◎雷鳴

壮絶なる華厳を
莫大なる音に擦り合わせて

雷鳴が轟く

風が怯え逃げ惑い
雨は天から逃亡を図り
鳥は怯えて羽の下に顔を埋め
獣は伏せて四肢を丸める

雷鳴が轟く

しかし人は
嗚呼 刹那の芸術と
空を見るのは何故なのか

雷鳴が轟く

空気を破るその打撃に
世界を威嚇する怒号に
激しく心は奮え
激しく心は奪われ
光の残像を眺めては
その美しさに身を捩る

雷鳴が轟く

雷鳴が轟く

雷鳴が轟く

嗚呼 ここに独り
雨に濡れる男が叫ぶ

雷鳴の如くに一瞬の美を命に刻み
雷鳴の如くに一瞬の美を
書き表したいと

そして また
雷鳴が轟く

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