響き渡る蜩の
物悲しい慟哭は
暑き季節の
清浄を称え
夜風は緩く
忘れ去られた山案山子
別れたはずの旅鳥と
密やかな思い出話
白々と明けはじめる朝方に
雉の鳴く声少し悲しく
朝月に隠れ消える
夢を重ね
蜃気楼の夢の残骸
(遥か遠方の舞踏会)
陽炎の淡い恋話
(揺れては生まれ消えては悲し)
薄羽陽炎の華やかな泪
(恋の遊戯や愛の輪廻よ)
空に咲く空中花の色話
(繊細と豪傑が入り混じる)
血を求めて飛び交う蟲の最後の晩餐
(生命の強暴さの祭典)
消えかかる命の形にも似た彼岸花の誘い
(三途の渡し舟は華やかを極め)
水田には光の乱舞
(蛍花は夢見心地で)
(嬉しや嬉し 夏模様)
滴る汗に置去りの
光輝く童心の約束
消えかかる記憶に少し
恨みながらも苦笑い
歩きながら感じる郷愁感
緑だった稲穂も少しづつ黄金の絨毯に変わり
己の成長と重ね その進歩の無さに
まだまだ酒の肴にはならないと
ただただ笑う
ここが自慢の夏季限定散歩道
夏の暑さも忘れつつ
何時までも歩き続けられるのは
想い出に埋もれ行く過去からの恍惚感の誘いか
現実から逃れようと躍起になった己への嘲笑のせいか
歩きながら含み笑い
煙草を燻らし
煙の行方追いながら
流れ落ちる泪に
夕暮れ時の涼しさを
少しだけ交差させて
明日もまた蜩の声 響く中
世捨て人の様に
静かにふらふらと
歩いて行く
行先は自由奔放な風の声を訊きながら