事件番号 平成18年(行コ)第77号

控訴人:須藤甚一郎

被控訴人:東京都目黒区長

被控訴人補助参加人:薬師寺知子、薬師寺剛政、薬師寺秀幸

 

 

準 備 書 面 (1)

平成18年7月13日

 

東京高等裁判所第8民事部 御中

 

 

〒152−0034 東京都目黒区緑が丘1丁目****

控訴人  須

電話: 03−****−****

FAX: 03−****−****

 

 

第1 被控訴人答弁書に対する反論

 

1 はじめに

被控訴人答弁書の第1「控訴の趣旨に対する答弁」及び第2「控訴理由について」をすべて否認する。

 

2 答弁書に反論する

(1)被控訴人は、答弁書第2、1「はじめに」において、

「控訴人の主張は、要するに、本件における見積価格の最高値が111億1000万円であったにもかかわらず、実際に締結された売買契約(以下、「本件契約」という。)における代金が72億円であり、その差額が39億1000万円に上るのであるから、本件において随意契約の方法を採用したこと及び本件契約を締結したことが違法であるということに尽きる」として、つぎのごとく主張する。

「しかし、この主張は、随意契約によることができる場合に該当するか否かという問題と随意契約によるとした場合において誰を相手方に選定するかという問題を混同するものであり、失当である。すなわち、控訴人のいう価格差は、随意契約の相手方を決定するための公募に応じてなされた提案における見積価格の最高額と本件契約における価格との差額のことであるから、それが大きいことの故に、本件が随意契約の方法によることができない場合に該当するというのは、論理が逆転しているのである」

 被控訴人のこの主張は、原判決の判断に基づいたものである。控訴人は、控訴理由書「はじめに」及び第2、2(1)において詳述したが、たとえ随意契約採用の条件を備えていたとしても、本件売却は契約価格が裁量の範囲を逸脱しており違法である。さらに、控訴人は控訴理由書第2、2(2)で述べた通り、随意契約採用の条件を十分に具備したものであるとはいえないのである。また、随意契約を採用しておきながら、審査委員会の売却先選定の過程、評価基準など、契約までの経過において数多くの瑕疵があったのである。そのことについて、控訴人は原審で、証拠に基づいて再三主張した。

被控訴人の主張は、随意契約を採用できる条件さえ具備していれば、地方公共団体である目黒区の利益の増進を考慮せずに、価格はいくらで契約を締結しても構わないとする論法である。このことこそ、失当である。

そもそも被控訴人のこうした的外れの論法は、契約額72億円の54.3%にも相当する39億1000万円もの価格の犠牲を「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」(最高裁判例、昭和62年3月20日第二小法廷)に該当するとした、当該最高裁判例の曲解に起因するものである。当該最高裁判例は、福江市のごみ処理施設の建設工事請負契約に関しての随意契約の事案であり、価格の犠牲は契約額5500万円に対して650万円、価格の犠牲は契約額のわずか11.8%である。当該最高裁判例が判示した「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」を本件契約に適用できないことは自明である。39億1000万円もの価格の有利性の犠牲は、「多少とも」といえる範囲を超えており、合理的な裁量の範囲を逸脱している。

被控訴人は、39億1000万円の価格差について「見積価格の最高額と本件契約における価格との差額のことであるから、それが大きいことの故に、本件が随意契約の方法によることができない場合に該当するというのは論理が逆転しているのである」と主張する。しかし、控訴人の主張には、何ら「論理の逆転」はないのである。その理由を述べる。

当該最高裁判例は、福江市がごみ処理施設建設で随意契約を採用し、最低見積価格4850万円の業者を契約相手とせず、650万円の価格の犠牲がある業者と契約した具体的な事件について判断したものである。つまり、随意契約が採用できる条件のみを判断した判例ではなく、随意契約採用から契約締結の結果までを一連のものとして捉えて、その結果、「当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても、普通地方公共団体において当該契約の目的、内容に照らしそれに相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約を締結するという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極に達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も同項一号に掲げる場合に該当すると解するべきである」と判示しているのである。

あくまで価格の有利性の犠牲は、「多少とも価格の有利性を犠牲」にする範囲内なのである。そのことが大前提である。ところが、被控訴人の主張は、「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果」を恣意的に拡大解釈し、随意契約を採用すれば、価格の有利性の犠牲、すなわち価格差は、無限定に認められるとする何ら根拠のない主張である。要するに、被控訴人の主張は、随意契約を採用できれば、当該最高裁判例に言う契約の性質、目的を究極的に達成する妥当性、地方公共団体の利益の増進などを無視し、契約価格は売却予定価格を超過していれば、いくらでも構わないという論法である。本件契約の目的は、区財政の逼迫時における庁舎移転費用の捻出であった。また、より高く売却できれば、庁舎移転費用以外に目黒区の利益の増進につながったのである。随意契約の方法を採用しても、当該最高裁判例で判示しているように「諸般の事情を考慮して当該普通公共団体の契約担当者の合理的な判断により決定されるべきものと解するのが相当である」。しかし、本件売却にあたり、契約担当者である亡藥師寺克一は、合理的判断をしなかったのである。

ここで念を押しておく。当該最高裁判例で「当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」と判示していることから明らかなように、随意契約を採用できる場合のみをいっているのではなく、「犠牲にする結果になるとしても」と“結果”の文言を使用しているのは、随意契約による契約締結の結果をいっているのである。契約締結後の結果において、「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も随意契約を採用できる場合に該当するものとしているのである。

随意契約の採用を決めるときには、価格の有利性の犠牲の有無は予測できないのであるから、「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果」が判明するのは、いうまでもなく契約締結後である。随意契約を採用できる条件と随意契約の結果を混同した原判決の判断と被控訴人の主張は、そのことを正確に理解していないのが原因である。

 

(2)被控訴人は、答弁書、第2、2「原判決の争点整理について」において、

「控訴人は、39億1000万円の価格の有利性を適正に考慮することなく売却したことが違法であるという控訴人の主張が原判決の争点整理に含まれていないと非難するが、それは原判決が整理する争点の「(3)目黒区が本件土地を本件会社に72億円で売却したことが違法であるか否か」に含まれ、そこで適正に判断が示されているのであるから、その非難には理由がない」と主張する。

しかし、控訴人が控訴理由書、第2、3「3 争点整理(3)についての誤り」(1)ないし(4)で詳述したように、39億1000万円の価格の有利性を適正に考慮することなく売却したことが違法であるとする控訴人の主張は、上記の争点整理に含まれておらず、判断を遺脱しているというべきである。控訴理由書で述べたことの繰り返しは避けるが、改めていっておくべきことがある。

 39億1000万円もの価格の有利性を犠牲にする結果になった審査委員会の順位付けは、とうてい審査委員会の裁量の範囲といえるものではない。審査委員会は、審査するにあたり最初から最後まで、価格差を跡地利用の提案内容差を比較考量することを一切しなかったのである。また、原判決は、亡藥師寺が39億1000万円の価格の犠牲を発生させる契約をしたことについて、裁量の範囲内ということができる、と判断した。しかし、亡藥師寺は、審査委員会が1位に順位付けした本件会社と売却方法の規定に従って契約しただけであり、上記最高裁判例にある「契約締結の方法に制限を加えている前記法及び令の趣旨を勘案し、個々具体的な契約ごとに、当該契約の種類、内容、性質、目的等諸般の事情を考量して当該普通公共団体の契約担当者の合理的判断により決定されるべきものと解するのが相当である」との行為を行った証拠はないのである。

 審査委員会の審査委員であった鈴木勝は証人尋問で、亡藥師寺には審査委員会の順位付け結果を簡単に報告したのみで、詳細は報告しなかった旨の証言をした。39億1000万円もの価格の有利性を犠牲にしておきながら、審査委員会も契約担当者である亡藥師寺も、本件会社の提案内容が価格の有利性の犠牲に匹敵、あるいは補って余りあるか否かの検討はまったくしなかったのである。したがって、契約は裁量権を逸脱し、違法である。そのことについて、原判決は判断していないのである。

 ちなみに、判決理由「3 争点(3)について」(2)キ(18頁)に、本件会社の提案内容が記されており、「A100tの防火水槽の設置や防災用備蓄倉庫のスペースの確保などの地域防災方法を提示しており」とある。審査委員会は、そのことも評価して、1位に順位付けした。原審の判決理由でも、防火水槽の提案を挙げている。けれど、本件会社の集合住宅が完成したあと、控訴人が区の契約課に確認したところ、100tの防火水槽については、本件会社は新しく設置することをせず、旧区役所本庁舎地下に埋められていた防火水槽をそのまま使用したことが判明した。

本件会社は100tの防火水槽を設置する費用を浮かしたわけである。したがって、実際の価格の有利性の犠牲は、39億1000万円にとどまらず、さらに大きくなった。価格の犠牲の拡大もさることながら、本件会社は、自ら提案した内容を忠実に履行しなかったのである。被控訴人は、その事実を知りながら、防火水槽設置費用相当分を返還させることをしないのである。

 

(3)被控訴人は、答弁書、第2、3「本案前の判断について」において、「住民訴訟において先行行為、先々行行為の違法性が問題にされるのは、それが財務会計上の行為の適法性に影響を与える(財務会計上の行為を違法とする)限りにおいてであり、先行行為、先々行行為の違法性が独立した請求原因となるわけではない」と主張する。また、被控訴人は、佐々木英和、安田直史、大塩晃雄、川島輝幸及び木村高久は、「本件契約の締結に関する権限は何もないのであるから、本件訴えにおいては「当該職員」該当しないことになる」「これらの者に対して損害賠償を求める訴えは不適法とならざるを得ない」と主張する。

 しかし、上記の二つの主張は、ともに的外れの主張といわざるを得ない。控訴人は、控訴理由書、第2、1「1 原判決「1 争点(1)について」の誤り」で詳述したので、繰り返しを避ける。が、佐々木ら本件区幹部が、亡藥師寺とともに政策会議で随意契約採用を決定し、さらに佐々木らは本件会社を1位に順位付けした審査委員会の構成員であり、最終的に政策会議で再び亡藥師寺とともに価格の有利性を無視し、本件会社を売却先に決定した行為は、それだけで違法というべきである。また、佐々木らの行為はいずれも、亡藥師寺が行った違法な財務会計行為である本件契約締結の先々行行為及び先行行為に該当する。

 佐々木ら本件区幹部の先々行行為及び先行行為なくしては、目黒区長であった亡藥師寺は、本件契約は締結できなかったのである。改めていうが、佐々木ら本件区幹部は、違法な本件契約の実質的意思決定関与者であり、違法な財務会計行為である本件契約締結の共同責任を負う立場にある。

 

(4)ア 被控訴人は、答弁書、第2、4「随意契約によったことの適法性」において、「控訴人が主張する39億1000万円の価格差は随意契約の手続きを進める中で現れたものであり、随意契約によることができるか否かを検討する過程においては、どのような価格が提案されるかは全く不明なのであるから、そのような価格差を考慮する余地はない。控訴人の論法によれば、随意契約の結果が出てから、当該契約を競争入札によるか随意契約によるかを決めなければならないこととなるのであり、論理矛盾という外はない」と主張する。

 この被控訴人の主張は、本件契約における随意契約採用から契約締結までの事実を歪曲した暴論というべきである。被控訴人は「控訴人の主張する39億円1000万円の価格差は随意契約の手続きを進める中で現れたものであり」と、39億1000万円もの価格の犠牲が、あたかも自然発生したかのごとく主張するのは、詭弁といわざるを得ない。

 本件土地売却は、区財政難時に庁舎移転費用を捻出するためであったのだから、売却先の選定にあたっては、価格の有利性を終始念頭におくべきであったのは、改めていうまでもないことである。しかし、公募された提案を審査し、順位付けした審査委員会が価格を軽視し、価格の有利性を十分に考慮せずに審査した結果、39億1000万円もの価格の有利性の犠牲が生じたのである。まるで他人事のように「随意契約の手続きを進める中で現れたものであり」と主張するのは、無責任そのものである。

 このように巨額な価格の有利性の犠牲が生じた原因は、明らかである。まず挙げられるのは、審査委員会での極端な価格軽視である。価格の有利性では一番であった111億1000万円の価格を提示した業者の提案について、価格抜きの一次審査で落選させ、価格を含む二次審査の対象にすらしなかったのである。また、審査対象になった58億1780万円から111億1000万円の14件の見積(甲1号証、事実証明書1参照)が提出されたあとに、価格の評価基準が予定価格を超過する1億円=0.1点とした。この評価基準の価格軽視の不合理さについて、控訴人は控訴理由書で述べた。

 さらに、審査委員会の選考過程おいて、価格と提案内容を比較考量することをしなかったために、39億1000万円もの価格の有利性の犠牲が生じたのである。応募要領で買受者は審査委員会が順位付けをして決めるとしていたのだから、審査委員会は最高裁判例の「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」「普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合」に基づいて順位付けすべきであった。が、審査委員会は、価格の有利性の犠牲の度合いと利益の増進につながるか否かの審査をまったくしなかったのである。随意契約を採用したのだから、契約締結以前に111億1000万円を提示した業者と交渉し、価格の有利性を確保して、行政目的と周辺住環境により調和した提案に変更させることも可能であった。けれど、価格の有利性を適正に生かすことはしなかった。こうした違法、不当や瑕疵だらけの随意契約の手続きを進める中で、39億1000万円もの価格の有利性の犠牲が現れたのである。

 

イ ほかにも「控訴人の論法によれば、随意契約の結果が出てから、当該契約を競争入札によるか随意契約によるかを決めなければならないことになるのであり、論理矛盾という外ない」と被控訴人は主張する。この主張は、失当であり論外というしかない。

 被控訴人は、随意契約採用と契約締結の結果を分離するから、こうした的外れの主張になるのである。被控訴人の論法は、何度もいうが、随意契約を採用すれば、売却価格はいくらであっても構わないというものである。そもそも随意契約が適法であったか否かは、最高裁判例に基づいて随意契約採用から契約締結までを一連のものとして判断されるべきものである。

仮に随意契約の方法を採用できる場合であっても、契約締結の内容が本件契約のように、不合理に価格の有利性を犠牲にした契約は裁量の範囲を逸脱し、違法である。しかし、本件契約においては、随意契約を採用しなくても、一般競争入札に行政目的に合った条件を付して、条件付一般競争入札を採用すれば、価格の競争原理も働き、一石二鳥で有利であったのである。控訴人がこれまで主張してきたのは、たとえ随意契約を採用しても、価格と提案内容を比較考量して、合理的な判断をした契約内容ならば、適法であるが、本件契約はそうではないから、違法であるとしているのである。控訴人の主張には、何ら論理矛盾はないはずである。

 

(5)被控訴人は、答弁書、第2、5「本件契約の価格が適正であることについて」において、「本件土地の代金を72億円とする本件契約の締結が適法であることは原判決が説示するとおりであるが」として、売却先を選定するため、審査委員会が設置され、適正な審議がなされたことは、原審における被告の準備書面(5)第2,2及び第3で述べた通りであると主張する。が、適正な審議が行われたと判断できるものではない。

 72億円で本件契約が締結された違法であること、審査委員会が適正な審査を行わなかったことについては、控訴人は原審において、証拠に基づき再三主張した通りである。また、控訴理由書でも述べた通りである。

 

第2 被控訴人補助参加人の答弁書及び準備書面(1)に対する反論

 

1 はじめに

被控訴人補助参加人の答弁書及び準備書面(1)をすべて否認する。

 

2 準備書面(1)に反論する

(1)補助参加人らは、「第1 控訴理由書に対する反論」(3)において、「控訴人は、原判決は、目黒区の財政状況が逼迫していたときの調査(庁舎の誤り)移転費用捻出のための本件土地の売却であったことを考慮していない、本件土地売却が価格の有利性を犠牲にしても、それ以上に普通地方公共団体の利益の増進に寄与するものであるかの検証を一切していないと原判決を非難する」として、「前者については、原判決第3、2、(3)アにおいて「区有地の売却想定額として120億円」等と指摘されているように、原判決は本件売却目的を把握した上で判断している」と主張する。

 区有地の売却想定額120億円は、売却予定価格を合算した単なる目安でしかなく、何ら根拠になるものではんない。最高見積価格が111億1000万円、2番目の見積価格が83億円であったが、審査委員会が財政逼迫時の財源捻出にもかかわらず、価格の有利性を適正に考慮することなく、見積価格72億円の本件会社を売却先に選定した。原審の判断は、審査過程の事実誤認に基づくものであることは、控訴人が控訴理由書で指摘した通りである。

 また、価格の有利性を犠牲にしても、それ以上に地方公共団体の利益の増進に寄与するものであるかの検証を一切していないという控訴人の主張に対して、補助参加人らは「原判決第3、3において十分に検討されており、このような控訴人の批判は当らない」と主張する。しかし、審査委員会も本件契約の契約者であった亡藥師寺も、価格を犠牲にして、どのような利益の増進に寄与するのかを検討した証拠も主張も存在しない。原判決は、事実認定の誤りに基づくものである。

 

(2)補助参加人らは、「2 随意契約の採用の適法性(争点@)について」(1)において、最高裁判決(昭和62年3月20日第二小法廷)を引用する。そして、(2)で「随意契約採否について判断した前掲最高裁判例が問題としているのは、地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断されるか否かであり、締結された契約における具体的な金額差ではない」と主張する。が、この主張は的外れである。

 なぜならば、補助参加人らは、引用した最高裁判例中に「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても」とあり、金額差に制限を付しているのである。補助参加人らは「具体的な金額差ではない」というが、本件契約のごとく39億1000万円もの金額差は、とうてい「多少とも」といえる金額差ではなく違法である。

 補助参加人らは、最高裁判例中にある「多少とも価格の有利性を犠牲にする結果」の重要さに気づいていないのか、あるいは故意に黙殺したのか、いずれにしても主張は失当といわざるを得ない。

 また、補助参加人らは、随意契約を採用しても、金額差があれば後日、一般競争入札にしなければならないのなら、地方自治法施行令で定めた随意契約の存在意義が失われると主張する。この主張は、被控訴人を同様に、随意契約を採用すれば売却価格、金額差はいくらであっても構わないとする誤った論法である。随意契約採用と随意契約による契約締結内容を分離するから、このような間違いが起きるのである。控訴人が、被控訴人の答弁書に対する反論で述べた通り、随意契約は採用から契約締結まで一連のものであり、最高裁判例にある「多少とも」価格の有利性を犠牲にしても、利益の増進に寄与する場合にのみ適法となるのである。本件契約のように、合理的な判断をせずに39億1000万円もの価格の有利性を犠牲にした随意契約は違法である。

 

(3)補助参加人らは、2(3)において、亡藥師寺が本件契約について個々具体的に諸般の事情を考慮し合理的に判断したとはいえない等とする控訴人の主張に対して「審査委員会が時間と労力をかけて審査を行っている以上、個々具体的に諸般の事情を考慮して合理的に判断したといえないということは的を射ないばかりか、そもそも隋意契約採否において、売却方法採用後の事情が考慮されるものではなくこのような批判が当らないことは、上記と同様である」と主張する。

 この主張のとくに下線部分は、暴論といわざるを得ない。下線部分に反論する前に、亡藥師寺は審査委員ではなかったが、審査委員会が時間と労力をかけて審査を行ったので、亡藥師寺は個々具体的に諸般の事情を考慮して合理的に判断したとする主張に反論する。

 亡藥師寺は、審査委員会が1位に順位付けした本件会社と応募要領に従って契約しただけである。審査委員会の審査の過程が、不当であったことについては、控訴人が原審及び控訴理由書で述べた通りである。諸般の事情を考慮して審査したといえるものではない。亡藥師寺は、区長として本件契約を締結するにあたって、独自に合理的な判断をした証拠も主張もない。最終的に区の行財政方針を決定する政策会議で売却先を決定したが、その会議録にも亡藥師寺が諸般の事情を考慮して合理的に判断した記載はないのである。

 「そもそも、随意契約採否において、売却方法採用後の事情が考慮されるものではなく」の主張は、ただ驚愕するばかりである。随意契約ができるか否かを判断するときに、売却方法採用後とは、つまり随意契約による売却方法採用後という意味であるが、売却方法後の事情を考慮するものではないというのだ。本件土地は、区有地であり、目黒区の土地である。亡藥師寺は区長として、区民の負託を受け、執行機関の長として区民のために管理・運営していたのである。その土地を売却するにあたり、随意契約の採否を判断するときに、審査委員会がどんな審査をし、価格の有利性を生かして売却し、目黒区の利益の増進を図るかなどの事情が考慮されるものでないという主張である。まさに暴論である。

 重ねて言う。随意契約は、随意契約採用から契約締結まで一連のものであり、さもなければ、最高裁判例にある利益の増進につながらない。随意契約を採用すれば、その後はどんな事情で売却しても構わないとしたために、39億1000万円もの価格の有利性を犠牲にする本件契約が締結されたというべきである。

(4)補助参加人らは、準備書面(1)2(4)、3(1)(2)、4、において、主張することは、いずれも原判決の判断に基づいたものである。原判決は控訴訴人が控訴理由書で述べた通り、事実認定の誤り、最高裁判例と法令の解釈を誤っており、補助参加人らの主張を認める理由がない。

 

                              以上