◎救急車

この街は
一日に一回以上
救急車が走るから
とても
心がすさむんだ

耐え切れぬ苦痛の声を
尊い命が 常世と現世を右往左往しながら
激しく叫ぶから
私はすれ違うたびに
唇を噛む事しか
出来ない

命はどんなに入れ物が強靭でも
消えかける蝋燭の火の如く
儚く弱く
残された者の声すら聞き取れぬまま
滅していく

私はすれ違うたびに
心を痛める事しか出来ない

希望ある世界を求む
夢のある現実を求む

この街は
一日に一回以上
救急車が走るから
誰もがやるせない気持ちを抱えて
歩いてゆくんだ

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