◎くぎり

気が付けば 知らず知らずのうちに
喜びや悲しみや怒りや愛を
不安定に吐き出し続けてきた

一人善がりの小さな世界の中で
胸を張り嬉々として謳い続けながら

答えを求める日々でもあり  (または賞賛を)
私全てを否定する日々でもあり(または格好付けのために)

駆け抜けてきた諸々の駄作な詩を擦り抜けて
まだまだ満足するはずもない
少し壊れた思考を抱え
今度は 恥をも恐れぬ新たな詩の扉を
何食わぬ顔で 抉じ開けようとしている

保身に魅せられて
見栄に抱きしめられて

もっと高みへと言う言葉はすでに世界の流れや
人の目によってどんどん侵食され
私は私が一番憎むべき冷たく詰まらない化石に成り下がろうとしている
(もっと高みへ もっと高みへ)

区切りをつけようじゃないか

例えそれが
最上の孤独を招く結果になろうとも
全ては 陰鬱で妖艶で崇高に腐り掛けた
私らしい文字の極みを
さらにさらに磨き上げる為に

気が付けば 知らず知らずのうちに
喜びや悲しみや怒りや愛を
ただの遊び道具のように
言葉へと錬成し始めていた

見逃せない事実
そろそろ
区切りをつけようじゃないか

私は私なりに世界の中心や感情の坩堝を泳いでいるつもりでいたが
実の所 私の周りだけが激しく動いていただけで
実の所 惰性に飲まれて胡座をかいている私がいて
実の所 ただ産み落としていただけだった

輝きもしない化石になる前に
俄か詩人になる前に
独り善がりな世界に身を取られる前に

私は私なりに今の私を殺して沈黙の岩窟に身を潜め
壁から染み出る極上の水滴を啜りながら
新たな夜更けに羽化する事を求め 夢に見ながら
新風を纏った蝶になる事を目指そう

そろそろ いい頃合い
区切りをつけようじゃないか

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