もしも
俺が植物人間になったら
一先ず一思いに殺してくれ
それが俺の願いだ
そして棺桶に入れる時は
俺の書いてきた詩集と鉛筆と下書きと辞書を
添えてくれ
それから蓋をしたらその蓋に
こんな詩を掘り込んでくれ
―――私は一つの詩人になれた
私は一つの風に触れた
私は一つの炎に会えた
私は一つの夢に溶けた
私は一つの自然に帰れた
私は一つの空になれた
そして私は全ての本質を見抜く力を手に入れた
もう泪もいらない
もう心もいらない
もう何もいらない
そう無一文でもかまわない
ひたすらに灰になっても歩き続ける
私は輪廻の中で―――
もう思い残す事は何もない
だから俺が植物人間になったら
一先ず一思いに殺してくれ
それが俺の願いだ
だらだら生きてきた俺の
最後の願いだ