◎俯き加減の夜の心情

恋慕えば儚くて
諦めれば艶やかに誘い出す
今宵もそんな宴に
惑わされ
桃源郷のその先で
幽かな女ばかり描いて

煙草の煙すら
収まる場所を解っているのに
雨の行き先さえ
誰もが知っているのに

どうしてこの空虚な心は
何時までも何時までも
彷徨ってばかりいるのか

舞い散る桜の花弁に聞いても
雲に隠れだした月に聞いても
慌しく流れる流星に聞いても
誰も答えてはくれない

愛を乞えば乞うほどに
刹那さと空しさばかりが
否応なく責め立てる
孤独を孕んだ心に
容赦なく爪跡を残していく

この空しさ
この刹那さ
一体どこに流せばよいのか

青々とうねるあの海か
月光が照らすあの丘か
嗚呼 今宵も
願うばかりで何も出来ない
この鉄屑は誰かの踏みしめた草原で
彷徨うばかりで

愛を忘れたくても
恋を忘れたくても
何処までも何処までも
この心を掴んで離さずに
生命ばかりが涕いて
涕いて涕き疲れて
俯くばかり

この詩に感想を書く          一つ上に戻る