風が涕いている
陽光は既に大地に飲み込まれ
気高き夜の衛星が
生命の根元の幸福を受け止め
煌煌と全てを優しく包み始めた
俄かに鳴く夜飛鳥の調べ
草木は徐に 葉を畳み
雲は無限の空へと旅を始めた
永遠に感じる夜のしじまに
香り出す 百合の華
誘われる様に夜霧が包み
花粉を吸い取った
山から下りる風に煽られ
枯れ葉 さりさりとざわめき
その住処の蟲達が慌てて逃げ惑う
雪の匂い 微かに流れて
水面に貼った薄い氷
その下で緩やかに泳ぐ
銀の翡翠の艶やかな舞い
新たな命の真珠達の祝いの宴
冬と言う名の鮮烈な寒さに
止めど無く立ち向かう人々の思い
自然が何も知るはずもなく
ただただ長い長い歴史の一点として
優しく抱擁 そこに
曖昧に流れる愛の調べは
なんとも儚き葉擦れの様
大地は凍り 闇は深く
生きとし生ける物全て
呼吸は浅く 吐く息は白く
ただ悪戯に 寒さに生命が
支配されない様にと
身を震わせる
厳格なるこの冬の強さが
新たな生命の淘汰と
その主張を包み込みながら
尊い世界を包む時
微かに燃えるその命
螺旋の全てを乗り越えて
喜びを伝える
生きる喜びと
死んで行く悲しみと
繋がって行く記憶と生命の回旋曲
響いて響いて共鳴して
厳かに伝える
誰も知らない誰かの胸に