風が唸りを上げる
まだ夜明け前
重みのある夜の匂いに
滔々と流れる川面が
小波立たせながら
風を緩やかに包み込む
星々は揺れ
月も揺れ
雲も揺れ
大地は微動だもせず
動かない振りをしながら
眠りに付こうとする
鳥たちを極たまに脅かして
夜を孕んだ分子が
稍 緩やかに
街々を飲み込んでは
徒に足跡を残し
人々は夢の中
昼間では見れない頼もしい夢や
恐怖ばかりの夢や
故人の面影に似た何かの夢を
己の心と相容れながら
天空を昇る様な心地よさ
風が唸りを上げる
また風が唸りを上げる
誰かの捨てた
夜想曲を巻き込みながら
しかし
今宵の風の
強い事 強い事