 横浜地判昭和58年11月14日(判タ521号229頁) 「本件売買契約が随意契約によつて行われたことは法二三四条二項、令一六七条の二の規定に違背する旨主張するが、本件売買契約は、既に本件覚書によつてその成立が当事者双方の法律上の義務として確定されているところであり、同覚書による契約が令一六七条の二第一項二号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当し、随意契約によらざるを得なかつたことは前記認定からも明らかであり、更に、これが完結のための本件売買契約においても随意契約の方式によることは当然の措置であつて、右規定に何ら違背するものでないことは明らかであるから、原告の右主張は採用しがたく、また、本件売買契約が右規定に違背することを前提とする原告のその余の主張は、判断するまでもなく、理由がない。」 2 学説 学説を見ると、平成6年最判に関する判例解説類(石井昇・法教177号74頁、櫻井敬子・地方自治判例百選第3版94頁、田中治・平成6年度重判44頁)は、不動産の売却か買入れかを問題とせずに、Aの要件だけを検討している。 碓井光明『公共契約法精義』(信山社、2005年)194以下は、この領域でもっとも詳しいものの一つであるが、この問題を解明するものではない。233頁ではコンペ方式の説明があるが、建物の設計、調達などでは妥当するものの、不動産の売却の場合にも妥当するとの説明は見あたらない。 『逐条研究地方自治法W』(敬文堂、2000年)315頁以下も、この問題を解明していない。ただ、その329頁では、公有地の随意契約による売却を公正に欠けるところはなく、適法とした判例があげられている(東京地判昭和45・1・19行集21巻1号1頁、静岡地判昭和51・4・1行集27巻4号489頁 秋田仁志・井上元『住民訴訟の上手な対処法[改訂増補版]』(民事法研究会、平成15年)264,276,304頁は、土地の払下げが随意契約によったことを適法とする判例を多数あげている。ただ、ここで、随意契約は不動産の売却には適用されないのではないかという視点からの分析はない。 関哲夫・判評439号=判時1534号38頁、原野翹・民商113巻6号936頁も、この点には注目していない。 四 私見を根拠づける文献 他方、次の文献は私見を裏付ける。 松本英昭『新版 逐条地方自治法<第3次改訂版>」(学陽書房、平成17年)796頁以下は、随意契約が許される場合を解説しているが、「『不動産の買入れ又は借入れ契約』は、一般的には普通地方公共団体が特定の土地又は家屋を買い入れ又は借り入れる必要がある場合に締結するものであり、このような契約は通常不特定多数人の参加を求めて競争により最低の価格で申込みをした者と契約を締結するというようなことは、まず考えられない。すなわち、不動産の買入れ又は借入れは、通常特定の相手方との折衝の結果、価格その他の条件が整った上で初めて契約を締結するのであり、これは随意契約の方法による場合の典型的な事例であって、このような契約は、その性質そのものが競争入札に適しない性格をもっているのである。 「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当する事例としては、例えば、 ア 普通地方公共団体の行為を秘密にする必要があるとき イ 運送又は保管させるとき ウ 農場、工場・・・の生産に係る物品を売り払うとき エ 非常災害による罹災者に普通地方公共団体の生産に係る建築材料を売り払うとき オ 罹災者・・・に災害の救助に必要な物件を売り払い又は貸し付けるとき カ 外国で契約を締結するとき キ 学術又は文化、芸術等の保護奨励のため必要な物件を売り払い又は貸し付けるとき ク 土地、建物・・・・を特別の縁故がある者に売り払い又は貸し付けるとき ケ 事業経営上の特別の必要に基づき、物品を買い入れ若しくは製造をさせ・・・・又は土地若しくは建物を借り入れるとき コ 公債、債権又は株式の買入又は売払いをするとき 等である。 とされている。 これから見ても、「その他の契約」のなかに不動産の売却が入るはずがないことは明らかであろう。 小林拡ほか『地方公共団体の財務管理―現代地方自治全集N』(ぎょうせい、昭和53年)388頁以下も同旨の説明をする。「その他の契約」については、「たとえば、契約の目的物が特定の者でなければできない場合、契約の目的物が特殊なものであるため買入先が特定され又は特殊技術を有する者でなければ製造できない場合、試験問題の印刷等のように特に秘密を要する場合、罹災者救護のため物品を売払い又は貸付けを行う場合等多くの事例が考えられる」としているが、不動産の売却は例とされていない。 田中宗孝ほか『自治行政講座3 地方公共団体の財務』(第一法規、昭和61年)590頁以下も同旨の説明をする。 最近の改正も私見を裏付ける。 地方自治法施行令の一部改正によって、随意契約の方法により契約を締結することができる場合の見直し(地方自治法施行令第167条の2第1項関係)が行われ、随意契約の方法により契約を締結することができる場合として、母子及び寡婦福祉法第6条第6項に規定する母子福祉団体が行う事業でその事業に使用される者が主として同項に規定する配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの及び同条第3項に規定する寡婦であるものに係る役務の提供を当該母子福祉団体から普通地方公共団体の規則で定める手続により受ける契約をするときが規定された。 これによって、当該母子福祉団体から役務の提供を受ける契約をするときは、一般競争入札や指名競争入札ではなく、随意契約の方法により契約を締結することができることとなった。例えば、清掃業務の委託契約等が対象となる。 このように随意契約できる場合は厳格に限定され、必要なら立法措置が執られる。解釈で補うことはできない。 五 まとめ 結局、冒頭にあげたような、不動産の売却をコンペ方式で行うことは明文の規定に反するから、明白に違法である。これに反して行われた売買契約は、財務会計法規に正面から違反するので、単に違法であるだけではなく、無効というべきであり、住民訴訟ではその違法を理由に(過失があれば)、売却をした首長に対して、自治体に損害額の支払いを求めよとの請求、その無効を理由に、契約に基づいて給付した土地の返還、登記抹消を(代金と交換に)求めることができる。 なお、不動産の売却においてもコンペ方式が望ましい場合があるなら、それは立法論であり、妥当する範囲と方法を精査して、自治法施行令改正によって対応すべきである。 意見提出者の略歴・著作等 1 略歴 1942年3月 福島市生れ 1960年3月 福島県立福島高校卒業 1964年3月 東京大学法学部卒業 1964年4月 東京大学法学部助手 1967年8月 神戸大学法学部助教授 1977年4月 神戸大学法学部教授 2000年4月 神戸大学大学院法学研究科教授 2005年4月 中央大学総合政策学部教授・弁護士(東京弁護士会) (現在に至る) 2 学位 東京大学法学博士 (1972年6月、論文博士) 3 主要著書 (単独著) 『フランス行政訴訟論』(有斐閣、1971年)(学位論文) 『行政救済の実効性』(弘文堂、1985年) 『事例解説行政法』(日本評論社、1987年) 『行政裁量と行政救済』(三省堂、1987年) 『国家補償法』(有斐閣、1988年) 『国土開発と環境保全』(日本評論社、1989年) 『行政法の解釈』(信山社、1990年) 『行政訴訟改革論』(有斐閣、1993年) 『政策法務からの提言』(日本評論社、1993年) 『大震災の法と政策』(日本評論社、1995年) 『政策法学の基本指針』(弘文堂、1996年) 『行政の法システム上・下[新版]』(有斐閣、1997年) 『〈論争・提案〉情報公開』(日本評論社、1997年) 『行政の法システム入門』(放送大学教育振興会、1998年) 『政策法学と自治条例』(信山社、1999年) 『定期借家のかしこい貸し方・借り方』(信山社、2000年) 『こんな法律は要らない』(東洋経済新報社、2000年) 『政策法学講座』(第一法規、2003年) 『内部告発(ホイッスルブロウワァー)の法的設計』(信山社、2003年) 『行政訴訟要件論』(弘文堂、2003年) 『行政書士の未来像』(信山社、2004年) 『行政法の解釈(2)』(信山社、2005年) 『やわらか頭の法戦略』(第一法規、2006年) (共編著・共同監修著) 『演習行政法上・下』(共編者、山田幸男、市原晶三郎)(青林書院、1979年) 『講義行政法I・U』(共編者、遠藤博也)(青林書院、1982年、1984年) 『判例コンメンタール 行政事件訴訟法』(共編者 山村恒年)(三省堂、1984年) 『定期借家権』(共編者、野村好弘、福井秀夫)(信山社、1998年) 『湖の環境と法−琵琶湖のほとりから−』(共編者、中村正久)(信山社、1999年) 『山村恒年先生古稀記念 環境法学の生成と未来』(共編者、水野武夫)(信山社、1999年) 『実務注釈定期借家法』(共編者、福井秀夫、久米良昭)(信山社、2000年) 『京都大学 井上教授事件』(信山社、2004年) 『環境法[第3版補訂版]』(共編者、淡路剛久)(有斐閣、2006年) 詳しくは、http://www.ne.jp/asahi/aduma/bigdragon/ 以上 |