◎おくら

刻まれて粘り
粘っては醤油

日本人に馴染み深い
命の香の螺旋の実と行為

鰹節が惰性で
小鉢が小さくて
口が緩やか

だからどうか
咀嚼をやめないで

粘り気のある
未来に目を伏せず
腐りだした過去の陰鬱に
舌を出さずに

今はただ
日本人の性を求めて

(ほら掻き混ぜる快感と
 ほら啜る嫌悪感の狭間で
 忘れかけている侍気質の扉を開いて
 日本人である事に
 誇りを持って
 誇りを持って
 埃を被って)

緑の願望を
ほら噛み砕いて噛み砕いて
舵取りを忘れた平成時代を眺めながら
静かに小鉢に接吻を

刻まれて粘り
粘っては醤油
侍気質を求めて
今日も啜る

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