◎空しい林檎

何もない空っぽの僕は
何時までたっても熟れる事もなく
目の前の大地にさえ
種を落とす事もなく

さめざめと涕く空がいるのに
一緒に涕けない僕ですので
どうか今日も廃棄の為にもぎ取らないで
そっと見守って下さい

中身も無く種も無く
果汁すら不味くしかも軽く

だけど傷はこの前
付けられました
突然の裏切り
それは雹の優しい隠れた爪

でもどうか
腐りもしないこの体
早く腐れよと願わないで
静かに孤独に苛まされながら
所詮独りで揺れるしか
ないのですから

隣の幹では赤く色付き
手前の幹ではもう落ちそう
でも僕はどこか甘い夢を見ながらも
現実で醜態を晒しているから
熟れたいと暴言的な事は言えないのです
食べられたいと虚言を吐けないのです

空しさが栄養だなんて
なかなか素直に思えない僕ですから
どうしても少しだけ
栄養失調の苦い実を想像しながら
昨日の夢の中で誰かに
齧られる幸福を認められなくて

だから今日も静かに
醜すぎる美しい太陽に
愛を囁きながら
ひらりひらりと
成長と言う名の淡い夢を
蹴ったりするのです
なけなしの強がりと共に

中身も無く種もなく
果汁すら不味くしかも軽く
そうして捨てられたいと願いながら
少しはでもだけどやっぱり
赤々と熟れたいと密かに思う
素直じゃない僕だったりするんです

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