◎ある場所

貴女の指が触れた場所は
私のどうしようもない弱い部分で
貴女の指が抓った場所は
私のどうしようもない汚い部分で

嗚呼 どうか
その場所を触らないで
やっと痛みも痒みも消えたと言うのに
嗚呼 どうか 愛しい貴女よ
その場所を触らないで
やっと意識も場所も忘れかけたと言うのに

どうしても気になるのなら
その優しく伸びる白い指じゃなくて
その優しく潤う唇を押し当てて

唇に俄かに灯る体温なら
その場所は綺麗に消えてしまうから
その場所は優しいうちに消えてしまうから

触らないで
触れないで

貴女が気にしている
その場所は
私のどうしようもない弱い部分で
私のどうしようもない汚い部分で

嗚呼 どうか
その場所は触れないでおくれ
愛しい貴女よ

今はそれよりも
ほら 今宵は満月が綺麗だから
一緒に肩を並べて
ゆっくり眺めましょう

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