あ
◎旻天の空にからかわれ

秋風軟い紅の刻
赤蜻蛉がほろほろと　向かう姿が
どこか滑稽に見え
すすきの穂で追いかけた

鴉が鳴くから　夕暮れでなくて
夕暮れだから　鴉が鳴くと
穿ってみても秋桜
そよそよ風に　吹かれます

田んぼは黄金
柿が熟れ　栗が落ち
夏とは違う秋の匂いの中
一人で　歩く

稲穂の波を掻き分け掻き分け
目指すは老木　旧友の友　古参の桜
華も無く葉も無く　寂しい限りで見素簿らしい事
この上ないのに
何故か心に春の風景　乱れる華
目眩を覚えた　高い空の下

一人で歩く
田舎道　畦道　獣道

心に流れる
ある秋の日に置いてきた
淡い恋心　と
焼けた薩摩芋

干し柿　噛み噛み
小川のせぜらぎ　行進曲に
どこまで歩く？
秋の空　上の空　やはり男心と秋の空か

今日も　一人で歩きながら
秋風に絡まれ
鳶の回旋に　目を回す