◎詩刀を抱えて

声が薄くなっていく
心が悲鳴を広げてく
見えない恐れが包み行く
私は私の何かが薄れていくのが
とても怖くてとても悲しくて
ただ立ち尽くす
(私の刀は曇りだした)

光が薄くなっていく
泪が軽くなっていく
掴めない寂しさが縛ってく
私は私の何かが消えかけていくのが
とても許せなくてとても冷たくて
ただ精神の末端を
磨り減らす
(私の刀は曇りだした)

向き合う事が怖くて
見詰める事から逃げたくて
信念すら雑念に変わって
迸る熱情も
冷静に変化して

滴り落ちる水のように
心から流れ出る言葉に触れて
突き詰める快感と
突き進む羅刹の憤怒を求めながら
(或いは私の十億年先に帰依しながら)
(私の刀は曇りだした)
突き飛ばす己の弱さに牙を立て
そんな事が当たり前に出来なくて
打ち寄せる惰性にばかり
寄り添って

回転する激情に
爆裂する情緒と真偽の理を
生ぬるくかわしながら
見え隠れする本能に
なかなか辿り着けなくて

この憂いがただの飾りになる前に
この憂いを力強い光に変えたい

願うは一筋の修羅道
誘うは広大な心の気概
捨てるのは既成概念
壊すのは曖昧な防御

叫びは常に真実だった 叫びは常に外敵だった
叫びは常に濁流だった 叫びは常に内敵だった
叫びは常に鏡面だった 叫びは常に小生だった

(私は激しく嗚咽しながら
 凍えていく脳髄に問い掛け続けて
 見えなくなっていく感覚に
 臍を噛んだまま
 立ち止まりたくなくて)

何かに向かいながら
私は懐の刀を握り締めながら
それを包み隠して
歩いていく
それを使う時が
光り輝く流星の極みに
なる日を信じながら

声が声である前に
心が心である前に
叩きつける気違い染みた
私の本能に今一度近づくまで
黙と静を噛み締めて
ただ凍る(溶け出す熱情を為ながら)
ただ凍る(迸る熱情を抱えながら)
ただ黙すただ黙す

何時でも喉元に
抜き身の刀を宛がいながら
何時でも心に
私の刀が光り輝けるように

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