人の流れに惑いながら
散り積もる雪の様に
淡い桜貝の様な
小さな小さな花弁を
零して
春雷
まだ気配は遠く
震える花弁
美しい刹那を
去来する春の終わりに
そっとかざして
闇夜に浮かぶ
名残華
幾年月の間
変らない季節の
輪廻を仰ぎながら
朽ち果て土に返る同士を
そっと包む
上に上に
人は流れ
時間が流れ
零れ始める怠惰な情緒
時の流れと共に
零した花弁の憂鬱が
今年も柔らかく
降り積もる
小鳥の囀りと共に
小川のせせらぎと共に
人の愛の囁きと共に
春遠夢儚 春は遠く夢は儚く
孤独示場 孤独が示す場
吐息白冷 吐く息は白く冷たく
今未蕾桜 今は未だ蕾の桜
心叩春誘 心を叩く春の誘い
平平頭垂 平に平に頭を垂れる
自然回帰 自然に回帰
魂回帰望 魂は回帰を望み
寒空身晒 寒空に身を晒し
生様花弁 生き様に花弁
重続花弁 重ね続ける花弁
命弱時待 命弱くして時を待つ
花弁流方 花弁の流るる方へ
花弁流方 花弁の流るる方へ