◎他動と自動の分厚い紙一重

流れ出る自動書記
躓き続ける他動書記

どちらも
言葉の出所は同じな筈なのに
他動の雄弁に語る勢いは既になく
自動に勝るものはなく

少し日陰な他動を
どこかに置いてきた
幼い日々の約定と
あの熱い熱情と共に

あの頃は他動する事が尊く
自動をどこか忌み嫌い
言葉を練った幾星霜

何時の間にか時は流れ
身も心も流れ
文明の風を身に纏い
日々薄れていく感覚を繋ぎ止めるよう
済し崩し的に自動に開眼

何時の間にか
他動の快感を忘れつつ
今日もどこか
何かを無くしながら
言葉を綴る

哀れ 他動が紡ぎ出す
言葉の張り詰めた緊張感に
どこか身構え どこか臆して
自由に物を見れなくなった
自由に感覚を綴れなくなった

この紙一重
(僅か一文字の差 或いは一文字分の十億年の選び違い)
雄弁に語るは
詩力の綻びまたは
詩力の砂漠化か

何時かこの紙一重
突き破れる事を願いつつ
今日も自動に身を任せ
言葉を紡ぎ続けてる

この詩に感想を書く          一つ上に戻る