白蝶が飛んだ日
私は一緒に飛べなくて
蒼蝶が逝った日
私は一緒に逝けなかった
あの日に思いを巡らせるのは
至極 簡単で
あの日に感じた悲しみを思い出すのは
至極 簡単で
何度も何度も繰り返し
思い出す悲しみに
泪する自分が悔しくて
未だに私らしく
歩けない
乗り越えるには力が足りないと
痛感したのは悪夢が踊る深夜二時
あの日どうして私は
手を差し伸べられなかったのだろう
悔やみながら今日もずるずると
赤裸々に 欲望のままに
生き延びる
白蝶も蒼蝶も
もうこの世にいないと言うのに
私は新たな生活を
始めていると言うのに
愛する者はいつだって
この手の隙間から零れ素早く落下して行くから
どうか どうか 今度こそ
紅蝶を零さぬように
包み込んで
歩いていきたい
飛んだ白蝶も
逝った蒼蝶も
全てを過去の痛みとして
心の隙間に補完するのではなく
全てを抱き締めしっかりと
胸に収め生きる糧に変換して
そうして
紅蝶を愛したい
春まだ遠き冬の夜に
儚く強くそう願う
白い息をかじかんだ手に吹きかけながら