終電のせいで
別れなければならない恋人たちは
冬の夜を熱くしてしまう程に
抱擁しては指を絡ませたり
接吻しては視線の絡み合いを楽しんだり
男は お前と一夜と言えども離れたくない と言い
女は 貴方を一夜だけでも独りにしたくない と言う
美しすぎる冬の恋人たちに
いや 別れる切なさに彩られたその風景に
冬の夜風が一役買って
あまりにも眩しすぎるから
行き交う人々は そそくさと
歩く速度が早くなる
素直に羨ましいと思った
別れる切なさ いじらしい程に絡み合う視線は
恋人たちのためにあって
独り身ではただの喜劇
たぶん何百年先 別れ際とはきっと
恋人たちを熱くさせ
さらに愛情をより深くし
素敵な思い出の一幕となるのだろう
そう思えたから
素直に羨ましいと思った
野次を飛ばさず見守りたいと思った
なんとなくこのまま一生俺は
傍観者でもいいと思えた