一式戦闘機 「隼」 研究所 The Japanes Army Type 1 Fighter Hayabusa (Ki-43 Oscar) Research Labo.
隼二型 機関砲の取扱い The Japanes Army Type 1model 2 machine gun instructions manual

※ この画像はオリジナルの資料を参考にホ103の概観を記載したものです。

































































































































































































■機関銃のトリガーと機関砲のスイッチ

 隼戦闘隊などの戦記物を読むと「機銃の引き金を・・・」「機関砲のスイッチを押す・・」ということが記述されていますが、意外と構造が知られていないのが機関銃(7.7mm)のトリガーと機関砲(12.7mm)のスイッチの在り処です。下図は一型の資料をもとに監修したものですが、恐らくこれが一番実機に近いのではないかと思料しています。

 なお、下図の瓦斯槓桿(エンジンスロットル)の取手については一見金属製のように見えますが、実際は布入りベークライト製です。したがって、色はベークライトの茶灰色をしているのが正解です。布入りとは滑り止めのために作成時点からベークライトに布を混入して作成したもので、一般的に当時の戦闘機に使用されていました(青色等に塗料が塗布される場合もあります)。

 また、八九式7.7mm機関銃の機関銃引金と安全装置等の構造について九七戦(Ki-27)と同様で(九五式発射発動機ニ関シテハ九七戦闘機ニ同シ)、ニ型以降両門が機関砲となった段階で機関銃引き金は廃止され、機関砲については押しボタンのみとなりました。




■武装について

 終戦まで運用された機にもかかわらず、一式戦闘機「隼」には最後まで零戦のように翼内に20mm機関砲を積むことはありませんでした。というのも、主翼は3本桁構造のため根本的な改修無しには積むことができなかったからです。もちろん、川西航空機の紫電(紫電改ではない)のようにガンポッドを翼下に吊り下げることも検討されましたが、軽量・スリム・ヒラヒラが身上の軽戦闘機には意味の無い改修ということで退けられています。

 したがって、開戦から終戦まで機首に二門を装備する止まっています。武装の変遷から見てもブラウニングM2銃機関銃のコピー版であるホ103機関砲二門により一式戦闘機「隼」独自の高い運動性能の高さと、小口径機関砲の正確な弾道により“空の狙撃兵”として活躍していました。

 なお、空中勤務者からは「13mm(12.7mmのこと)二門でなんとかなる。敵の新型機と戦うには速度が欲しい」とのことであり、空中射手においては強武装より操縦性能が如何に重要であったことがをうかがい知ることが出来るエピソードとなっています。


■武装と分類形式(Mark:甲・乙・丙)について

 以前にも書きました通りこのサイトでは一式戦闘機「隼」の一般的な3つの分類形式(Mark:甲・乙・丙)は使用しません。というのも、オリジナルの資料では一型、ニ型、三型の分類は普通に使われているものの、甲・乙・丙表記はないからです。

 ムック本では機関銃(7.7mm)と機関砲(12.7mm)の装備による違いで分類しているようですが、そもそも機関銃と機関砲は“僅かの部品交換”で、その時の用兵上の目的で簡単に交換できたわけですからあまり意味がないようです。

 ちなみに、開戦時の飛行第64戦隊は機関銃と機関砲の併用型を標準としていましたから一型乙ということになりますが、加藤戦隊長は最初から機関砲×2である一型丙であったという説があります。


■武装の変遷

 以外と整理されていませんので以下に武装の変遷について記載しました。このように、実際に戦地で使用されたのは八九式固定機関銃とホ103(一式12.7ミリ固定機関砲)だけということになります。

一式戦闘機の型式 武装装備 弾丸数
試作1〜3号機
(当初)
以下のいずれかを装備
○ラインメタルMG17機関銃2挺
○九八式7.92mm固定機関銃2挺
500発×2
増加試作機4〜11号
(当初)

八九式7.7mm固定機関銃2挺
500発×2
増加試作機10号、13号
(当初)

ブレダ12.7mm機関砲2挺
230発×2
一型
以下のいずれか装備
○八九式7.7mm固定機関銃2挺
○ホ103(一式12.7ミリ固定機関砲)

500発
250発
二型
ホ103(一式12.7ミリ固定機関砲)
250発×2
三型
ホ103(一式12.7ミリ固定機関砲)

※ ホ5(20mm航空機関砲)搭載の三型試作機(乙) 

250発×2




■武装について

 (1) ラインメタルMG17について
 ラインメタルMG17はドイツの防衛グループ企業であるラインメタル社が製作した固定機関銃で、フォッケウルフ Fw190にも搭載されたポピュラーな機関銃となります。口径は7.92mm、発射速度は1,180/分と高速、重量は約10.1kgと非常に軽量な機関銃で陸軍に注目されましたが、破壊力はありませんでした。

 (2) 九八式固定機関銃>
 昭和十二年にラインメタルMG17のライセンスを購入し、九八式固定機関銃として国産化しようとしましたが、弾丸を連結する保弾子(リンク)が板バネで出来ていて薬莢の横から挟み込む方式であったため、この保弾子を作れず国産化が出来なかったようです。なお、旋回機銃としては成功して九八式旋回機銃として爆撃機や複座戦闘機の後部機銃として広く大戦前半に用いられました。

 (3)ブレダ12.7mm機関砲
 増加試作機の10号と13号にはイタリア製のブレダ式12.7mm機関砲を装備しました。ブレダはブローニングM1919 重機関銃のコピーで重量は軽量であったものの性能良くありませんでした。弾丸装填装置は手動では無理なので油圧装置を使用するようになっています。

 (4)八九式7.7mm固定機関銃
 イギリスのビッカース社MkU機関銃のライセンスを昭和二年に製造権を購入して国産化したものです。もともと構造が簡単で故障が少ないMkT機関銃の性格を引き継いでいますので、国産化されても優秀として評価の高い機関銃でした。なお、この機関銃は一式戦闘機「隼」に初めて装備されました。

 (5)ホ103
 制式名称「一式十二ミリ七機関砲」として昭和十六年に戦地に配備されています。これはブラウニングM2重機関銃のコピーで口径は12.7mm、「砲身後座反動利用式」つまり銃身が薬室の燃焼ガスによりブローバックし衝撃を吸収し弾薬を装填する方式で堅牢かつ故障の少ない機関砲でした。


■武装の仕様
 武装の仕様については、九八式、八九式、ホ103等実際に現地にて仕様された機関銃及び機関砲についてまとめてみると以下のようになります。なお、下表については当時のオリジナルデータより作成しております。


八九式固定機関銃 九八式固定機関銃 ホ103機関砲
全重量 甲砲12.38Kg
乙砲12.70Kg
10.1Kg      23Kg
実包の重量
(千発に付き。保弾子共)
※保弾子とは弾と弾の
連結クリップのことです
32.7kg 30.4Kg 25.875Kg
(千発に付き。保弾子共)
銃身長 724mm 600mm 800mm
口径 7.7mm 7.9mm 12.7mm
弾丸の種類 普通実包、徹甲実包、
焼夷実包
普通実包、徹甲実包、
焼夷実包、曳光実包
普通弾、焼夷弾、
曳光徹甲弾、榴弾
弾量 10.5g(普通実包) 12.8g 36g
初速(m/s) 820 785 780
発射速度(発/分) 800 1,150 800
※空中射手必携(明野陸軍飛行学校 昭和17年 秘より)


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